最初で最後の制服姿で手を繋ぐ 直也&倫子
In onther wordsのパラレルです。実際にはないカップリングです。
そんなの許さん!!という方は読むのを勧めません。
「……。この学び舎から僕らは本日卒業します」
生徒会長だった直君の答辞も無事に終わった。
今日は高等部の卒業式。一般の生徒は休みだけど、私達生徒会役員にはそんなものは存在しない。今日も裏方でお手伝い要員として先生達を手伝っている。
送辞は新生徒会長の太一が失敗する事もなくそつなくこなしてくれた。
直君とは、小学校からの付き合いだからかなり長い付き合いになる。
楽しい時も悲しい時も辛い時もいつも傍にいてくれた。
ずっと兄の様に甘えていたけれども、直君はそうでもなかったみたいで……。
直君から女の子として好きだと告白されたのは、推薦入学で自宅から通える理学部の合格通知が貰えたその日だった。
返事はすぐじゃなくてもいいよって苦笑いで答えてくれた彼の思いに向きあう為にはちょっと長い時間を貰ってしまった。
一時期、彼の弟の智君の事を気にしていた事を知っている彼にはじれったい事だったと思う。
そんな私が彼に返事をしたのは、卒業試験の最終日。生徒会の引き継ぎで生徒会室に二人きりになった時に私が彼の気持ちに答えた。
けれども、彼との交際は学校内では秘密。私にはどうしても知られたくない事情があった。
専ら、デートは私の家。のんびりとテレビを見ていたり、一緒にご飯を作ったり新婚さんの様な時間を過ごしている。
今日も、卒業式の後片付けをした後に私達は解散になるから一緒になれないと思っていたのに、私が終わるまで彼は待っていてくれた。
これからは私の家で待っていてくれるという。叔母たちも一緒にいるけれども、彼に私の持っている合鍵を渡してある。
叔母さんは私には無関心だから、直君との関係が他に漏れる事は多分ないだろう。
普段は手を繋いで下校することはないんだけども、今日は指を絡めて一緒に下校している。
「うふふ」
「どうした?ちい?」
「嬉しいんだもの。こうやって手をつなげるのが」
「そうだな。制服姿の俺とこうしたいって言っていたな」
「最初で最後だけど、出来るのが嬉しいの」
いつもはバスで駅まで行くのだけど、校内には役員しかいないから時間をかけて歩いて帰る事にした。
今までは、直君と智君と一緒に通っていたけど、明日からは智君と一緒に通う事になる。
「ねえ?明日から智君と一緒だけどいいの?」
「そうしてくれ。お前を満員電車に乗せるのは怖い。お前貧血で倒れた事があるだろう?」
1年生になってすぐの頃の事を引き出されてしまう。確かに派手に貧血を起こして倒れた事がある。
「それと……言いづらいけど、生理の時は無理に学校に行くなよ」
「分かっている。今度はちゃんと学校を休むから」
ちょっとだけ体が弱い私の事を直君はこれでもかって程に甘やかしてくる。
途中で同級生の家が経営しているコーヒーショップが見えてきた。
「直君、豆を買ってもいい?」
「そうだな。折角だから、カウンターで飲んでいくか?」
「うん」
私は制服姿の彼と最後の下校を楽しむ為に寄り道をすることにした。
「直也先輩卒業おめでとうございます。これで佐倉のお守は弟ですか?」
「そうだな。お前も監視しておいてくれよ」
「直君、酷い」
私は頬を膨らませる。そんな私の頬を直君は突いて楽しんでいる。
「二人って付き合っているんですか?」
こういう質問の時は決まって彼を見る。私からは答えない。これは私達が決めた事。
「可愛い妹ってところかな。実際には腐れ縁みたいなもんだ」
直君は決まってこう答える。私が卒業まではこうやって答えるって決めている。
前の恋の終わりが周囲を巻き込んで大変なことになってしまったから、ある人にだけはどうしても知られたくなかった。本当は言いたいのだけど、今は我慢しかない。
