5-3<事情聴取3>
俺がメリアの隣に立つと、腕を取られ、しなだれ掛かられた。
予想はしてたさ…
「メリア?今は事情聴取、ちゃんとしましょうね?」
「勿論だ。だが、このままでも出来るさ」
苦笑い交じりに覗いたメリアの顔は、本当に楽しそうな、幸せそうな笑顔を浮かべていた。
今にも鼻歌でも歌いそうな具合だ。でも、正直ちょっと回りの人の視線が気になる。
遠巻きに何かの作業をしているアンディさんと同じ服を着た人達がチラチラと見てるし。
「で、メリアルーナ様に槍を投げ渡した所で<人型>の一撃を受け、そこの馬車を貫通し、昏倒した、と。」
「その通りです。」
しかし馬車を貫通する程の状態で良く生きて居ましたね?
鍛えておりますので。
そういう会話が聞こえた。…そういう問題なのだろうか。
「分かりました。では続きはメリアルーナ様、槍を受け取った後はどうなったのですか?」
「あぁ、受け取ったのだが、つい吹き飛ぶセバスを目で追ってしまってな。隙を見せた所に不意打ちを受けて、手足を砕かれて鎧を剥ぎ取られ、犯されかけた。まぁ、その前にヤツの股間を焼き払ってやったがな。」
「なるほど、マルナス様の遺体の股間が炭化していた辻褄が合いますね。」
ボロボロになったメリアは見ていたが、そんな事が有ったとは。
ふつふつと怒りがこみ上げる。あいつが死んだのは良かったのかもしれない。
「その後怒り狂ったあの豚がメチャクチャな命令を<人型>にして<人型>が混乱しだしてな。その肩にあった魔道具が明滅して怪しかったので槍を打ち込んで砕いた。そしたら自由になった<人型>が豚の足を食った。」
「…モンスターを操った、という魔道具ですね。なるほど、腕輪と腕輪の二つ一組だったのですね。」
「あぁ、恐らくな。あれは危険なものだ。この家も含めてアルモス卿の施設は全部洗うべきだ。」
「そう伝えます。話の通りなら拡散されていた場合恐ろしいことになりますしね。」
「よろしく頼む。で、だ。豚を食った隙を使ってボロボロの体を押して、<魔槍ヴェルスパイン>を発動、やつの腹に穴を開けて、そのまま勢い余って屋敷囲いを粉砕して外に飛び出した所で、ユートとオサ殿に出会い、助けてもらったのだ。
「…なるほど、ここまでは証言と痕跡通りですね…となると、最後は貴方がたですか。ユートさん、オサさん」
「オレは転がり出てきた嬢ちゃんに治癒魔法を使っただけだ。強いて答えるなら、もうちょっと遅かったら死んでたぜ?あんた。」
「感謝している。そのおかげで今こうしてユートに侍ることができる。」
メリアがさらに力を込めてぎゅーっと俺の腕を抱き寄せる。
その顔はとても嬉しそうだ。
「…」
アンディさんがちらり、と視線だけでこちらの顔を見る。
有名人らしいし、アンディさんもメリアの事を知っているのだろう。
視線が、誰これ?何これ?どうなってるの?って言っている…気がする。
「ではユートさん。メリア様が屋敷囲いを粉砕して飛び出した後、何が有ったのか、ご説明下さい。」
「えーっと、メリアを救おうと思ったけど重傷だったから動かせない。と思って<人型>を敷地内に蹴り込んで、倒しました?」
「…その、もう少し具体的にお願いしてよろしいですか?何処でどういう事が起こったか。動いたか、見たもの、等何でも良いので」
「…そうですか、えっと…」
話しても良いのかな?