表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Case:EVERYDAY


「日常と言うのは

一体どういったものなのかな?」


どこか幼さを残しながらも

一方では大人の色香を見せ始めた

とても整った顔と、スカートと

ハイソックスの間から除く

健康的でいて、

どこか儚さを感じさせる

白い肌以外全てが黒で

統一された少女は自分の向かいに

立った、同じ様に黒で統一された

少年に若干楽しそうに尋ねた。


「は? 」


当然、少年は少女の意図なんて

理解していない為に気の抜けた声を上げた。


「『日常』だよ『日常』、

君は『日常と言うのは万人に

とって全く同じ物だ』と、思うかい?」


少女は少年の気の抜けた声を

気にも止めず、再び尋ねる。


「何です? 哲学ですか?」

「全く君という男は、

質問に質問で返すしか能が無いのかい?」


少年の全く感心を感じさせない

言葉のトーンに、少女も今度は

少しふくれっ面にならる。

最も少年からしてみれば、

先に理由告げずに訳の解らない

質問をして来たのは少女である為

罪悪感のざの字も感じていないが。


「まったく、仕方が無いな。

ではある例を話そう」

「・・・・・」


そう言うと少女は、

少年の無言の抗議も

意に返さず語り出す


「私達と言うごく一般的な

人間は政治家と呼ばれる人間と違い

『国』の運営例えば……そうだな

法律の制定や他国との掛け合い

などとは縁遠い

最も私の場合は2年後

君の場合は3年後選挙と

いうモノに呼ばれ国民の代表たる

代議士………詰まる所の政治家を

選ぶ様になる訳ではあるが

その行為が直接的に国の運営に

関わって来るかと言えば

別段そういう訳では無い」


と、少女は一気に

まくし立てると一拍

置いてから続ける。


「つまり、私達の政治に関する

『日常』と言うのは、

テレビで見たり新聞で読んだりするもの

と言うことになる。

では、ここでもし全く

政治と関わりを持っていなかった、

専業主婦の女性が行成

「明日から政治に関わって頂きます。

明日から貴女は政治家です」

そう言われたとしよう。

因みに飽くまでも例えだからな

変なツッコミをいれるなよ?

まぁ、兎に角そう

言われたとしよう。

さて、彼女にとってそれは

『日常』に起こり得る

出来事なのだろうか?」

「まぁ、『日常』じゃない

でしょう、少なくとも

彼女にとっては『非日常』ですよ」


自身の質問に対する少年の回答

ーそこに含まれている

諦めには気付いてい無いー

に少女は嬉しそうに微笑む。


「そうだろう?

ならば私達にとっての『日常』

とは何なのだろうか?」


少女の新たな質問に少年は

一瞬黙り顔をしかめるが

今度は直ぐに答える。


「ん、まぁ何時も過ごしている

其れが『日常』なんじゃないですか?」

「あぁ確かにそうだろう。

では、それは『あちら』の事かい?

其れとも『こちら』の事かい?」


少年の回答に頷きながらも少女は

意地悪そうな笑みを浮かべ

そう問い掛ける。


「ひっくるめてでしょう。

別段分ける必要を感じませんし。

そんな事より先輩……」

「う〜んそう答えるか〜。

其れはそうと、

もしかして急いだ方が

良かったりするのかな?」


若干少年の返しに納得の

いか無いものを感じながら少女は、

少年にとって漸く意味の在る質問をする。

と、同時に片足で踏んでいる

ものに力を加える。


「急いだ方が良いに決まってるでしょ。

ほらさっさと済ましますよ」

「は〜い」


少女の気の抜けた声を聞きながら

少年は利き手の人差し指に力を込める。

そして、少女も同じ様に…………




______________




とある国のとあるニュース番組が

繁華街の路地裏にて、

二体の死体が発見されたと報道している。

死因は頭部を銃で

撃ち抜かれたものが致命傷だが

其の外にも身体中に骨折や打撲痕が、

確認されたと言う。


「彼等にとってあれは『日常』

だったのかな?」


少女は隣に座る少年の肩に

頭を乗せ、目を閉じてから

そう言った。


「さぁ?

ただ、『普通の結末』では

あるんじゃないですか?」

「…………」


少年の言葉を聴きながら

少女は眠りに付いた。

少年はそんな少女の髪を

愛おしそうに撫で、

其れからリモコンでテレビの

電源を、落とした。




テーマは日常。

日常とは回帰したい場所。

自分の居場所で、帰りたい場所。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