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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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3-6<人型5>

セバスさんの傍を離れ、戻る。遠巻きに見ていた人達が混乱していたようだが、説明しなくても状況は分かるだろう。今はほうっておく。


途中で恐らくメリアの物だろう(ギルドで見た気がする)やたらと肉厚な片刃の剣と、<人型>が投げ捨てた柄が折れ曲がった槍を拾う。


剣は少し腰が伸びているが、無事。槍も柄が折れ曲がったが穂先は傷一つ無い。どちらも修理すれば十分使えるだろう。



そして<人型>を倒した所にあった<魔晶石>と何かの金属の塊を拾う。


過去全部のモンスター中一番意味の分からない形状のアイテムだ…というか、こんな部位あったか?あの黒ポクテ。


なんとなく昔見た漫画に似た形をした生物が出てきたのを思い出して命名する。それっぽかったし。凶暴極まり無かったけど。



目ぼしいものを回収し、メリアの元に戻る。


時間はもう夕方を過ぎ、日が暮れる寸前だった。




◆◆◆◆◆◆◆◆




「お、戻ってきたな」


『どうじゃった?』



戻ってきた俺を見止め、マールとオサが話しかけて来る。



「あぁ、セバスさんは無事だ。内臓を大分派手にやられていたが、少し治癒魔法を使ったら意識を取り戻した。今は自分で治癒魔法を使ってる。あの人の方が上手いみたいで、多分もうじき歩けるようになったらこっちに来ると思う。」


「へぇ、すげぇな。セバス?セバスチャンなのか?」


『そう言っておったの。』



オサの疑問にマールが答える



「なるほどな。納得納得。」


「それからマルナスさんはダメだった。見つけた時は生きていたんだが、止血する事が出来なくて、自分でもしてくれなくて、駆けつけた時には失血死してた。」


『そうか、残念じゃの』


「オレはちょっと嬉しいがな。あのクソガキには何時も死ねって思ってたし」



不謹慎だぞ、と思う。俺は救えるなら救って置きたかった。



「あの豚は死んでも、仕方ありません」


「豚?」『豚?』「豚?」



唐突にかけられたメリアの唾棄するような声に、3人揃って同じ反応をする。



「豚、です。あの男も、あの男の父親も。最低の下種、死んで当然の外道です。」


「そんな…」


『相当、だったようじゃの』


「オレもそう思う…ってかあの男と父親?なんだ?あのクソガキだけじゃ無くエロオヤジも死んだのか?」


「そうなります。」


「あーロクな死に方しねぇと思ったが自宅でモンスターに殺されるとはね。ロクでもねーな。」


「死体は、一つだったけど…?」



食われたのか?見落とした?



「死んだのは昨日だそうです。あの<人型>を捕獲しに行って殺された、と言っていました。」


「そうか、…ところで、メリアさん、だよね?」


「はい。そうですが?」


「なんだか、昼間と別人になっているような?」



そう、やたらと物腰が丁寧になっている。なんだか雰囲気がソフィーみたいな感じだ。



『・・・』「・・・」



何か言いたげなオサとマールの微妙な視線が俺に刺さる。何これ、どういうこと?



「大丈夫です、私はメリア、メリアルーナ=ルグス=アーリントン。王家直下五大家の一角、アーリントン家の長女にしてこの国最強と謳われたりもしましたが、今は只の女です。貴方の。」


「へ?」


「あーあ……ぁ?」


『やっぱりの』


「おいおい、アーリントンだと?その髪、この国最強?おめぇ<狂乱の火炎使い>かよ!?」


「何?有名人なの?それから、今最後に何か変な事言ってなかった?」


「甚だ遺憾ですが、そのように呼ばれております。ですが、貴方の前では私は只の女。お気になさらないで下さい。」



凄い勢いで脳内に警鐘が鳴り響く。


この感じ、この雰囲気、この熱に浮かされたような瞳。前にも見たような。



「どうぞ我が家にいらして下さい。そして父と母に紹介させて下さい。この方こそ私の捜し求めた伴侶だ、と。私の家は五大家の一角。家督としては何処に並べても恥ずかしく無い筈です。…それが気に入らない、と言う事でしたら私は家を捨てましょう。貴方についていきます、何処までも。たとえ涅槃までも。」



うっとりと目を細め、右手を胸元に当てて歌うようにメリアが語る。



「え、あ…う……いや……何を」


『これはダメじゃな』


「あぁ、ダメだな」


「それもダメですか…?では構いません。情婦のように気が向いた時に私をお抱き下さい。そして捨てて行ってください。貴方の子を宿せれば本望。そうで無くともその思い出を胸にこれからを生きます。」



「どうしよう」


『妾に聞くでない』


「オレにも聞くな」


「どうすりゃ良いんだ………」



熱っぽく見つめてくるメリアに何も言い返すことの出来ないまま、天を仰ぐ。日が暮れて、夜の帳が降り始めていた。

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