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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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1-7<撃退と魔力切れと逃避行>

全身の<強化魔法>を活性化させて走る。100メートルそこそこ程度なんて一瞬だ。


ロバートはソフィーを押し込むのに夢中でまだこちらに気づいて居ない。



「ユート様!」



ソフィーが叫ぶ、そこで初めてロバートが俺の接近に気づく。だがもう遅い。


減速することなく突き進み、振り向く最中のロバートの首元に体ごとぶつかるようにして剣を突き入れる。


バキン!と予想通りとは言えまた剣が根元から折れた。構わない、しっかり首に突き刺さった。致命傷だ。後1人――!


ざっと最後の一人の居た方向に視線を回す。だが、その先には誰も居ない。


居ない?さっきソフィーを馬車に詰め込もうとした御者は!?


さらに視線を巡らせる。気配も感じない。何処に…そこまで考えた所で視界の端を何かが掠め、それを追って足元を見た。


そこには何か全身をこれでもかと捻じって倒れる御者が居た。



『…少なくとも気絶は確実、じゃろうか?』


(…むしろ、死んでるような)



ビンタ、すげぇ


とりあえず軽く揺らすようにケリを入れ、完全に意識が無いのは確認しておく。というかはんのうがない、…御者はもう放置だと決定。


腰の後ろの大振りなナイフはいただいて自分のベルトに刺しておく。


ついでにロバートの剣もつり紐を切って鞘ごといただいておいた。


そうして馬車の前で立ちすくみ、キョロキョロ死体と俺を見回し困惑しているソフィーに話しかける。



「ソフィー、大丈夫!?」


「はい、でも残っていた魔力を使い切ってしまいました…私はもう暫く魔法が使えそうにありません」


『なるほどの、あのビンタは魔法入りじゃったか。納得の威力じゃ!』



マールがからからと笑う。



(…どうりで俺が吹っ飛んだ訳だよ、やっぱり御者さん死んでるんじゃないか?まぁこの際それでも構わないのか?)



チラリ、ともう一度見る。…言われてから見ると首が凄く長くなってる、ような・・・。


いやいや、それよりもだ



「ソフィー、どうする?何かトラブルが起こってるようだけど」


「そう、ですね。まさか彼らが裏切るだなんて……」



声に張りが無い。やはり信じ難い事態だったのだろう。



「やはり急ぎここから離れましょう。計画が知られていた可能性があります…そうなると、後詰の部隊が向かっている可能性が高いですし…」


『そうじゃな、それなりの数の敵意ある者が迫っておる』



ソフィーの懸念を、マールが断定する。


…敵意、か。少なくとも味方では無さそうだ。



「どの方角に行くんだ?」


「方角…ですか?えと、当初の計画通りですとこのまま北東の街道へ向かいます。



途中旧道を使って隠れながら進み、最寄のアルモスへ逃げ込もうと思います」



(マール、敵の居ない方角は?)


『全部敵、とするとほぼ真北ぐらいじゃな。特に北東、西、南東の3方向から、集団が向かって来ておる。この速度じゃと一番早い西の集団がおおよそここから2時間ぐらいか?その間を埋めるように少数の人間の気配もしおる。明らかに包囲して来ておるな。ここに無い馬車は集団に向かっておるようじゃし、街道でもあるんじゃないかの。』


(…そうか。)



一人で突破するだけならば、容易いだろう。だが魔力切れのソフィーを連れてというのは難しいと思われる。


しかも俺自身に魔力も武器も殆ど無い今、戦えば力任せに殺すしかなく、それは凄惨な事になる。


確実に凶悪な殺人鬼として名が売れてしまうだろう…正直、それは避けたい。



「ソフィー、街道は何本あるんだ?少なくとも北東、西、南東の3方向。その間も人を配置していて何者かが包囲して迫って来ている」


「…!そんな!分かるのですか?距離は…?」


「あぁ、分かる。既にかなり近くに来ている。恐らく後2時間ぐらいでたどり着く。」


「そんな…全部の街道をだなんて…それではどうすれば…」



ソフィーが困惑し、戸惑う。



「すべて敵、なのか?味方という可能性は?」


「恐らくありません。王都の兵は今日は皆警備で詰めていますし、姉達が来るならワイバーンに乗って少数で空から来るはずです。」



ワイバーン、空から、と言う単語に反応する。ついワクワクしてしまう。いけない、そんな場合じゃないのに!


でも男の子の性なんだー!と心の中でいい訳をしておく。


思考が脱線した。戻そう



「北方向は行けないのか?街道は無いようだが徒歩でなら……」


「北は目の前にモンスターが生息している大きな森があるのです。たとえ万全な状態でも二人でなんてとてもじゃ有りませんが無理です、危険なのです。あそこは最低でも討伐隊が小隊規模で向かうような所なんです!それに…魔力の切れた私では……やはりとてもじゃ有りませんが抜けられません。」


「だがどちらに向かっても八方塞がりでは北しか無い。」


「死にに行くようなものです!」


「大丈夫、さっきの戦いを見たろ?俺は、強い。」


「行こう?ソフィー。命に代えてなんて無謀な事は言わない。俺が守り抜いてみせるから。」


「ユート様…!」


『ぉーぉーぉー!カッコつけたのぅ!』



マールがちゃかす。


あぁそうさ、カッコつけ過ぎた自覚はある。恥ずかしくなるからからかわないで欲しい。



(…やるしかないならやるさ。)


『フフ…おのこじゃのう。悪くはないぞ、むしろ好ましい程じゃ。よかろう!妾も奮発してそのなまくらに魔法をかけようぞ』


(…できるのか?)


『魔力的にかなりギリギリじゃ。魔法を使こうた後は10日程の眠りに入る』


(…分かった。頼む。)


『うむ。頼まれた。おんしこそソフィー嬢を頼むぞ?』


(頼まれた。任せろ。)



「行こう、ソフィー。」


「はい、ユート様…」




戦闘時の高揚でちょっと自分に酔った俺は気づいてなかったが、


この時のソフィーの目つきもかなり酔っていた。心酔、といった感じに………

…地図でも描かないとダメな気がしてきました。

方角など後で修正するかもしれません。

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