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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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8-1<罪と戒め>

「なぁ、お前さ、なんであんなに怒ってたんだ?」



ウサミミ特課兵を開放し、結局食堂ではなく部屋で昼食を摂ることにして、


皆で部屋の机を囲んで料理に舌鼓を打っていたのだ、その最中にオサが唐突にマールに質問した。


確かに、気にはなっていた。だが聞くのがどうも躊躇われた。


こういう時ズバっと言えるオサはすごいと思う。



『ふん。事情聴取に妾が呼ばれなんだからの、その上妖精妖精妖精と、いい加減ナメられっぱなしでは魔族の沽券に関わる』


「そんな理由だったのかよ…」


「そこまで怒ることだったのですか?」


「私はもうわきまえたがな…」


『あたりまえじゃ。おんしらは似ているから、という理由で蟲呼ばわりされて気分が良いか?種族を間違える、というのはそういうことじゃ。

それにあの者は完全にナメておった。別に話しても問題無い任務の癖に、話しかけて居るのが妾と気づいた途端に驕り、とぼけおった。じゃから思い知らせてやったまでよ。

大方妖精は人を害さない。とかそんな感じの都合の言い常識があったんじゃろう?嘘を吐かぬと言うのと同じでの。』


「分からないでもないけど…でもほらこの世界には魔族が居なくて今の見た目は妖精そっくりらしいし?」


『それでも、じゃ。せめて近場から認識を改めさせるのじゃ。』



そこまで言って、コップを両手で持って一気に水を煽り、どん。と置いて一息、さらに言葉を続ける。



『よいか、妾が本気を出せばこんな小国の民ぐらい一晩で全員殺しつくしてくれようぞ。そんな真似が妖精にできると?』


「…できるのか?」


「冗談、ですよね?」


「…」



メリアが疑問を挟み、ソフィーは信じられないと言った態度、そしてオサは深刻な顔で黙り込んだ。


メリアとソフィーの反応は分かるが、オサの反応が意外だった。長寿族として何か否定できない要素を知っているのかもしれない。


それは兎も角、だ。



「マール。出来るんだろうけどさ、本当にはやらないでくれよ…そうなったら俺はお前を消すしか無くなっちゃう。」


『やりはせぬよ。だが知っておけ、と言いたいのじゃ。おんしだってこの街ぐらい一瞬で痕跡一つ残さず消せるじゃろうが』


「本当なのか?」


「ユートさん?」


「お前もなのかよ…」



皆の視線が俺に集まる。



「マール、やめてくれ」


『だが、嘘ではあるまい。こんな魔法に対して何の対策もとられておらぬ街、おんしの炎なら簡単じゃろう。』


「炎?ユートさんの得意魔法は水…では?」


『そうじゃ、水じゃ。じゃがこやつの魔法は水を燃やす。』


「水を、燃やす…?油か何かか?」


『ただの水じゃ』


「意味がわからないのだが…水は燃えないだろう。」


『おんしらに想像がつくとは思わんがな。水は燃えるのじゃ。3万度程度でな』


「さん…」


「想像もつかねぇ…」


「どうやってそんなそんな温度が…」



『温度は結果じゃ。水が燃えたら3万度の熱を発するだけじゃ。そしてその高温の中ではおよそ全ての物質が気体を超えてプラズマと化す。つまり消失も同然じゃ。生物も、鉱物も、建造物も、大地も、チリ一つさえ存在を許さぬ、実に惚れ惚れするほど非道の魔法よ。

それらを駆使してこやつは魔族を殺しつくした。老若男女、戦闘員、非戦闘員一切問わずな。』


「マール、頼むから…もう止めてくれ。」


『いい加減過去を認めるんじゃな。おんしはそれだけの事をやった。そしてそれはもうどうでもいい事じゃ。これからを見据えるならば戒めに過ぎん。』



マールが厳しく語る。


マールだって魔族だ。人を滅ぼした魔王に俺が思ったのと同じく、魔族をほぼ滅ぼしつくした俺に何か思うことは有るのだろう。



「わかって、いるさ…」


『ならば、よい』



後は、誰も語らなかった。


そうさ、俺は勇者だったが、同時に魔王だった。今更否定する気はない。


願わくば、これからの生活でその力を行使する機会がない事を祈るだけだ。

ちょっとぶりなのにまたうんちくシリーズ。

マールはああ言いましたが、燃焼・酸化反応という意味では水は燃えません。

確かにプラズマ化まで行くと分子結合が千切れ、高温による再反応が起こりますが、そもそも分子、原子、電子レベルで暴走し超高温になっているのが熱プラズマ。

そこまで行くと水が、というより水素と酸素が反応して燃えてるということになりますので。

※前回も書きましたがここでのうんちくはざっくりした検索から得られた知識での説明なので不足が多いです。鵜呑みにはしないでください。

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