7-3<尋問2>
マールによる拷問が一旦終わり、質問を開始する。
「あなたは捜査局の特課兵ですか?」
「…そうだ」
「誰を尾行けていたんですか?」
「ユート=アオスズ。あんただ。」
「何故、尾行けていたのですか?」
「命令だ、証言は一致したが、素性不明であまりにも怪しいので情報を得ろ、とテトラ特隊長に命令された。」
「何故、あなただけが尾行を?他の人はどうしていたのですか?」
「<狂乱の火炎使い>に懐かれ、長寿族と共に居るから素行に問題は無いだろう、ということで尾行する理由が乏しかった。だから気づかれないであろう距離で声を拾える俺にお鉢が回ってきたんだ…だけど…なんで、こんな事に…」
『自業自得じゃ。ま、退役して障害手当てでも貰うんじゃな。』
あるか知らんがな。と唾棄するような口調で続ける。
「マール。今は黙ってて。」
『ふん。了解、じゃ。』
「…俺達の会話から、何か、掴めましたか?」
「見たことも聞いたことも無い途方も無い金属を求めていた。最近北の森で討伐を行った。金銭面には疎い。だがお金には困っていないようだった…そして憑いているのは妖精でなく、悪魔だった。…このぐらいだ」
「概ね、承知しました。」
「皆は聞いておく事は?」
「ソフィーの行方について、捜査局はどこまで掴んでいる」
まずはメリアが確認する。その件は確かに聞いて損はないだろう。
「貴女と変わらないと思います。ギルドからの情報で生存と無事が確認されたが、所在は不明。と言った所です。」
「そうか…分かった。」
「俺からは特にねぇな。」
「…彼はもう治らないのですか?」
ここまでずっと沈黙を保っていたソフィーが口を開く。
素性がばれかねない、と一切話さない事にしていたのに。
『さぁの。こやつ次第、と言っておこうか。』
「…お願いです。治してあげてください。彼は特課兵としての任務に従っただけです。この国の為に、働いたのです。決して、敵ではありません。」
『…』
「私からの質問です。貴方は、ユートさんの敵ですか?」
「貴女は…?」
「答えてください。ユートの、私の夫の敵なのですか?」
「貴女は…いや、貴女様は…………はい、いえ、誓って敵ではありません。私は、我々は、王の目であり耳であり手足です。その誓いに嘘偽りや余念を挟む余地などございません。」
「結構です。それではもう一つ、誓ってください。私の事をまだ報告しない事。この街で見つかる訳には行きません。近いうちに必ず戻りますので。」
「承知しました。決して漏らしません。この命に代えても。」
『ふん。あっさり吐いたがの』
「マール。水を差してやるなよ。それに喋ったら呪いでもかかるようにすればいいさ。」
『そうじゃの。』
「そもそも大した任務でも無かったようだしなぁ。」
「マール、お願いできますか?彼は味方です。ですから、許してあげてください。」
『…』
「治せるんだろ?やってあげてよ。」
『貸しに…いや、おんしには鞄の借りがあったの。…仕方ないのう』
「ありがとうございます。」
『ふん』
渋々、と言った感じではあったがマールが俺の頭を離れ、ウサミミ特課兵の元へと向かった。