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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第3章 クーデター編
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2-4<臨海都市アーリントン4>

「あの、一つ聞いてもよろしいですか?」


「どうぞ、メルディアさん」



メリアの長話が終わった頃にメルディアさんが質問してきた。


話自体は途中でソフィーも加わり、やや…いやかなり美化された俺の赤面ストーリーが展開されたが、割愛したい。


あまり人には話したくない白馬の王子様ストーリーと化していたし。



「メル、でいいですわ。それで、貴方は人間なのですの…?」


「残念ながら、人間です」


「人間。と言うのは名ばかりで実は別な存在なのでは…?」


「本当に人間です。これまでの<召喚されし者>とも同郷です。」


「一体この20余年で何が…私達の知っている<召喚されし者>とかけ離れ過ぎているのですが。<意言の首輪>も着けて居らっしゃらないようですし?」



若干定番化している質問だ。ともあれ、説明しないと…と思ってるとメリアがまた口を開いた。



「メル、納得行かないのは分かる。私もそうだった。だが、ありのままを受け入れるのだ。疑問を持ってもユートの強さは変わらない。」


「この説明も毎回ですしね。ユートさん」


「そうだね。」


『まぁ、どう繕っても常識外れじゃからの』



マールも賛同する。確かにどう言い繕ってもその通りだろう。


今までの事を聞く限り、元勇者とか絶対居なかっただろうし。



「そうですか…まぁ切り札が増えた、とでも思えば良いのでしょうね。…とんだワイルドカードみたいですが」


「頼もしい限りではないか。」


『実践してやってみてはどうかの、百聞は一見にしかずと言うしの』



そういってマールがにやぁ…っと笑う。


おいおい何を言い出すんだ、そもそも何をしろと。後、何を企んでいる。



「なるほど、それはいいな。…だが何をする?」


「以前森で私に見せてくれた石投げで良いんでは無いでしょうか? 中庭に丁度良い石ならごろごろしてますよ?」


「それだ。」



本人の与り知らぬ所で話が進んで行っている。



『まぁ、余興じゃよ』


「…過激な余興になりそうな気がするのは気のせいかな」



とりあえず中庭に向かう事にした。




◆◆◆◆◆◆◆◆




結論から言うと、やっぱりやり過ぎだったようだ。


高さ3m程の岩があったのでそれに向かって例によって人の頭大の石を投げて、投げた石ごと岩の上部を1/3程木っ端微塵に粉砕したわけだが、


かなりの轟音を発した為、何事か!? と、大量の警備兵を呼び寄せる事になってしまった。


そして何が起こったかを説明するためにもう1投。


残りの岩をさらに粉砕し大音声と共に突き抜けた石が中庭を少し破壊した。



「何度見ても凄まじい威力ですねー」とのほほんと言うソフィー、


「流石だ。うんうん」と賞賛するメリア、


唖然とする警備兵の皆さん。


そして肝心のメルは…腰を抜かして尻餅をついていた。



「その…大丈夫?」


「…大丈夫じゃありませんわ、セバス、ちょっと立てそうにありません。わたくしを起こして下さいまし。」


「…承りました」



セバスさんも若干衝撃を受けているようだ。


そう言えばセバスさんは話に聞くだけで俺が戦っている姿を見たことが無かったか。



「今のですら本気でなく軽い一撃だ、と言う話なんですわよね?」


「その通りだ。」



俺の代わりにメリアが答える。いやいや、結構全力で投げてるんだが?


確かに魔法に比べれば大した威力では無いかも知れないが…



「…貴方とだけは敵になりたくありませんわ」


「そうだね、仲良くしてくれるとありがたいよ。」


「…メル? 貴女もユートさんに…?」



ソフィーの瞳がすっと剣呑な色を灯しメルを見据える。だが、それを受けたメルは軽い感じで返した。



「それは無いですわ。正直言いましてわたくし、ユート様はあまり趣味じゃないですし。」


「メルはもっと年上が好みだもんなぁ…」


「その通りですわ。確かに、強さは認めます。ですが滲み出る男の魅力に欠けていてはわたくしは靡きませんことよ?」



ふふん。と…鼻で笑われてしまった。


何かこう残念なような良かったような、複雑な気持ちにさせられたがまぁ良いだろう…


ソフィーもそう言えばそうでしたね。と落ち着いたし。



「轟音に目が覚めて来て見れば…何事ですか? これは?」



そんなこんなで雑談をしていたらエーリカさんも起きて来ていた。



「お母様! お目覚めに成られたのですね!」


「お早うございます叔母様、お加減はどうですか?」


「ええ、お早うメリア、ソフィー、メル。そういえば随分と楽になったわ。寝ている間に何か治療を?」


『うむ。おんしの病は完治させておいた。感謝するが良いぞ』


「完…治……? 本当に?」


『妾は嘘を付くのかの?』


「私はつくと思う」


「私もそう思います」


「ええ? 妖精は嘘を付かないのでは有りませんでしたか?」



ソフィーとメリアが即答で答える。うん、俺もメリアとソフィーと同意で、つくと思う。


そしてメルが定番の妖精は嘘を付かないネタを出した。これももう毎度恒例だ。



「確か魔族、と言っていましたね…何を引き換えにしたのですか」


『別に何も? 妾は悪魔という訳でも無いしの。強いて言えばおんしの病の元になった<世界の欠片>はいただいたの。ユートが』


「ソフィーとメリアとメルの分も有りがたくいただきました。」


「では、私達は…」


『あぁ、もう病では死なぬよ。寿命をまっとうするかはこれからの生き方次第じゃがな。』


「…」



絶句し、黙り込む。恐らく信じられないのだろう。


持って3年だったという命、既に覚悟だって決まっていた筈だ。



「そう、ですか…いえ、ありがとうございます…感謝してもし足りないのですが実感がどうも」


『致し方ないじゃろ。まぁおんしの旦那を助け出してから祝おうではないか。』


「そう、ですね…そう、こんな事をしている場合では…!」



「お母様、お母様、お待ち下さい。病み上がりですし少し休憩を取ってください。もう3日もすれば体力も戻るそうですから。」


「そうです。時間が無いとは言え今は作戦を練るべきです。」


「とんだワイルドカードもできたことですし、わたくしも作戦を練るのは必須だと思いますわ。」


「ワイルドカード? この惨状…と何か関係が?」



やはりそこも説明しなくてはならないか。


なんだか説明ばっかりしている気がする…



『お互い何も知らんからの、致し方無い。妾らも事態の説明を受けようではないか』


「そうだね」


『ふふふ、風雲急を告げる事態、じゃ。盛り上がってきたの』


「不謹慎だよ?」


『妾は魔族じゃからの、そういう所は諦めておくれ。』


「それもそうか」



「では、一先ず応接間に向かう事にしませんこと? ここは人が多いですわ。」



メルが提案する。


とりあえずここではどうか、と言う事で移動する事になった。

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