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いい匂い、しません?




「おじさん、どうもありがとうございました。」



頭をペコリと下げ、感謝の形を取ります。

このおじさんには本当にお世話になりました。



「なーに、良いってことよ!困った時はお互い様ってな。そんじゃ、嬢ちゃんも達者でな!」



気の良さそうな笑みを浮かべ、馬車のおじさんは手を振りながら遠ざかっていきました。

やだ、惚れちゃう!?

…と、ここでボケてもツッコミがいないので締まりがありません。

1人でボケて1人でツッコむ高度技は私、流石に習得出来てないので…無念。



でもあのおじさんは本当に良い人でした。

何せ、中継地で乗る馬車がなくて困っていた私に声をかけてくれた上、あろうことか、それなら俺の馬車に乗せてやるとまで言ってくれたのですから。

昨今、他人は冷たいと言われる世の中ですが、こうして温かい人もいることを忘れてはいけません。


運行馬車の受付人は冷たかったですけどね。今の時期に王都へ行く際、予約もしてないなんてと鼻で笑われ、イラッときましたが、そこはほら、精神年齢が無駄に高いわけでは無いので大人な対応してあげました。


瞳を少しばかり潤ませて、肩を落として、あくまで周りに聞こえるように、「そうですか」なんて悲劇のヒロインばりの演技で周りの私に対する同情と受付人に対する冷たい目たくさんを頂いてきました。


少しばかりやり過ぎたかなと思わなくも無いですが、そこはそれ、先ほどの商業馬車のおじさんに乗せてもらうことが出来たので良しとしましょう。





私の住む辺境の地から王都までは馬車で軽く3日はかかります。

本当は実家からの馬車に乗る予定だったのですが、都合がついたため、予定より1日早く出発できることになり急遽ひとり旅に変更したということです。



気の良いおじさんのおかげで行商馬車に同乗させて頂き、無事に王都までたどり着けました。




さてと、さっそくレーデル家の別邸に向かうとしますか!





今の時刻がお昼前のせいか、辺りは昼ご飯を取ろうとする人々で賑やかです。

丁度この通りは食事処が集まっているせいか、特にすごい人です。


ですが、道幅が広く、きちんと整備されている道のおかげで人の波に流されるなんてことは無いようですし、所々に警備の方々が立っています。

誕生祭も近い今、その辺りはしっかりと考えられているようです。流石王都ですね。




ただ今、別邸に向かっている途中です、なうです。…が、どこもかしこも良い匂いがして、思わず歩みが遅くなってしまいます。


なんせ、この三日間はどうしても時間を馬車に合わせる形になってしまったためキチンとした食事を取る時間もなく。そうするとご飯は自然と手ですぐに食べられる手軽な軽食になってしまったので、食事処の良い匂いは大分堪えます。

うう、そうと考えてしまうとお腹が急激に減ってきました。



「そこのお嬢ちゃん、良かったらこの串焼きどうだい?一本90ロンだよ!」



よほどお腹が減った顔をしていたのでしょうか、袖を限界まで捲り上げ、頭にタオルを巻いているおじさんが声をかけてきました。

居酒屋のような店の前で売っている、屋台のようです。



「おじさん、ここは何の店ですか?ちなみにそれは何のお肉でしょうか?」



いつもは屋台にあまり立ち寄らないのですが、あまりに香ばしい香りがするので思わず訪ねてしまいました。



「おう、よくぞ聞いてくれた!ここはニワトリ亭でぃ!まぁ居酒屋兼食堂みたいなもんだ。いつもは屋台なんてだしちゃいねーが、今の時期、誕生祭シーズンは毎年出してんだ!ちなみにこれはニワトリ亭だからニワトリの肉だぜ!」



おじさんは機嫌がいいのか元気に答えてくれました。

後ろにお酒が置いてあるようですが、客商売中に大丈夫でしょうか(もちろんお酒は開封済みのようです)。



炭焼きのタレの香りが何とも言えず、思わずツバを飲み込んでしまいます。


妖精のお姫さま時代、外の人間世界に出たのは魔王討伐の旅の時が初めてでしたし、基本妖精は人間の食べ物はいらないんですよね。だから空腹というのが無いので食べ物の魅力的な香りとか味がイマイチ分からなくて。



でも今は違いますよ!そんな悲しい味覚とはおさらばです!人間最高!人間の食べ物最高!

