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こいつは俺のモノ 直也&倫子

前回から更に1年後の話です。二人なりに幸せみたいです。

お前は俺のモノ


「ちい。学校に行くぞ」

「えぇ?どうして……なおがいるの?」

「いいから。ほらっ、ビリーにお留守番を頼んで」

いきなり朝から現れた彼に私は驚きを隠せない。彼に言われた通りに、私がいない間にお留守番係になっている、黒猫のビリーにお願いをする。

「ビリー、学校に行ってくるわね。お留守番お願いね」

ペリドットに似た瞳をキラキラさせながら、ビリーはニャーンと返事をする。

私は慌てて学校に行く支度をした。

「おはよう。なお」

「ああ、こっちを向けよ」

彼に呼ばれて振り向くと、絶妙なタイミングで唇が重なる。

「おはよう。学校まで行くよ」

「だって。今日は……分かっているの?」

「ああ。お前の卒業式だろ。知っている。俺がお前の保護者の代わりに出たらダメか?」

「ダメじゃない。けど……いいの?それに車……」

「ああ。免許は持っているのは知っているな。いろいろあって親父の車を貰うか、下取りに出して買い替えるつもりだが……どっちがいい?」

「なおの望む方に。で、とも君もいる訳ね」

「お前達同じ学校だから運ぶの一緒でいいだろう?智、送辞で間違えるなよ」

「分かっているって何度言えばいいんだよ。ったく、彼女の卒業式に参列する彼氏っているのかよ?」

私が助手席に乗り込むと後部座席にいるとも君はブツブツと文句を言っている。

「俺がここにいる。何か文句あるのか?」

「何でもない。それよりも……あの事は本気なのか?」

「ああ。その話はお前には関係ないだろ?」

「そんな事言っても……」

「智。お前は何にも気にすることないさ。安心しろよ」

「なお?何かあったの?」

「うーん、今は内緒。これ以上仲良くすると、お子ちゃまが拗ねるからな」

私は何があったのか分からなくて、彼に問いかけたのだけども、彼にはぐらかされてしまった。

もちろん、お子ちゃま認定されてしまったとも君の機嫌は最大限に悪くなってしまったのはお約束の事だろう。

彼の運転する車に乗せられて、私達は行き慣れた通学経路ではなく通学する事になった。



「ちいも卒業か」

「そうよ。ちゃんと卒業するんだから」

「で、答辞は誰が言うんだ?」

「太一。元生徒会長がやるのは当然でしょう?」

「ふうん。で、卒業証書を受け取るのは誰だ?」

「……私……。やりたくない」

「仕方ないな。お前が適任だと思うぞ」

「どうして?」

「今日は前期試験の発表日だろう?大半が現地に行っているんじゃないか?」

そう、去年は二月の頭だった卒業式は、今年は前期試験の発表日に変わった。

その為、現地で発表を見る人が多くて、卒業証書の総代が私になってしまった。

「四組は結構揃っているんだよ。なのに、皆私でいいって言うの。だったら八組でもいいと思わない?」

「少なくても、二年間は学年トップテンだっただろ?違うか?」

「その通りです。もういいです」

うちの学校の卒業証書を受け取る総代は実質的な学年トップというのが暗黙の常識。

私は皆と違って大学には行かない進路を決めたのに、それでもいいのだろうか?

「お前、今年の文系だと平均でいったら年間トップだろ?」

「みたいだね。知らなかったけど」

私がそう答えると、彼は呆れた顔をしている。

「お前は、興味がないだけ。今度の学校も特待なのだろう?」

「うん。今年は通学費だけしかかからないよ。これからも結果を出さないと」

「ちいちゃん、本当に謙虚だね。兄貴、生徒会室の鍵。失くすなよ」

「あのな……合い鍵いらねえ。俺まだ持っているし」

「勘弁してくれよ。今の聞かなかった事にしておいてやるよ」

「ありがとな。それじゃあ後でな」

智君がいなくなって生徒会室は二人きりになる。

「おいで、お前の定位置はそこじゃないだろ?」

彼に右腕を引かれて彼の腕の中に収まってしまう。

「お前はここ。俺の腕の中。ホームルームが始まるまで……いいだろう?」

「ったく。なおは……もう。今の役員連中には見せられない光景ね」

「いいだろう?マーキング。俺の匂いを纏って式に出ろ」

「どうしてそうなるの?」

「今日だからだ。お前がずっと一人だった理由も今は分かっているんだろう?」

彼に問い詰められて私は頷くしかない。私が警戒していたあの人は今日の式典には参加を許されていない。太一の話だと、参加しなければ卒業証書と無期停学の分の日数を通学したとデータを処理するという取引があったようだ。指定校推薦で大学の内定を決めたあの人を退学にする訳にはいかなかった学校側の苦肉の策だった。

