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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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7-2<尋問>

『まずは逃げられぬよう身包みを剥ぎ、拘束じゃ!』



と、言ってもマールがそれをするのは大変だという事で、やっぱりと言うか俺がやることになった。


てきぱきと服を剥ぎ、パンツ1丁にしたウサミミ特課兵をロープで椅子に縛り上げる。


見たところ20代前半~中ごろ。


小柄だったが脱がしてみると中々の肉付きで、アスリートかスプリンターみたいな雰囲気だ。


服を剥いでいる最中にソフィーが「きゃー」と両手で顔を隠しながら指の間から覗く、


と言った何処かで見覚えのある光景があったりしたが、割愛しよう。


椅子も固定して…とりあえず準備は整った。


マールからすごい剣幕で皆に対して『怪我はさせたりせぬから絶対口出ししないように。』


と釘を打たれた所で、<バッドトリップ>が解除される。



「う、ぁ?ここは・・・?」



ウサミミ特課兵の意識が戻り、朦朧とした目でキョロキョロと周りを見る。


ものの数秒で自分の状況が分かったのか、目を見開きもがく。



「な、何ですか!?どうして私は縛られて…!?服は!?」


『しらじらしいのう』


「なんなんですか、あなた達は!?私を捜査局の者と知ってやってるんですか?」


『当然じゃ。』


「ふざけないで下さい!何を考えてるんですか、こんな事をして、ただで済むと思っているのですか!?逮捕されますよ!?」


『ふざけておるのはお前じゃ。』


「何を…」



キョロキョロと俺達を見回してした視線が、やっとマールに止まる。



『なぜ、こやつらを尾行しておった?』


「何を言っているのか分かりません。」


『人には気づかれぬ距離のつもりだったんじゃろう?じゃが見ての通り妾は人ではない。言い逃れできぬよ。』


「何を言っているのか分かりません。」


『しらをきるのかぇ?』


「何を言っているのか分かりません。」


『それとも時間稼ぎ、かの?残念じゃがおんしがここに運び込まれたのを目撃できた者はおらぬ。おんしは行方不明よ。』


「……」


『状況が少しは飲み込めたかや?さっさと喋った方が身のためじゃぞ?最も、妾は喋ってくれないおんしを拷問するほうを期待しておるがの。』


「……」


『たしか、おんしらの常識では妾のような存在は嘘を言わぬのだろう?覚悟はいいかや?』


「……」



『くふ。良い度胸じゃ。では魔族流拷問を始めようか。』



マールが楽しそうに、本当に楽しそうに笑った。




◆◆◆◆




『じゃーん。「塩」じゃ』



何処からとも無く、マールが旅の途中何度もお世話になった塩の入った小瓶を出した。


いや待て、本当に何処から出した?



『ふ、ふ、ふ、何処から?という顔じゃな?これじゃ!』



マールが得意げに自分の腰辺りをパンパンと叩く。


よーく見ると、そこにはマールのサイズに合わせてあつらわれた鞄があった。


…物凄く小さい。人形用サイズだ。


あんなサイズでまで作れるのか、すごいな…


感心する。



『留守番中に頼んで作ってもらったのじゃ。いやぁ!これはよいの!』



ご機嫌だ。何で留守番に積極的だったかと思ったらこれが目当てだったのか。



『さて、では拷問スタートじゃ。ほれ!』



そう言ってマールが小瓶から取り出した小石程度の塩の塊を、ウサミミ特課兵の口にこすり付ける。


…………塩を口にこすり付ける事が拷問なのか?


ちらりと周りを見る。皆首をかしげ頭の上に「?」を浮べている。



『しょっぱいじゃろー?それでは、ほい。』



マールがぽすんとウサミミ頭を叩く。



「…!?」


『どうじゃ、味がしなくなったじゃろ?』


「何を…したんだ…」


『拷問じゃ。まずは味覚を壊した。さ、ら、に、ほい。』



またぽすんとウサミミ頭を叩く。



「今度は何を!?」


『何、嗅覚を壊しただけじゃ。』



…何かさらりと恐ろしい事を言っているんだが。味覚と、嗅覚を壊した?



