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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第3章 クーデター編
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2-3<臨海都市アーリントン3>

まさかの漢泣きの後、セバスさんが説明してくれた。



エーリカさんが患っていた病こそ、王家の血筋の女に代々遺伝してきた不治の病である<召喚の呪い>。


だいたい40歳前後で発症し、発症すれば最後、5年以内に確実に死に至る。と。



『<召喚魔術>の弊害じゃな。あんな強引に対象を掴み取ってくるから、繭も吸収してしまっていたんじゃ。』



3人娘もディープなキスで処置したマールが補足をしてくれた。なるほど、そういう事だったのか。


4人の過剰な反応にも納得がいった。



結局手に入った<世界の欠片>はエーリカさんの4つ、メリアの2つ、メルディアさんの2つ、ソフィーの10個。合計18個になった。



『恐らく40年というのも<召喚魔術>で扉が開いたのに反応して活性化したせいじゃと思うの。』


「では、では、王家の血筋の子は3代女しか生まれない、というのもこのせいなので?」



オドオドキャラを捨て去ったメルディアさんがまたマールに肉薄し迫る。



『あーそれは関係ないの。それは<世界の掟>じゃ。異世界人は異分子じゃからの。その世界ごとにいろいろな方法で排除したがる。』



ちょっと引きつつもマールが返答する。



『ま、恐らく完全に子孫を残せなくするでなく、ひたすら薄れて混じる事で良いとこ取りする事を選んだんじゃろ。この世界は。』



なかなかしたたかな世界じゃ。とさらにマールが補足したところで、三人娘はすこし残念そうな顔をした。


以前に聞いた話の通りだと、彼女達も娘しか生むことが出来ない。やはり寂しいものが有るのだろう。



「お父様も感激するだろうな…」


「そうですね…叔父様は必死でしたものね…」


「…救い、出さないといけませんわ。」


「問題はどうするか、だね」



「…私の案は大抵却下されるので黙っておこう。殴り込んであの根暗眼鏡を締め上げ丸焼きにすると言っても却下なんだろうし。」


「言ってるじゃないか…でも、却下だろうねそれ」


『明らかに却下じゃろうて。敵本拠地で首魁を失い混乱し大惨事、どさくさに紛れて人質も殺されかねん。』


「…やっぱり却下されるんじゃないか」



まぁまぁ、とマールに駄目出しされしょんぼりしてしまったメリアを慰める。


効果はてきめん。シュンとしたメリアはすぐに元気を取り戻し、「ありがとうユート」と嬉しそうに微笑んだ。


…のだが、ソフィーが睨んでいる気がするので早めに離れておく。今はモメてる場合じゃないのだ。



「とりあえずは協力者を当って情報収集もすべきかと存じます。敵の新兵器、とやらも何も詳細は分かりませんですし。」



セバスさんが提案する。なるほど、確かにそういう事は必要だろう。


流石セバスさん。実に堅実かつ的確だ。



「と、なりますと居留中の捜査局員に当るのが一番ですわね。情報も有るでしょうし、中立を謳うでしょうがベル達は確実にこちら寄りで動いている筈ですわ。後で呼びつけましょう。もちろんお付も一緒で。うふふ。」


「あの狸娘か…間違いなくフェルブルム卿を救おうと動くだろうな。お爺ちゃん大好きっ子だしなぁあの娘…」



何か知らない人物の話題がでたが、知り合い程度のそれ程重要人物でも無いようだ。


今考えるべきはそんな所ではない。



「問題は俺とソフィーをどう動かすか。」


「そこだな。」


「そうですわね。」


『流石におんしが出張って城攻めはまずかろうて』


「…私はそれが一番手っ取り早い気がするのだが」


「誰が敵か味方か分からない、無差別に無力化して鎮圧する訳にも…上手く無力化できずに死人も出ちゃうだろうし」


「力押しは避けたいです。無用な犠牲を生みますし…できれば会談等で穏便に済ませられれば」


『ふーむ、しかしそれをするにも状況は向こうが有利。もしもの時の人質もおるしのぅ』


「やはり、何処かでこちらの優位性を確立する必要がある、と存じます。」


「うーん、集団戦だとかなり犠牲がでちゃうし、やっぱり俺が行くのが良いのかな…」


「あの、物凄く気になるので口を挟みますけど、普通に一人で制圧出来るって言ってませんこと?」


「できるからな! フフフ…流石我が理想の夫…完全防備の一国の首都だろうと一人で制圧可能…素晴らしい、素晴らしいです…」


「お姉様、落ち着いてください。」



慌ててソフィーがなだめる。いかん、メリアの目つきが危ない。またあの人格が出掛かっている。



「メ、メリア姉さまの夫…? ソフィー姉さまの夫なのでは?」


「フフフ、私は後宮に入りユートに侍る事にしたのだ。故に私の夫でもある」


「そういうことなんです…」


「はぁ、まぁメリアお姉様ですし、納得ですわ。それにしましても…それほどまでに強いのですか? ユート様は?」



失礼ながら、そうは見えませんのですが…と言ってメルディアさんが訝しげな目でこちらを見る。



前々から時々思っていたのだが、…俺って確か次代の王なんだよね?


どうして皆して結構な、ぞんざいな扱いをなされるのでしょうか。


ソフィーとマールは仕方ないとは言え、オサといい、メリアといい、メルディアさんといい、


…ワイバーンに初めて乗った時のセバスさんといい。


特段威張ったり増長したりする気はないのだが、それでもあまりにもあまりな応対に少し悲しくなる。


不敬罪とかないのだろうか?


いや、あんまり畏まられるのはそれはそれで嫌だけど…



「それは…」


「勿論だ! 良くぞ聞いてくれた! さぁ今こそ語ろうユートの武勇伝を!!」



あまりに不躾な視線に悶々としている間に、ソフィーが何かを語ろうとした所をメリアが喜色満面な大声で塞ぐ。


いやいや、ちょっと待ってくれ。



「武勇伝とか言われても?」


『…長くなりそうじゃぞ』


「まぁ、時間はありますよ…作戦会議は叔母様が起きて来られてからでも良いですし…」


「そうですわね。それに武勇伝、ちょっと聞いてみたいですわ。」


「うむ! まずは最初からだな。召喚されたユートは危険を告げられソフィーと共に塔を脱出しようとしたのだ。ところが既に3人もの刺客が卑劣な事に護衛に化けて居てな、不意打ちで襲われてしまったのだ! だがそれに敏感に反応したユートは、同じく不意の一撃で無残にも討ち取られた私の部下の遺体から剣を拝借すると一刀の元にその賊を鎧ごと切り裂き………



メリアの話が本当に始まりから始まった。長くなりそうだ…

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