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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第3章 クーデター編
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3-5<空戦5>

「……あれは、<召喚されし者>?」



<ヴイーヴル>を操り、メリアを追わせながら正面を見ると、敵の隊列から1匹のワイバーンが飛び出していた。


二人乗り、その後ろに乗った恐らく男だろう人物の髪が黒い。



「……メリアを助けるつもり、かしら? でも」



そう、正直もう遅い。


メリアのワイバーンにはこのまま速攻で傷を負って堕ちてもらう。


運が良ければメリアは死なずに済むだろう。重傷は避けえないが。



「……それに、一匹増えた所で変わらない。」



<ヴイーヴル>の空戦性能は折り紙付だ。


さらに今回の為に高価な<甲盾熊の盾>製のワイバーン用鎧を3つも支給された。


一つは私の乗るワイバーンに着させたが、


残り2つを私が操る<ヴイーヴル>5体の内2体に着させている。


だからどんなにメリアや王女、それに<召喚されし者>が強力な魔力を持っていても、どうにもならない。魔法自体が殆ど効かないのだ。



今回の作戦で警戒すべきはメリアの持つ<魔槍ヴェルスパイン>ぐらいのものだった。


だがそれもアルモスで起こった彼女と<人型>との争いで壊され、修理中だと調べがついている。


振って湧いた偶然だが、確実な勝利を得るチャンスは、まさに今しかなかった。



「……敵軍は、動かない?」



陣形を変えてはいるようだが…何を考えている? すでに火蓋は切って落されている。


なのに動いたのは<召喚されし者>の乗った1匹。


攻めずに守ると言うのか? 何か策があるのか? いや、気弱になるな。


<ヴイーヴル>の存在は相手には想定外の筈だ。勝てる。


動かないなら、それはそれで好都合。<ヴイーヴル>の突撃で壊乱させるまでだ。


そう考え声を出す。



「……総員、まずは<ヴイーヴル>による正面突撃。その他の者は拡散展開、半包囲。……壊乱し陣を離れる者を中心に討って。相手は反乱軍、手心は……要りません。」



「「「オオオオオオオオ!!!!」」」



私の指示に応え、兵達の堰の声が響く。


メリアを圧倒したのが効いているのだろう。士気は十分だ。



「……では、進軍…!」



号令を下す。兵達の操る10匹の<ヴイーヴル>が上昇し、敵陣に向かう。


と、同時に急下降したメリアを追った<ヴイーヴル>を確認。地面へと着地、再離陸させる。


ワイバーンと違い、翼まで使用して四足着地をする事ができるようになった<ヴイーヴル>は衝撃吸収が抜群に上手く、着陸をかなりの高速下で行える。


さらにその強靭な四肢で跳ね上がり、そのまま羽ばたく事によって上昇時も一気に加速をするのだ。



堕ちたと思ったのだろう、上昇する<ヴイーヴル>にメリアは気づいていない。


ほんの一瞬、視線がぶつかり会う。


無様、と思う。自分の常識に拘泥し、敵から目を離すなんて。



「……このまま、ケリをつける」



だが、完全に不意打ちのはずの一撃を回避される。


まさかとは思うが、ただほんの一瞬私と目が合っただけで察知したとでも言うのか?


いや、例えそうではなくとも回避して見せた。


流石メリア、と感心する。


戦闘でのカンの冴えには目を見張る。王国最強の名は伊達ではないようだ。



しかし、バランスを崩したワイバーンは最早失速状態。


このまま二度と加速することなく<ヴイーヴル>に切り刻まれて終わり、だ。


そのまま上昇、旋回させ命じる。「メリアの乗ったワイバーンを傷つけ、不時着させろ」


彼女を殺せば、アーリントン家はますます態度を硬化させるだろう。


今はワイバーン隊を堕とし、制空権さえ得られれば良いのだ。


制空権さえ取ってしまえば後から来る本隊が空爆し放題。


陸軍も海軍も物の数に入らない。そうなれば降伏しかない。


――あの高度なら、目論見通りに出来る。


視線を正面に戻す。次の敵は、あっちだ。



そう、思った瞬間だった。


ぷつり。と糸が切れたような感を受ける。



「……何が」



覚えの無い感覚。自分に何が起きたかわからず、思わず体を確かめる。異常は無い。



「……今のは一体?」



分からない。だが、今は気にする事でもない。今は・・・


そこまで考えた所で前方で純白の光の線が下から上へと物凄い速度で幾本も走り抜けた。



「……え?」



ばらり、と先行し今にも敵陣へと突入しようとしていた<ヴイーヴル>が、一瞬でバラバラになり、崩れ散る。


ばかな。迎撃魔法か? 確かに今飛び込んだ<ヴイーヴル>達は鎧を着けていない。


高位の魔法使いなら魔法で堕とす事は可能だろう、無警戒過ぎた?



「フィオ隊長!」



周りの兵も動揺する。


持ち込んだ15匹の内の10匹もが、今回の作戦の要である虎の子の<ヴイーヴル>の大半が、一瞬で堕ちたのだ。


完全な失策。無理も無い。


そしてこの状況はかなりまずい。残っている<ヴイーヴル>は私の操る5匹しかなく、敵は堕とす術を持っている。



まずは今の魔法の術者を堕とさなければ、鎧を着た<ヴイーヴル>2匹に腕輪を通し命令を…


しようとした所で気づいた。1匹の反応が、無い。


何故? 周りを見回す。1、2、3、4私の周りを警護するようにホバリングしている<ヴイーヴル>達。全匹居る。


では、居ないのは…



そこまで考えた所で前方を通り過ぎた光の弦弧が先ほどの巻き戻しのように戻っていくのが見えた。


つい、目で追ってしまったその先は、先ほどもう片付いたと思ったメリアの方で、


二人乗りになったメリアのワイバーンが、幾何学的な光の輪を纏ってゆっくりと上昇して来ている所だった。

9/4<ヴイーヴル>の数の描写を加筆しました。

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