ニワトリは私の大好物ですし(基本お肉全般大好物です)、お腹は減ってますし、買うしかないですよね。

ここで買わねば女が廃るってもんです。



「おじさん、串焼き一本…いや、二本…やっぱり一本下さいな!」



本当は二本食べたいところですが、別邸に着いてお昼も食べますし…ここは節約のためにも一本だけにしましょう。

残念ですが…仕方ありません。



「まいど!そういや見ない顔だがお嬢ちゃんはここらに住んでるのかい?」


「いえ、家族がこちらに住んでいるので旅行も兼ねて会いに来たんです」


「そうか…あいよ、お釣りの10ロンだ。熱いから気をつけな!」



おじさんからお釣りと串焼きを受け取ります。

焼きたてを包んでくれたおかげで確かに熱いです。


立ち食いは行儀の良いことではありませんが、せっかく焼きたてを貰ったんですから今食べたい!!よし、食べましょう!


そう決心して紙包みをあけます。タレが太陽の光に当たってキラキラと輝いています。よ、ヨダレが…。たまりませんね、これは。

あれ、でもおかしなことに中には串焼きが二本入っています。



「おじさん、これ、二本入ってますよ?一本の値段しか私は出してませんが…」



「まあそれはオマケってやつだ、お嬢ちゃん可愛いからな。今度はニワトリ亭の方に来てくれたら充分だ!

お嬢ちゃん、王都は初めてだろう?王都へようこそ、楽しんでってくれや!」



そう言って笑顔でウインクをしてくれました。

な、なんて太っ腹なおじさんなんでしょう…!!惚れちゃう!?は置いておいて。

私、王都へ来て良かった!!

思わず笑顔になります。



「おじさん、ありがとう!是非また寄らせてもらいますね!」




王都ってちょっと冷たいイメージがありましたが、だいぶ違ったようです。

他人の伝聞やイメージだけでなく、実際にこの目で確かめないと分からないことはあるということですね。




その後、屋台脇の椅子で串焼きを二本頂き、その間屋台のおじさんに誕生祭の期間中のオススメ情報を教えて貰いました。


お昼なので皆、ゆっくり店内で食べたいということもあり、屋台にはあまりお客さんが来ません。

そこで親切にもおじさんは教えてくれたということです。

おじさんはアルクさんという名前だそうで、ニワトリ亭の料理人をしているそうです。



この国の生誕祭は二週間の期間があり、今日でその一週間のうち4日過ぎたそうです。

ちなみに本祭は二週間目にある為、一週間目はまぁ、前祭ということです。


アルクさんが言うには、前祭期間中は王城へ続く一の通りに食べ物以外にも色々な出店がたくさんあるそうで、他国からの行商人も来ているとか。


二週間目はどうしても祭中心になってしまうので、出店は少なくなるそうです。

これは早いうちに、というか後で行ってみないといけませんね!



串焼きの2本目も食べ終わる頃、屋台にちらほらとお客さんが現れ始め、忙しくなってきました。どうやらそろそろ頃合いのようです。私はアルクさんにしっかりとお礼を言って別れ、歩き出しました。



お腹も良い感じに膨れましたし、別邸へそろそろ向かうとしますか。




と、いうことでジャジャーン!

着きました、レーデル家の別邸!

ここまで遠い道のりでしたね…今までの旅が走馬灯のように流れてきて、なんだか涙がちょちょぎれそうです。


初めての慣れない旅だったので、ここにたどり着いた感動もひとしおってやつですね。

この住宅街にたどり着いた時、周りの人がやたら見てくるなあと思っていましたが、辺りを見てなるほど納得します。


ここらはどうやら高級住宅地、もとい貴族の屋敷が集まっている土地みたいです。そりゃあここに住む貴族の方々は馬車で屋敷に戻るのが当たり前ですよね。そこを荷物を抱えた小娘が歩いていたもんだから…ジロジロ見るってものです。



奥に行けば行くほど大き屋敷ばかりで、レーデル家はその奥にありました。


辺境の本邸よりはやや小さいですが、それでもやや、ですからね。

お父さまの祖父の代に勲功で王さまから頂いた別邸ですが、泰然と構える姿からは貫禄のようなものが現れています。屋敷に貫禄、というのも変な話ですが。


私は一目でこの別邸を気に入りました。

今日から二週間、ここに住むなんてワックワクのドッキドキで、何だか楽しくなってきました。

門を通り、玄関の扉を開けますが、どうやら誰もいないようです。



「こんにちはー!」



テンションが上がっているせいか、思ったより声が大きくなってしまいました。

うわぁ、思った通り、内装も素敵です!

落ち着いていますが、所々に品があり、それにとても機能的です。

やっぱり人が住む家なんだから機能的でないとね〜なんて周りをキョロキョロしていると、



「あの、どちら様でしょうか?」



後ろから声がしました。


運行馬車=高速バスみたいな、街と街を繋ぐバス的なものです。高速バスほど早くはありません。


90ロン=90円

通貨は日本通貨と同じイメージです。


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