今の彼女が何をしているのかは知らない。年末の中学校の同窓会には参加していたけど、誰も彼女をまともに相手にしないと気が付いたせいか気が付いたらその場にいなかった。

「お前は俺のモノ。もう……宣言してもいいんだよな」

「そうよ。あいつはもう学校にはいない。あいつの陰に怯える事もないはず」

「安心しろ。これからは俺が守ってやる。それでは不満か?」

「不満なんてないよ。今だけで十分幸せだよ。なお……好きよ」

「知っている。目……閉じろ」

彼に促されて目を閉じる。今日二回目のキスが優しく甘く感じる。

徐々に深くなるキスに私達は夢中になる。

「さあ、時間だ。ちゃんと見ていてやるからな」

「うん、見ていて……行ってきます」

彼に見送られて私は生徒会室を後にした。

自由登校になって一ヶ月。久しぶりに会う同級生もどことなくピリピリしていない。

「ちい、元気だった?」

「アッキー。ここにいていいの?今日発表でしょう?」

「滑り止めあるから平気。今日は遅くない?」

「うん、直君の車で来たから」

「直也先輩?比較的に来ているから馴染んでいるよね」

「確かに。それより、アッキー指輪……いいの?」

「健もしているわよ。それに結婚指輪だし」

「そっか。入籍したんだっけ?おめでとう」

自由登校になって、アッキーが滑り止めの大学の合格が決まり次第二人は入籍をした。

今は、新居も無事に決まって今は互いの家を泊まりながら引っ越しの準備をしている。

「お祝い……何が欲しい?」

「ちいには……写真立て貰ってもいいかな?」

「分かったわ。新居に引っ越したらなおと二人で届ける」

アッキーだけは私達の事を話してある。この一年彼女がいなかったら私は乗り切れなかったと思う。

「ありがとね。章代」

「何言っているの。これからもよろしくね」

私達は顔を見合わせた。そこに章代の夫の健がやってくる。

「おはよう。見せつけないでよ」

「いいじゃん。式が終わったら皆に報告するさ」

「先生達は?」

「章代の今日の出席を条件に認めて貰ったんだ」

成程。だから二人はここにいる訳か。

「それに合格発表は午後二時から。式が終わってからでも間に合うから。お前達は?」

「私達?普段と変わらないけど?」

「嘘。直也先輩の車が職員駐車場にあったぜ」

「だったらそこのところを察して頂戴」

暫くの間、久しぶりの同級生たちとの会話を楽しんだ。



「僕らはこの学び舎から今日、卒業します」

一年前、彼がした答辞を今日はこないだまで生徒会長だった太一がしている。

太一から目線を外して、理事長を見る。今まで必死に隠していた理事長だろうけど、既に限界みたいで目元が潤んでいる。

「理事長、半泣き?」

「うん。そうだね」

私の隣は章代で。その隣は健だ。全員出席じゃないから、とりあえずクラスの場所に纏まっているって感じだ。

二人が親子である事を知っているのは、現生徒会役員と元生徒会役員と英語部の3年生しか知らない話。太一の希望で都内の実家を出て高等部の寮で3年間暮らしていた。



あっという間に、式は終了して、私達が退場する。私達のクラスの番になって立ち上がって後ろを向くと、彼がいない。どこにいったんだろう?

不安に思いながら、体育館を出たところでそれはいきなり起こった。

「倫子!!」

彼が両手を広げて私を呼ぶ。一瞬ためらった私の背中を押したのは章代と健だった。

「「行っていいよ。任せて」」

「ありがとう。なお!!」

私は迷うことなく彼の胸の中に飛び込んだ。

「卒業おめでとう。頑張ったな。ほら、いい子メダルな」

私にポケットから子供が喜びそうなメダルを出してかけてくれた。

「なお、子供なの?」

「なんとなく、バイト先で注文していたから1個貰ってきた」

彼のアルバイト先は補習塾。通知表の成績等が良かった子にあげているそうだ。

これを1個貰う事を頼んだ彼の事を想像するとちょっと可愛いなって思う。

「それと、こいつは俺のもんだ。誰にも渡さないからな」

そう言って私をきつく抱き締めた。

「なお、先生いるのに。ダメだって」

「そんな理由は認めない。諦めて俺の腕の中にいろ」

そんな私達を、冷やかしていく人、冷ややかに見る人、ギョッとしている人。

男子バスケ部の皆はどうなるのか冷や冷やしていましたよ、本当に。とか結婚式には呼んでくれよとか……ちょっと早い話をしていく人がいた。



彼が体育館を出てすぐの所で待っていて、皆の前で宣言した理由の真意を私は最後のホームルームで知る事になるまで、後一時間後の話。


おっと、ポーションは出てませんね。それはそれという事でwww

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