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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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9-1<別れ>

「そんじゃまぁ、ここでお別れだな。」


「すまないな、私が送っても良かったのだが…」


「何、気にすんな。どの道ワイバーンに変わりはねぇ。お前らも急ぎたいんだろ?」



ウサミミ特課兵を尋問後、特に呼び出される事も無く2日間の逗留期間を終え、


ついにオサ達が村に戻る時がやってきていた。



メリアは自分とセバスさんのワイバーンで送る気満々だったのだが、セバスさんが「我々もアーリントンに急ぎ帰還すべきです。」と止めていた。


それでは私の面目が…と少し揉めたのだが、既にセバスさんは軍の詰め所で配備されていたワイバーン隊を一時接収して運んでもらうよう交渉済み。


メリアもあれこれと言ったものの、急いだほうが良いのも事実だったので結局セバスさんの案を呑んだ。


俺は軍の割にこんな小間使いを任せられるなんて、フットワークが軽いなぁ。


と思わないことも無かったが、都合が良いので口を挟まないことにした。



「色々楽しかったぜ。次に会う時はもうタメ口きけねーな。王様に王妃様よ。」


「そんなことは御座いません。長寿族の貴女なら誰も苦言は言いませんよ。なんでしたら私が言わせません。」


「お世話になったしね。色々片付いたらきっと会いに行くよ。」


「オレの方こそ色々世話になっちまったがな。だが、まぁ期待して待っとくよ。お土産忘れんなよ?」


「ははは、流石オサだ。」


「ええ、何か面白い物を用意しますよ。」



期待してるぜー。と笑う。そうだ、別れはこのぐらいの軽い感じがいい。



「さてと、んじゃ後は…マール、こないだ言ってた質問いいかな?」


『ほう、ここでいいのかや?』



そう思った矢先に、オサの表情が硬くなる。


質問。初めてメリアと出会ったギルド館での会話を思い出す。あの時「後で良い」と言っていた事か。



「俺たちは席を外そうか?」


「いや、かまわねぇさ。で、だ。オレの探し物はどうすれば手に入る?」


『その質問に答える前に聞かせて貰う事があると言ったの。』


「あぁ、聞いてくれ。答えられる限り答えるさ」


『では問おう。おんしの両親は今何処におるのじゃ?』



オサの両親?何故そんな事をマールが聞く必要が?



「両親、か…おふくろは生きてはいるだろうな。オレが9歳の時に人間に追われてな…そん時にオヤジが死んで、出て行ったよ。それきりだ。」


「そんな…」



…ソフィーが呟き、メリアが息を呑む。


人間に追われて…明らかに穏やかではない。



『なるほど、の。そういう事じゃったか。』


「オサの両親に何かあるのか?」


『すまんが事はこやつの家族の内情、今のおんしには聞くべき資格が無い。話せぬ。』



…それもそうか。



「いや、すまない、忘れてくれ。オサもごめん。無神経だった。」


「気にすんな、もう300年も前の事だ。当時の人間は皆死んじまってるし、オレも親離れしてるしで問題ないからな。」


『で、じゃ。先ほどの質問に答えよう。』


「ああ」


『おんしの探し物を得るには今の方法は無駄じゃ。失せ物自体を見つけるか、同等の物を代用にせぬ事には手に入らぬ。』


「そう…か…」


『難しいじゃろうな。』


「いや、分かった。ありがとうよ。闇雲に探すよりかはよっぽど良いさ。」


『精々、がんばるんじゃな』


「ああ」



この話はここでお終い。と言う事らしい。


あまり内容が理解できない話だったが、俺が理解するべき事でもないだろう。



「それじゃ、もう一つだ。おい、ユート。お前は何で何も聞かないんだ?」



もう一つ、と言って今度は俺に話が振られる。だが…



「両親の事か?それは俺が聞いて良い話じゃないんだろ?」


「違う。ギルドでの事だ。」


「ギルドでの…?」


「ああ、オレはあの時聞いてたたんだ。受付の姉ちゃんとお前が<晶眼蟲の瞳>の値段について話してたのを、な。」



聞いていたのか…なら助けてくれても良かったのに。


と「会費千Gの失敗」の件を思い浮かべる。



「聞いた筈だ。アレの売値が幾らになるか。なのに、なんでオレを問い詰めない?正直、あの時からいつお前がオレを糾弾するのか気が気でなかった。なのに今の今になってもお前は何も言わない。分かってる筈だ。アレはそう易々と渡して良い額のモノじゃない…なぁ、聞いたんだろ?なのに、なんでお前はオレを責めないんだ?お前が無知なのを良いことに騙し取ったようなものなんだぞ?」



…自分でせがんで受け取っておいて、気にしていたのか。


黙っていれば良かったのに。悪人にはなれないようだ。くすり、と笑いが零れる。


なら、素直に答えよう。



「そうだな…俺には必要ないものだったから、…それにオサは壊された村の復興にお金が必要なんだろ?」


「…本当に、それだけで、なのか?」


「他意は、ないよ。素材だってまだ他にも色々沢山あるし。短い間だったけどオサとは楽しく旅をさせてもらった。その報酬。それでいいかな?」


『ふふふ、目の飛び出る高額報酬じゃ。』


「…ははは、マジかよ。お前はどこまでお人よしなんだよ」


「良いじゃないか。素直に受け取ってくれよ。恩に着ることも無い。」


「本心、なんだな…そうか、いや、うん。そうか…」


『こやつの甘ちゃんぶりは妾が保障しよう。本当に他意はないぞ?』


「ははは、そうか、そうか…うん。ありがとう。受け取っておく。無駄にはしない。」


「ああ。」



オサの目じりに光る物が見えた。


…ちょっと良い格好しすぎたかもしれない。



すこし湿っぽくなってしまったが、今度こそ、話はお終い。


そして名残惜しいが、お別れの時が訪れた。



「さて、聞きたいことも聞けたし…行くか。じゃあ、またな!」


「御武運を」


「お達者で」


「またな」


『また、の』



軽く挨拶を交わしたオサは踵を返し、パタパタとヤスさんとシズクさんを待たせている2頭のワイバーンの元へと向かう。


ひょいひょいっと軽い足取りでワイバーンに乗った所で、そのままワイバーンが浮上を始める。


ワイバーンの腹で姿は見えないが、手を振り見送った。



「それでは私達も行こうか。」


「そうだね」


「はい」



俺たちもセバスさんの待つワイバーンの方へと向かう。


目指すはアーリントン。ここからワイバーンで3日間の空の旅が始まる。

これで第2章は完結となります。ここまでお読み下さりありがとうございました。


次回からは第三章「クーデター編」になります。

名前は出ていませんでしたが時折話題に出ていた人物や、メリアの一家などかなりの人数が追加登場し、物語は一つの区切りを迎えます。


増えすぎた人達とその掘り下げや掛け合いで構成がー!!と苦しむ筆者を尻目に物語は進みます!

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