七生
「俺はもう死ぬようだ」
青年は死の床にあった。女の懸命な世話も功を成さなかった。
「そんなことは言わないでくださいまし。言霊ほど恐ろしいものは有りません」
「いや、良いんだ。吐く血増える一方、いくら食ってもすぐに出るんじゃあしょうがない」
青年は既に諦めていた。彼が助からないことは女も分かっていた。
「お前を置いていくことだけが心残りだ。お前はまだ若いんだから俺なんか忘れて良縁を見つけると良い」
青年はそう言った。彼にとって女以外に心配するものなどは無かった。彼らには子供もいなかったのである。
「そんなことできるものですか。私はそんな不埒な女ではありません」
「ならば俺が生き返るしかないなあ」
青年は冗談交じりに嘯いた。
「しかし俺はこんなに病弱だ。生き返ったってどうせ長生きはしないだろうなあ」
「ですからそんなことは言わないでくださいったら」
女は泣きそうである。
「まあ、なんだ」
青年は呟いた。
「七たび生き返ってでも、お前に会いに行くとしようか」
女は青年を見た。青年は事切れていた。