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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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2-4<遭遇>

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


どんがらがっしゃーん。と


頭が火事になっている男が叫びながら突っ込んで来て、俺の座っていた席のテーブルがひっくり返った。



…意味が分からない。俺は何をしていたんだっけ?


ギルド員登録を終えて、受付のお姉さんに昼食をとってけと言われ、オサを待ちつつドリンクを頼んだ。うん、そうだ。


それから出てきた2つの極彩色な野菜ジュース(何故マーブルな感じなのか?)を飲み、全くと言って良いほどの甘みの無さっぷりと、これでもかというエグ味に辟易として、ぼけーっとしながらちびちび二人で飲んでいたんだった。


そしたら頭が火事になったオッサンが突っ込んできてテーブルがひっくり返った。


…うん。ぼけーっとし過ぎてたとか関係なくやっぱりさっぱり訳が分からない。


とりあえずオッサンが飛んできた方向を確認してみる。



『消火じゃ。』



視界の端でマールがそういってオッサンの頭にスペシャルなドリンクをかけ鎮火していた。


まだまだ2/3は残っていたから良い消火水になるだろう。色は酷いが。



そしてオッサンの頭をこうしたであろう犯人は、また別の4人のオッサンに囲まれながら食事をしていた。



「てんめぇ!何ぃしいゃーがんだ!」


「いっきなし火ぃなんか点けぁがって!ふざっけんな!」


「聞いてんかーぁ!?」「ナンとか言ぇやォラァ!」



オッサン達が口々に文句を言う。



「構わないでもらえないか。私は食事中なんだ。」



このオッサンを焼いたであろう赤毛の人物が答える。声からして、女性のようだ。



「大体、先に難癖つけて来たのはそっちだろう?「ねーちゃん勺してくれよー。なんなら夜の方も頼むぜー」とか、下品な事を言って肩を抱こうとして来たから自己防衛をしたまでだ。」



ふむ。言い分的には女性に理があるように聞こえる。


後良く見ると女性の前の机の上の料理が凄い。


あれ、一人で食うつもりなのか?連れとかは居ないのか…?



「あぁ!?んだけの事で、あタマに火点けたんのか!?」


「ざっけンじゃネーぞ!」「チョーシこいてんじゃーねぇーぞ!」「おっ高く止まりやがってよぉー!」



どうやら完全に出来上がっているようだ。4人とも呂律が変だ。



「てめえ!!よくもやりやがったな!!」



マールに消火され極彩マーブルカラーに塗れた男が復活し、剣を抜いて4人の輪へと向かう。



「あぁ、あれは、不味そうだな。」


『良いのか?ほうっておいて』


「あまり目立つ真似はするなって言われてるし、こういう所だし鎮圧してくれる人とか居るんじゃないの?」



あくまで他人事。関わらない方が良い。


とりあえず倒れた机を戻し、再び座って遠目に観察を続けることにした。



そうこうしている内に、極彩色オッサンが輪に加わり、女性に剣を付き付け何かしらわめく。


早口でまくし立てるためかよく聞き取れないが、罵倒しているのは確かのようだ。


あ、机をひっくり返した。女性の食べていた料理が吹っ飛ぶ。勿体無い。



事ここに及んで受付のお姉さんが渦中のテーブル席へ向かう。あの人が鎮圧するのか?


だが、囲んでいた4人の内の2人が壁になり、進路を塞いで進ませない。



ゆらり、と女性が立ち上がり、細長い一房の編み髪が翻った。


と思ったら、極彩オッサンがまたしても飛んできた。


慌てて立ち上がり、避ける。先ほど元に戻したばかりのテーブルに、俺が座っていた椅子も巻き込み、再び極彩オッサンがもんぞり打って転がった。



おいおい、なんて威力だよ。


女性を見る。周囲に鬼火をぽっ、ぽっ、と点らせながら残り二人のオッサンを殴り、吹き飛ばしている。


…殴って吹き飛ばした?いや、よくよく考えれば<強化魔法>の使われてい無いこの世界。


どんなに威力はあれども拳では体に突き刺さったり、その場にくず折れることはあっても、こんな風に人は飛びはしない筈だ。


魔法で押し飛ばした、と考えるのが妥当だろうか?


とすると、派手に飛んでっただけでダメージは然程無いのかもしれない。


と思ったらやはりそうだったのか、瓦礫の山と化したテーブルと椅子の塊から極彩オッサンが起き上がり、「ぶっ殺してやる!」と怒りを露にした。


さらには剣を持って立ち上がろうとする極彩オッサンに向かって…なのだろうが、剣呑な顔をして怒りを顕にした赤毛の女性がこちらにつかつかと歩いてくる。



怖い。自分には向けられて居ない筈なのに怖い。


極彩オッサンが立ち上がり、女性、ではなく俺の影に回ってくる。



どうして俺を挟む?



「どけ。」



はいはいどきますよ?



女性が鋭く言うので、道を開けようと一歩下がったところで極彩オッサンに突き飛ばされた。


あぁ、そういうことですか。俺を牽制に使って本命の剣での一撃を…って流石にそれは不味いだろう!?



踏みとどまる。その場で90度反転し剣を振り下ろそうとしている極彩オッサンの拳を掴み、止める。


同時に物凄い寒気がしたので反射的に背後にも手を出して…女性の拳を受け止めていた。



何か同時に爆風のようなものを受けたが、踏みとどまる。


流石にここまで巻き込まれては傍観者ではいられない、と思い言葉を発する。



「あの、そろそろ止めて貰えませんか?危ないですよ?」



剣を、拳を止められた両者が驚いたかのように俺を見る。障害物扱いで眼中に無かったようだ。


そのまま極彩オッサンの拳を捻り剣を落とさせて、さらに手の届かないぐらいに蹴り飛ばす。


そうこうしている内に赤毛の女性に殴り飛ばされた2人を含む4人を拘束して、お姉さんがこちらに向かってきていた。


お姉さんも中々やるなぁと思い、極彩オッサンを引き渡そうとした時、



「おい」



反対側から声がかかる。


拳を受け止められ、不思議な顔をして自分の拳を見ていた赤毛の女性が話しかけてきた。



「なんでしょう……っか!?」



振り向き様に顔目掛けて再び飛んできた拳を受け止める。さっきよりも威力、いや、むしろ圧迫感がある。



「!?」



な、何を!?と思ったが相手の方が驚いた顔をしている。



「そんな…も、もう一回!!」



何が、もう一回何ですか!?と思ったらトトッと数歩ほど下がった女性がステップを踏んで拳を叩き込んで来た。



もう一回?受けろ、と?



避ける事も出来たがもう一回、と言う言葉に釣られてつい受け止める。


拳だけじゃない、何かしらの付加効果を感じる。強烈な熱風、いや衝撃波に近い。だが、耐える事は出来た。



「な、なんで?」



そんなこと言われても、困る。



「お嬢様!!」



奥の方から燕尾服らしきものを着たくすんだ金髪の男性が飛び出してきた。



「お嬢様、何をなさってるんですか!?」


「お、おお、いい所に来た、セバス。ちょっと、」



そう言って女性がセバス、と呼んだ「執事風の壮年期入りたて口髭ダンディ」といった風貌の男性に向き直り…ぁ、


セバスさん?が吹っ飛んでいった。



赤毛の女性が、止めるヒマも無く拳を振るっていた。

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