「卒業しても部活に顔を出して下さいよ」
「そうだな。気が向いたらな」
佐島君は私達を見て微笑んでいる。ひょっとしたら彼は私達の関係に気が付いているかもしれない。けれどもその事を口にしない事に感謝する。
「佐倉、これ使ってみるか?」
そう言って、佐島君はラブミラクルポーションを見せた。
人気商品で入手するのが困難な商品だ。
「正しくは店のサンプルだからキャラメル味だが、コーヒーに入れてやるよ」
佐島君はそう言って、私達のカップにポーションを少しだけ淹れてくれた。
ほんのりと甘いキャラメルの香りがフロアーに広がった。
「で、これって眉唾なんだろう?」
「直也先輩、一応食用のシロップですから」
「いいじゃない、気分的なものなのだから」
私はそう言って、カップの中のコーヒーを飲む。
だって私達は交際中でラブラブなのだから。こんなものに頼らなくても平気なはず。
けれども……心のどこかで惹かれていたのかもしれない。
そんな私を彼が見つめていたなんて私は気付きもしなかった。
そして、いつもの様に電車に乗って、自転車を並んで漕いで私の自宅に戻ってきた。
いつもの様に家は無人でひっそりしている。私達はまっすぐ私の部屋までやってくる。
いつものようにファンヒーターをつけて炬燵の電源をつける。
炬燵に足を伸ばした直君が炬燵の天板に額をくっ付けた。
その間に、私は急いで制服を着替える。今日はTシャツにパーカーにデニムのスカート。
「いいよ」と私は言ってから、明日の支度を始める。
宿題は昨日のうちに終わらせてあるので、鞄に入れたらおしまい。
「終わったか?」
「うん」
そう言ってから、私は彼の炬燵の隣に座る。
「なんだ?いつも隣じゃないだろ?」
「いいの。何となくこうしたいの」
そう言って、彼の体にちょっとだけ寄りかかる。
くっついた体から彼の体温を感じられるのが凄く嬉しい。
「ん?どうした?」
「直君、暖かいなって」
「そっか。明日からはちゃんと部屋を暖めてやるぞ」
「それはそれで嬉しいな」
直君は私が渡した合鍵を見せた。
「そのためのこいつだろ。そうしたらお前にお帰りっていってやれるな」
「私もただ今って言えるね」
直君の手が私の顎に触れた。その先に何が起こるのか分かっているから私は目を閉じて彼を受け入れる。
触れるだけの唇が甘く感じるのは佐島君の店で飲んだコーヒーのせいだろうか?
それともサービスって言って入れてくれたポーションのせいだろうか?
「お前の唇……いつもよりも甘い。どうしてだ?」
「直君だって……甘いと思うよ」
私達は唇が重なる位近い距離なのに見つめ合っている。
互いに甘いと思うのなら、どっちがより甘いのだろう?
「だったら……試してみない?どっちが甘いのか?」
私がそう言うと、直君はにっこりとほほ笑んだ。
「お前のお誘いですから、遠慮なく」
そう言われて、食べるかのように唇が重なった。
角度を変えて啄ばむように重ねたり、口腔中を舐めつくされたり、舌を絡ませたりしながら延々と互いの唇を貪り合う。
やがて、唇が離れると、細い銀糸の糸が繋がっていた。
「分からないな。俺達もあの都市伝説に踊らされたのか?」
「どうかしら?だって、いつもの私達はこうじゃない」
「そっか。それじゃあ比べようがないか。だったらもう一度いつもの様にしてもいいか?」
「そんなこと……聞かないでよ」
「分かった。もう聞かない。愛している」
その言葉が合図になって、私達は何度となく甘くて熱いキスを続けるのだった。
卒業式後の手繋ぎデートというのを妄想してみました。
現時点の二人は、良くも悪くも知っている相手として過ごしています。
二人が恋人なのを知っているのは、生徒会仲間とちいの部活仲間のみ。
いつもは直君!!って尻に敷かれた感があります。一緒の時は絶えずちびっ子扱いされてきぃぃ!!って唸っております。