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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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8-2<覚悟はあるか>

「先ほどのお話は、私にも言っていたのですよね。マール。」



皆が押し黙って、食事を終えた頃になってやっと私は口を開く。


先ほどの言葉、ユートさんを責める為ではなく、


むしろ彼とマールを受け入れる私に確認していたように感じていました。



『察しがいいの。その通り、おんしらに聞かせたくもあった。妾らはそういう存在じゃ。そしてそれを知っても尚、妾らと関わる覚悟は、あるかや?』



覚悟、そんなものは…と思う。でも軽々しく答えて良い問題でもない。


どう、答えましょう…?と思考が上手く纏まらないで言葉に出来ずにいると、



「フ、フ、見くびってもらっては困るぞ魔族よ。既に昨日誓約した通りだ。私は涅槃までだろうとユートの元を離れる気はない。」



代わりに答えたのはお姉様。それはいやに自信満々で…その言い様に、聞き逃せない含みを感じました。


マールへの回答は後回しにし、お姉様に問いただしたくなりました。何か、いやな予感がしたので。



「…お姉様?それは、一体?」


「ん?あぁ、ソフィーは知らなかったのか。なに、私はユートに侍るため後宮に入る事にした。それだけだ。」



後宮…?


それは確かお母様が死んで、私の魔力が歴代巫女の2/3程度しかない事を知った貴族たちが


10年前お爺様に無理矢理受け入れさせた法案と施設…


思い出す。


後宮制度、その名目は「王家を血を絶やさぬ為に諸子の子を」ということでした。


ですが、大半の貴族の本音は「王家とのコネと権力」


しかし王家の血が混ざれば3代娘しか生まれなくなってしまいます。


それは必ず婿養子を迎える事になり、家督を譲らねば成らないということ。


それでも、魅力的な事。


特に家督に関わらない分家の娘や兄弟を持つ娘が次々と送り込まれました。


中には既に結婚し、夫子を持つ女を無理矢理引き裂き送り込んだ家もあったそうです。


王国最強と謳われるお姉様で分かるように、


王家の血族の娘は一般人とは一線を隔する魔力量を有するので、


ともすればたった一人でもそれなりの規模の軍隊並の力を発揮できる場合もありました。


貴族たちはその力を欲しがりました。


さらにここ数代、王は王妃以外を求めようとしない男ばかりで、少子化も深刻でした。


その結果、既に存在していた王家の血族の者たちの血も薄れ切ってしまい、


ごく少数の妹姫の子孫以外の王家の血族の者が居なくなっていたのです。


そんな折の両親の他界、私の魔力量の低さ。そこを突かれた国王派の貴族も賛成し、王国議会で強引に可決されてしまった事。



ですが、それは遅すぎました。後宮が建設された年すでにお爺様は65歳。


まだ何とかなる、と人身御供に出された娘たちの犠牲は空しく、


結局子は一人も成されず後宮は5年程で自然と閉鎖されてしまって…



その、後宮にお姉様が入る?



「どうして…?」


「愚問、だなソフィー。私の好みは知っているだろう?」


「お姉様の好みの男性…年下で自分より強い…」



…ユートさんはまさに的のど真ん中。



「その通り。故に私がユート以外に侍るなど考えられぬという事だ。」


「ですが!ユートさんは<召喚されし者>で、私の…!」


「それも承知している。だが、後宮はあるのだ。問題はなかろう?」


「でも…」



反論、しきれない。お姉様は頑固者だ。


筋が通らないと、きちんとした理由でないと説き伏せる事は出来ない。



「案ずるな。私もお前とユートの為に精一杯尽くそう。後宮は私に任せろ。貴族派の連中のいいようにはさせん。」



…正直、頼もしい。すっかり忘れていたとは言え、そういうものは既にあったのだ。


私だけでは貴族派の送り込んだ娘達に翻弄されていたかもしれない。


その点でも、お姉様がユートさんに侍るのは良い事なのかもしれない。


納得は、行く。行くのですが…何かすっきりはしません。



「わかり…ました…」


「今はまだ、納得いかないだろう。それも分かる。だが私はもう決めた、譲る気は無い。」


「…私のため、ですか?それとも本気で、ユートさんを?」


「正直に言うと前者はついでだ。私は本気でユートに惚れた。この想いを邪魔するなら、ソフィー、お前とでも戦う気概がある。」



そうか、お姉様は本気なのですね。



「認めるしか、ありませんね…まだ、納得しきれていませんが」


「あぁ、すまない。ありがとう。」



ふー、と一息をつく。



「いえ、…そうですね。マール、覚悟、という話でしたね。」


『うむ。』


「覚悟、なんてものは<召喚魔術>の前に決めていましたよ?今更、戻る気は有りません。何処までも、この想いのままに突き進むまでです。」


『結構。フフ…これからもこやつをよろしくの。二人とも』


「はい」「ああ」


「…」


「覚悟、か…」



『さて、話も纏まった事じゃしこれからどうするかの?』



話はここでお仕舞い。と言わんばかりにマールが話題を変える。


ですが、私は最後にオサが深刻そうに小さく呟いたことが気になっていました。

8/17誤字修正しました。

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