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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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4-1<邂逅>

治療が一段落し、一旦宿へと戻る事にしたのだが、


メリアが俺から離れるのを嫌がって放してくれないので、二手に分かれることになった。



俺とメリアとセバスさんはメリアの泊まっている宿へ、


オサとマールはソフィー達の下へ。マールは連絡用にあちらに向かってくれた。



そして今俺はメリアの泊まっている宿の1階にある食堂のテーブルに付き、着替えを終えるのを待ちつつ連絡をとっていた。



(…そういえばさ、メリアってアーリントン家の長女って言ってたけど、それってソフィーの親戚って事なのかな?叔母の家族の領地だって言ってたし。アーリントン。)



マールに心の中で話しかける。



『正解、のようじゃな。さっきからお姉様が!?とパニクっておる。』



やはり、だったか。



(やっぱりまずいよね?何とかきちんと断らないと………)


『一夫多妻で良いんじゃないかの。英雄色を好め、じゃ。こういう所までヘタレでは元勇者の名が泣くぞ?』


(俺の故郷は一夫一妻制だったんだよ。)


『ここはもうおんしの故郷ではない。郷に入れば郷に従うものじゃぞ?次期国王様よ。』



そういえばそんなのもあった。俺に王とかどうしろってんだよ



(いや、無理だろ王とか。俺、帝王学とか習ってないよ?)


『なんとでもなるじゃろ。300年も続けてきたそうじゃし。例えばお飾りとかじゃないのかのう?』



身も蓋も無いが、無難な気がした。



『あー、ソフィー嬢がそっちに行く。と』


(来ちゃうのか)


『飛び出したの…妾らも追うかの…』


(…穏便に済めば良いんだけど)





◆◆◆◆◆◆◆◆





そんな会話が成されていた頃、メリアの部屋では、メリアが荷物を漁り唸っていた。



「何故、何故私はこのような粗末な衣服しか持ち歩いて来なかったのだ…せめて、見目良い下着と夜着を、どうして持たなかった…」



後悔、そして怨嗟。私のバカ、どうして肝心な時に無いんだ。折角買っていたのに!



「お嬢様、こちらを。」



セバスが自分の鞄から何かを取り出す、それ…は……



「セバス…何故、お前が、それを?」



見間違う筈が無い。私の用意しておいた決戦用衣装だ。夜の、だが。



「予備、で御座います。これまでも幾度か新しいものと交換させて頂いておりましたので。」


「お前は…、本当にパーフェクトだな。いや、怒りたいのだが、今は、褒めよう。良くやったぞ、セバス」


「恐悦にございます。」



予想外の事態だが、兎も角だ。なんという僥倖。これで私は完全装備でこの戦に挑める!



「では、着替える。そうだな、30分後にここにユートを連れてきてくれ。」


「承りました」



そう言ってセバスが部屋を出ていった。



さっと香水を体にふりかけ、セバスから受け取った衣装を身に纏う。


まずはガーター付きの極薄なソックスに下着。色は黒だ。安直かもしれないがそれでこそ私。


しかしデザインは切れ込みの強い形状で装飾も中々、あちこちが透けてうっすら肌が見えている。


ちなみにメルとソフィーと三人で選んだ。


私は恥ずかしかったが、あの二人に手伝って貰って正解だった。実に、扇情的だ。



「フフフ…」



笑いがこみ上げる。まさか、こんなものを着て私が悦に入る日が来ようとは!


メルディアが常々下着は戦闘服、と言っていたのに納得する。何を言っているのか、と思ったものだが今なら分かる。


下着によってプロポーションを軽く矯正され、強調された姿は、裸とは違った感じに官能的に訴える物がある。


胸のコンプレックスも忘れ、鏡の前でニヤける。イケる、イケるぞ私。



次はネグリジェだ。肩がむき出しでもちろんスケスケ。こちらは私の髪や瞳と同じ赤。あっさりとしつつきめ細かな飾り刺繍。


半透明の真紅のヴェールで太ももまで体を隠す。もちろんスケスケなので隠しきれて居ないのだが、中途半端な所がもどかしさを演出する。大事な事だ



最後に、やはり赤のナイトガウンを羽織る。こちらは少し明るい色だ。深い赤だと全身血まみれな感じだったので、こちらにした。


止め具はお腹の一箇所のみ。胸の下あたりから肩や首周りがゆったりとしており、かなりはだけるデザイン。


だが、決して大事な場所は見えない。そう、最初から全て晒してはいけない。まずは隠すのだ。そして1枚ごとに新しい興奮を与える。


後は薄く化粧を…と鏡の前に座ったところでノックの音が響いた。バカな、まだ10分と経っていない筈だ!?




「お嬢様、急ぎのご報告が御座いました。このままで、お聞き下さいませ」



急ぎ?何かあったのか?



「ギルドに潜伏中の草からの緊急報告です。『対象の生存と無事を確認。情報源は人外のネットワークの為、信憑性は極めて高い。』以上です。」



生存、無事?信憑性の高い人外のネットワーク?ギルドは妖精の情報網でも得たのか?そして、誰が?


そこまで思い至って、すっかり忘れていた従妹の事を思い出す。



なななな、なんてことだ。また目的を完全に見失っていた!?



手が振るえ、持っていた目を強調するよう描く為の小動物の毛製の小さなブラシを取り落とす。



「わ、分かりました。」



内心の動揺を隠し、返事をする。セバスがドアから離れていく気配を感じる。


私は、何を。完全に舞い上がって目的を忘れていた。いけない、そうだソフィーだ。時間が無いのだ。


改めて自分を見つめる。これは、今必要なことか?


今必要なのは応急手当程度の体を酷使することか?



…今は自重し、体力の温存に勤めるべきだ。



心が、冷静になる。胸の内で燃え盛る炎を御し、隅に追いやる。


だが、火勢は衰えさせない。これは今の私の根幹だ。


化粧を止め、顔を化粧落とし用の魔法水で拭う。さっぱりした。


ガウンを脱ぎ捨て、ネグリジェをベットにふわりと投げる。下着は…このぐらいの未練はいいだろう。そこもまた私らしい。


鞄から旅装を取り出し、さっと着込む。そしてユートに返して貰った愛剣を取り出し、分解する。


腰がすこし伸びたが、微調整すれば十分使える。だが後で修理に出さねばだめか…


そうして一つ一つ砂と血を噛んだ剣のパーツを清掃していたらノックが響いた。



「ユート様をお連れしました。それで、その…」


「入れ」



引き締まった声が出る。いつもの私が帰ってきていた。

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