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アルゼミュート  作者: tkm
3/5

キャー!ヴィオレーさんすごーい!!

校長先生の長いお話も乗り越え、入学式は何事もなく終わったけど。

気力はごっそり持ってかれた気がする。


その後は担任の先生たちや同じクラスのメンバーと講堂で顔合わせ。

アルカンシエルの入学生は多き分けて三種類いるらしい。


国内出身の貴族の家系に名を連ねる者。

地位の違いこそあれど、学生の過半数はこのカテゴリーだ。

アタシたち7大侯爵家もここに含まれる。


国内出身のこの学園の卒業生の推薦を受けた者。

魔物退治のプロであるハンター、各地方自治体の有力者からの推薦者たちがこのカテゴリーに当てはまる。

後ろ盾がないとはいえ成績次第では上流階級の仲間入りが出来るのだ彼らのモチベーションは非常に高い。


最後に海外からの留学生。

アルゼミュートで最も歴史が長い学校だから各国の有力者の子弟のみならず、王侯貴族まで留学してくるのだから恐れ入る。

上二つとは一風変わったコミュニティが形成されるがそれでも国の次代を担う自覚からか気迫が違ってみえる。


夢の中とは違い、アルゼミュートの言語は統一言語のため言葉の壁はない。

大衆文化なんかは流石にお国柄が出るから文化の壁はあるかもだけど、留学の壁は低いと言えるかなー



基本的に優れた資質を持った人間が集まるので上位競争は激しい。

けどその分上位で卒業する人たちの進路は王国騎士団、政府高官、国家研究員と選り取り見取り。

つまり人生の勝ち組になれる芽が出てくる。

それだけではなく、卒業後のコネクション形成、社交界デビュー、縁談探し。

貴族としてやらなければいけない事は山積みで。

忙しくなりそうなこれからに人見知りしてしまうアタシの気分はアンニュイ。



他人の自己紹介を聞き流していたら、いつの間にかアタシの番みたい。

しまった、何言えばいいのか考えてなかった…

えーっと、自己紹介なんだし名前は当然でしょ?

「ジェシカ=ヴィオレー」


出身地は姓で分かるし、歳は皆一緒だから…

「…」


好物?趣味?異能について?

でも一人にそんなに時間割いてちゃダメだよね?

「…」


あーもう。

無難に締めよう、そうしよう。

「よろしくお願いする」


注目浴びるのなんてェ久々過ぎてェ超恥ずかしィんですけどォ

ま、アタシの鉄面皮にかかれば?

ポーカーフェイスなんて?

余裕ですけど?

うん、ごめん。

調子乗ったけど表情に出てないよね?



その後、全員の自己紹介が終わり時刻は丁度お昼時。

道に迷わないように先生が教室棟の食堂まで先導してくれるみたい。

寮の食堂とは違い、厨房では忙しそうに複数人の調理師がキリキリと働いている。

中には先生と思わしき人や上級生らしき人たちがチラホラと昼食を取ってる。

時折こちらへ視線を感じるのは煩わしいけどこれも新入生の定めと思って諦めよう。


「…」


昼食はいくつかのテーブルに別れつつ新入生で固まって。

皆さん楽しくお喋りしながら和気藹々とした感じで仲良くランチタイム。


「…」


一方アタシたちのテーブルは何故かチラチラと視線を飛ばすだけ。

あぁ、周りのテーブルの空気が羨ましい。

こんな空気じゃ味なんて分かんないよ!


「あ あの、ヴィオレーさん?」


お、遂にアタシたちの中にも会話を試みる勇者が!

けどゴメン勇者君。

自己紹介の時、聞き流してたからあなたのお名前知らないの。


「何か?」

「いぇ、何でもないデス。」


一体なんなんだ!

言いたい事があるならハッキリ言うがいいさ!


心では思えど言葉には出せないアタシ。

その後も会話は続かない。

こんな調子でコネクションなんて作れるのかしら…




昼食を取り終えたアタシ達は再び先生の先導で進んでいく。

次はアタシ達がどれぐらい異能を扱えるか実地テストをするらしい。

担任の先生達だけではなく、実技指導の先生達も動員して行うみたい。

教室棟のエントランスで大雑把に五分割される新入生。

よし!さっきの食事では下手を打っちゃったけども

実地テストで良いトコ見せて


「キャー!ヴィオレーさんすごーい!!」


「私にもコツ教えてー!!」


「やるな!君こそ私のライバルに相応しい!」


なんて言葉を集めたりして、フフフ。

おっと、妄想に浸っている間に到着したようだ。


アタシ達のグループは第二練兵場で実地テストをするみたい。

第二練兵場の地面は砂地になっている。

多少派手にやっちゃってもこれなら問題あるまい。

内心笑みを深めていると二人ずつ順番に呼ばれていく。

どうやら試合形式で進めていくみたい。

これは、もしかしてアレじゃない?

拳で語り合って友情を深める的な?

お互いが全力を出し切って最後に夕日をバックにし握手!

いっそうモチベーションが上がってきたよコレ!!

さぁ!

早く私の番になぁれ!


「あー次」

「ジェシカ=ヴィオレーとロビン=ルックレーだな、前に出て来い。」


如何にしてカッコ良く戦うかイメージトレーニングを続けていると私の名前が呼ばれる。

相手は私と同じ7大諸侯であるルックレー家の人間。

多分知り合いのはずだけどアタシは基本的に人の顔と名前を覚えるのが苦手。

だから相手の実力は未知数だ。

まぁ、7大侯爵家出身ってことは基本的に優れた家庭教師が付くものだから実力も申し分ないんじゃないかな?

あ、もしかして?

もしかしちゃうと?

久々に結構本気出しても怒られないんじゃない、コレ?

そんな事を考えながら皆の前に立つと先生に指輪型の魔道具を渡される。

周囲から視線を感じる。

あぁ、ちょっと緊張してきたかもしんない。


私の前に立っているのは先程の勇者君ことルックレー家のロビン君。

私たち7大侯爵家の人間は近い年代の人間を顔合わせの意味を込めて内輪で何度かパーティをしている。

当然同年代の7大侯爵家とは関わりがあって然りなのだ。

現に私も頑張って覚えた記憶も一緒にお茶したりお菓子を取り合って喧嘩した記憶もある。

…やばい、彼の顔が全く記憶にないぞ。

バレたらお母様に怒られてしまう!

……コレを機に覚えたらイイよね!


一応全力でやっていいか確認をしてっと。


「教諭、試験とのことですが対人戦で全力を出して構わないのですか?」


「あ?コイツはドラゴンブレスを防ぐレベルの障壁出せっから。いらねぇ心配すんじゃねぇよ」


「そうですか、ありがとうございます」

よし!こんな良い物を支給するなんて流石国立の異能学校!

許可はもらえた。


さぁ!やるぞ!


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