「おい、それは本当か」


『黙っておれ』



メリアが口を挟もうとしたのを即座に切って捨てる。



「う、あ…本当に、匂わない…?しょっぱくも無い…?」


『くくく、さぁ五感を2つ壊された気分はどうじゃ?喋りたくなってきたろ?』


「…」



見て取れる程に困惑している。確かに拷問だ…だが、なんて方法だ。



『次は何が良いかの?視覚か?触覚か?それともその大きな耳の聴覚か?』


「……」



困惑し、答えられないウサミミ特課兵



『では、触覚じゃ。』



ぽふ。と叩く。


その直後に確認するようにもがき、驚愕するウサミミ特課兵。


マールの言った通りならば、今彼は縛られた縄が触れている感覚も、椅子に触れている感覚も無くなっているはずだ。



『さて、困ったのう、これ以上やるとおんしは返事が出来にくくなってしまう。のう、そろそろ喋る気にはならんのかや?』


「…何を、言っているのか分かりません。」


『ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、強情じゃのう。よし、ではその強情さに免じて長引かせる為に治癒魔法をかけさせようぞ。オサ?やってやっておくれ。』


「お、おお…分かった…」



話を振られてオサが目を白黒させながら返事をする。



「――<治癒回生>」



詠唱が行われ、魔法が発動する。


手が淡く光り、癒しの力がウサミミ特課兵の傷を治す…のだが何か様子がおかしい。



「おい…、どういうことだ。こいつの体は治す所がねぇぞ…」



オサが焦りを含んだ声を出す。



『くふ。それは大変じゃ。メリア。おんしも治してやってくれ。』


「あ、ああ…」



慌ててメリアも治癒魔法を行使する。だが、こちらも顔色が優れない。



「本当だ、治せる所が、無い…」


「そんな!?私の五感は無いままなんですよ!?」


『くははははははは、どうじゃ、治せない障害をおった気分は!さぁ後2つじゃ!喋る気になったか?』


「し、しらない、しらないんだ、分からないんだ、いや、違う!待て!分かった!頼む!やめろ!やめてくれ!!」


『い、や、じゃ。』


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」



必死に暴れるが椅子に縛られ身動きの取れないウサミミ特課兵に、


マールがゆっ…くりと近づき、ぽふり。と頭を叩く。



「――――――――――!!!!!」



さらに激しく暴れる。だが、やはり動けはしない。


そして段々と暴れるのが収まると共に


恐怖していたその顔が、困惑に染まる。どうなった?



「な、なんだ?目も、耳も大丈夫だぞ…?」


『くふ。五感は可愛そうじゃて、今度は足を壊してやったぞい。』


「!?」



ウサミミ特課兵が慌てて暴れる。だが、明らかに下半身がピクリとも反応していない。



『さて、次は腕じゃ。その次に股間を不能にしよう。それから目をやって、喉をやって、最後が耳じゃ。くくく、何も感じず、何も表現出来ぬ、ただの生きた肉塊になるがいいぞ。』


「やめてくれ!頼む!やめてくれ!話す!!話すから!!」



たまらず、ウサミミ特課兵が降参した…?



『なんじゃ、話してしまうのか…これからが本番じゃったのに。


つまらんのう、ユート。質問は任せるぞい。黙ったり、嘘じゃ、と思ったら続きじゃ。』



そう言ってマールがふよふよと俺の頭にもどる。



「確かに、怪我はさせて居ないが…見事なまでの悪魔、いや魔族っぷりだな…」


「治せねぇとか…どうすんだよ…」


「……」



…皆微妙な顔をしている。非道極まりなく感じたのだろう。


だが、一般的な魔族を知る俺の常識としてはマールの尋問は優しい類だ。


この状態も、恐らく俺とソフィーの髪の時と一緒でマールには治せるのではないかと思う。


皆に気づかれないよう、ほんの少しだけ、くすりとする。


やっぱりマールは魔族なのにどこか魔族らしくない。


ともあれ、彼が元のように戻れるかどうかは彼次第だろう。


そう思って質問を開始する事にした。

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