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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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1-8<戦利品の回収と付与魔法>

時間が無いとはいえ着の身着のままでは逃げられるものも逃げられないのだ。


ということで、俺はさっきからソフィーが乗せられそうになった馬車を調べていた。




時間が無いのでパパっと調べたのだが…何も無い、せめて夜の防寒にかけ布ぐらいと思ったのだが、毛布どころか水や食料すら無い。どうなっている?


幾ら目的地が本来の場所では無くこの近くだったのだとしても、何の備えも無い筈が無い。どう考えても水ぐらいはある筈なのに。


しかしやはり何も見つからない。




そのまま行くしかない。


そう判断しソフィーの元へ行く事にした。




「ソフィー、だめだ馬車には何も無い」



馬車から出て声をかける。


ソフィーは御者の体をまさぐっていて、その腰から小型のポーチっぽいモノを外しているところだった。


恐らく小物入れだろうか?そのまま外したポーチを開き、中を見ている。そしておもむろに何かを取り出した。


…鞘付きの大振りなナイフだ。見たところさっき御者からいただいたモノと大差ないサイズ・デザインのナイフをソフィーが持ち出していた。




そんなバカな。


ポーチよりかなり大きいサイズのナイフがその中から出てきたように見えた事に動揺する。



「ソフィー?そのナイフは…」


「はい、鞄の中にありました。他にも食料や水、薬類と…地図、コンパスもこの中のようですね…他にも色々ありますが、目ぼしいものは特に無いようです。」



食料?水?そんな小さなポーチに?


とりあえず思い当たる事は一つしかない。確認してみる。



「それも、魔道具なのかい…?」


「そうですね。そういえばこの鞄は魔道具といえば魔道具ですね。<特殊領域内包式鞄>?とか言ったような覚えがありますが…普通に使われておりますので、すっかり失念しておりました。」



やはり魔道具のようだ。収納用か?前の世界でも見た事が無い。元の世界なんて論外だ。


<意言の首輪>といいこの世界は魔道具が発展しているのだろうか?



「こちらの方には…よいしょっ」



そんな思考をめぐらせて居たところ、ソフィーが今度は確かロバート?の死体からもポーチ、いや鞄を取り出し中を覗いている。



「ぁ、こちらの方が毛布や着替えを持って居てくれたようですね。」



…かなり大きなものも入るようだ。無茶苦茶だ。



『なかなか興味深い魔道具じゃのう。便利そうじゃし…一つ欲しいのう』


(…2個有るし後でソフィーに貰お…う……)



マールの声に思い出す。向こうで死んでいる4人も持っているんじゃないか?


俺は慌てて数100メートル程先の死体の元へ走った。


死体を探る。4つポーチ、いや鞄か。を見つけた。内2つが血みどろだが…


とりあえず使い方が分からない、魔道具だし迂闊に弄らない方がいいだろう。


軽く表面の血を拭う。「中にたっぷり入り込んで居て開けたらどばぁとかなったらどうしよう」と嫌な想像が浮かんだが頭を振り、振り払う。


ついでに折れたもの以外の槍3本も拾っておいた。


毛布や着替えが入るんだ。この槍も入るかもしれない。


とりあえずソフィーの所へ持っていこう。




ソフィーの元へ戻り鞄を渡す。


ソフィーは空馬車を走らせて来たようだ。手際が良い。


槍も問題なくポーチに収まる。ついでにロバートの持っていたのも入れ、槍は4本になった。



「とりあえず拾うものは拾った。後は…」


『妾の出番じゃな。』



そうだ、この剣に魔法をかけるんだった。


剣を鞘から取り出す。折れ散った他の4本同様、装飾がある訳でもない。まるで支給品ですと言わんばかりの地味なデザインの鉄剣。



『うーむ見事な粗悪品じゃのう』



マールの感想もまた身もふたも無い。


抜いた剣を水平にし、空いた手で刃を掴む



(…よろしく)


