2-5<遭遇2>
「申し訳ございません、先ほどは主が失礼を…」
先ほどの騒動からおよそ30分。相変らず戻ってこないオサを待っていたら、
お姉さんに連れられて行って絞られていたセバスさんと赤毛の女性がやってきた。
『ほんとにじゃ。妾を埋めおってからに…』
机の上で新しいジュース(今度はまともな白桃色、甘い)を飲んでいたマールが愚痴る。
騒動中姿が見えないと思ったら、2回目に飛んできたオッサンが机ごと吹き飛ばされたのに巻き込まれ、瓦礫に埋まってしまっていたのだ。
「俺は気にしていません。お構いなく。」
「そう言っていただけるのは有りがたいのですが、その、」
「セバス、そこから先は私が語ろう。」
赤毛の女性が前にでる。
「まずは挨拶だな、私の名はメリアルーナ、先ほどは失礼した。こちらは我が家のセバスチャンだ。」
…ファーストネームだけか?ギルドでは家名を名乗ったりはしないのかな?と一瞬考える、が後に続いた名前で吹っ飛んだ。
「ゴフッ…せ、セバ、セバス…ゴホ、ゴフ、」
思わず、むせる。
似合いすぎにも限度があった。
「どうした…?何か面白い所が…?」
「いえ、…済みません。俺の名前はユート、です。家名は無くても?」
「あぁ、構わない。ここでは語らないのが礼儀だ。」
「そうですか、それでその、実は聞き覚えがある名でしたので、その、セバスチャン。と言うのに。」
「まぁ、そうだろうな。極少数とは言え、セバスチャンに成れた者はそれなりに居るはずだ。」
「成れた…?人名では、無いのですか?」
「…?セバスチャンは執事養成課修了生での最高の称号だろう?まぁ確かにセバスチャンの称号を得たものは、以降自己紹介でセバスチャンを名乗って自分の名前を余り言わなくなる奴が多いと聞くが…」
お前の名前なんだったっけ?とメリアルーナさんがセバスさんに確認する。
フランクです、お嬢様。とセバスさんが返す。
なんとセバスチャンとは最上級執事の事だったのか。それでソフィーも…
と、言うかこれは絶対<召喚されし者>のせいだな。と納得する。
「納得しました。済みません。てっきり人名なのかと勘違いを」
「知らない人には良くある事です。それに我々には名誉ある名ですので、問題はありません。」
セバスさんが爽やかに微笑みながら語る。サマになっている、
うわぁ、セバスチャン。とかつい自然に思ってしまった。
「話が脱線してしまったな、本題に戻ろう。」
メリアルーナさんが話を戻す。
「ええと、何でしょうか?謝罪でしたら別に。俺も、マールも幸い傷一つ負っていませんし?」
『埋まったがの』
「…根に持つね?」
『おんしが気づかなんだ事がさらに気に食わん。』
「何度も謝ったじゃないか…」
『まだまだ、じゃ。それよりまた話がそれたの。すまぬ。続けてくれ』
「随分と饒舌なのだな、妖精というのは…」
『魔族じゃがな。』
「はぁ、いや、そうだな、改めて…ゴホン。」
「単刀直入に言う。ユート、お前が欲しい。」
「へ?」
何?この展開?