『むー、とりあえず<硬固>でいいじゃろ。よっと』


『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』



剣が鈍く光る。魔法を定着させているのだ。



『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』


「ユート様?何を……」



ソフィーが驚いた顔で俺と剣を見ている。まだだ、もう少しかかる。



『〜〜〜〜〜っと完了じゃ。ふぃー……』



剣の<硬固>の付加が終わる、軽く叩いて確認してみる。大丈夫だ。



『後はソフィー嬢の分じゃ』



ソフィーの分も考えていてくれたのか。マールの気遣いに感心する。


と、そのソフィーがじーっとこちらを見ている。…気になるよね。軽く説明しとこう。



「剣に魔法をかけてたのさ、この剣もろいから。<硬固>を…」


「そんなことが可能なのですか?」


「ほんとは出来ないんだけどね…」



俺だってマールに教えてもらうまでこんな事が出来るなんて知らなかった。


さらに幾度か試してみたが、結局自分では成功しなかった。


曰く、そもそもの魔力の使い方が根本的に違う。ということらしい。



「え?」


「いや!なんでもない。とりあえずこれでそうそう折れなくなった筈。後は…ソフィー、さっきのナイフかして?」



ソフィーからナイフを受け取り、腰の後ろからもう一本ナイフを取り出す。


見たところデザインは同じだが微妙にサイズが違う。


ここは小さい方を使おう。それでも小ぶりな短剣程度の大きさがあるのだが、ソフィーが持つなら小さいほうが良いだろう。

残った大きい方はソフィーに返し、ナイフを抜く。



「…あれ?こっちは鉄じゃない?」



鞘から引き抜いたナイフの刃はややくすんだ青白いものだった。何処と無く石っぽい。少なくとも金属光沢は見当たらない。


しげしげと確認した後、先ほどのように刃先と柄を握り、マールに声をかける



(…よろしく。)


『・・・・・・』



マールが返事をしない。



(…どうした?)


『……こっちの方が硬度が高いではないかーーーーー!!!!』



っ!?


マールが大きな声で怒声を上げる。思わずのけぞった。


なんだ?こっちの方が良い物だったのか?ではさっきの剣は?



『…まぁ、よい。いや良くはないんじゃが、仕方ない。ともあれコレに<硬固>は要らぬな。さっきの<硬固>を込めた剣と比べてもやや劣る程度には硬度がありおるわ。』


(<硬固>付き並だって?どうなってるんだよ、さっきの粗悪な剣は何だったんだ?)


『妾は知らぬ。考えるのもイヤじゃ…<硬固>は疲れるのに…ブツブツ』



マールがブツブツ恨み言を言う。



(と、とりあえずどうする?要らないならもう良いか?)


『いや、折角じゃから他の魔法を込めようぞ。そうじゃな、妾の得意な所で<予防>と<治癒>をかけておくかの』


(俺には要らないが?)


『ソフィー嬢の為じゃよ。気づいておるか?さっきの兵士といいソフィー嬢といい<強化魔法>がかかっておらぬ』


(どうなってるんだこの世界は?)


『そもそも知らぬのか、必要でないか、まぁ後で聞けば分かろうて。とりあえず森を行くのに<強化魔法>無しでは生傷だらけになるのがオチじゃ。あの珠の様な肌が!それは見るに耐えぬ。』


(…そうだな、よろしく。)


『む。〜〜〜〜〜〜〜〜』



ナイフが発光する。さっきより幾分か少ない時間で発光が終わる。



『完…了…じゃ。後の魔力はおんしに回そう。一気にここから離れるのに必要じゃろう。もう時間も無いだろうてな。』


(分かった、お疲れ。)


『それでは…また後での。』


(お休み、マール。ありがとう)


『お休み、我が主。愛しておるよ』



「・・・」



不意打ち。頬が熱くなるのを感じる…きっと赤面してしまっている。



俺の反応を確認し、けらけらと一通り笑ってマールは眠ったようだ。


それと同時に魔力が少し回復する。これなら1時間は走れそうだ。



「ソフィー、お待たせ。これを持っておいて。<予防>と<治癒>がかかってる。これから森を行くなら有った方が良い。」


「<予防>と<治癒>ですか? 良く分かりませんが、…必要な物なのですね。ありがとうございます。」



不思議な顔をしていたが、素直に受けとって腰に付ける。



薄々そんな気はしていたが、どうやら<予防>も<治癒>も知らないようだ。これはますます色々確認する事がありそうだ。

逃避行開始!と見せかけて最低限準備はしなくては、と言う回。

次回からついにモンスター入り混じる森へと進みます。

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