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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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1-3<王女失踪事件を追え3>

「おはようございます、メリアお嬢様」



目が、覚めた。セバスが私に話しかけている。見覚えが無い天井だ。


何処だろう、ここは…


ぼんやりとした思考で軽く視線を巡らせ、気づく。


がばっと慌てて起き上がり、周りを確認する。


思い出した、私は倒れたのだ。<召喚魔術>が失敗した、と聞いて。



「セバス、今は?」


「お嬢様が倒れて約6時間、深夜の11時ごろで御座います。」



6時間も眠っていたのか。どうりで体が痛い。


衣服を緩めるぐらいしてくれていたら、こうはならなかったのだろうが、致し方ない。


これで私も嫁入り前の生娘なのだ。鎧を外してくれただけマシだったと思う事にしよう。



「何か、あれから分かった事はあるか。」


「はい、状況証拠ばかりでは有りますが。


とりあえず現状推測されますあらましと致しましては、ソフィーリア様は<時空の扉>を開く事に成功するも、召喚事態は成否不明。


その後神殿を後にしようとした所で護衛に化けた3人が不意打ちでジョッシュとエドガーを殺害。直後に何者かによって3人も殺害され、御者に扮した賊はソフィーリア様自ら撃退。恐らく馬車に無理矢理乗せられようとした際と思われます。


そして、その後馬車はアルモス方面へ向かい、数時間後、発見された時はもぬけの空でした。」


「……数時間後?」



妙に、早い。



「はい、潜入していた草(諜報員)の報告です。<召喚魔術>の行使を疑ったアルモス卿が王都に居たキャメル卿に連絡し、協合して神殿に兵を向かわせたそうです。


その際、街道を3つ共使い、完全に包囲して居たそうです。」


「あの大豚、カンだけは良かったんだな…」



5大家の一角の家長であり、王国財務の最高責任者であるキャメル卿の姿を思い浮かべる。


その分家のアルモス卿も隣接した地の領主なので面識はある、それを想像で隣に並べる。


有り体に言って、両方とも見た目は豚だ。


兵士に混ぜて走りこみをさせてやりたい…いや今はあの連中はどうでもいい。思考を元に戻す。



「それから、城壁の外の堀と、森の入り口付近を探っても、やはり痕跡も死体も見当たらない、という事です」



つまり、完全に行方不明。ということか。



「せめてもの救いは、生きている可能性が有る事、か。」


「そうですね、とりあえず今現状で予想される可能性の高いものは、包囲したキャメル卿かアルモス卿による拉致、監禁。そして現場の偽装工作。


それから、何者かがアルモスへと向かった馬車を使い、王女を捕らえたまま途中で身を隠して兵をやりすごし、そのままアルモス方面へと抜けた、という可能性です。


こちらは特定の獣人の知覚能力と獣化時の膂力があれば可能になります。」


「なるほど、それならあの3人の偽者の死因も説明がつく、か。」


「はい。」



そうなると後者よりは前者の方が無理が無い。


獣化して意識を残せる者はごくごく一握りしか居ないからだ。


そもそも獣化できる者自体ごく一握りの獣人だけであり、


さらにそれ程の猛者ならこの国では間違いなくフェルブルム卿の配下。


父と親友でもある彼との面識は多い。勿論王家に対する忠誠は疑うまでも無い。


祖父王を「オヤジ」と呼んだのは父と彼ぐらいのものだ。


あの頃は私もまだ子供だった。なつかしいな…と思考がまた脱線した。


いけないいけない、ええと、とりあえずあの豚供が拉致した、とすると………



「希望的観測なのだが…召喚が成功していた場合<召喚されし者>も一緒に。という可能性はあるのだろうか」


「有ります。召喚されたばかりの彼らはただ魔力が高いだけで魔法も使えず言葉も分からぬ者でございます。一緒に拉致されて居たとしましても労力に然程変わりは無いと思われます。


…価値を見出してくれる相手でありましたら、ですが。」



その可能性も考慮してくれていたようだ。抜け目無いな…



「ならば明日は大豚を締め上げる事にするか。奴は今何処に?」


「王都です。緘口令が敷かれているとは言え王家不在のままでは不味い、とルーシア様を影に据えたまま政務を行っているようです。」


「そうか」



ルーシアも苦労をするな…いや、それも彼女の仕事の内か。



「キャメル卿は5大家とは言え貴族派寄りのはずです。召喚失敗であれば都合が良い筈ですので、公表されない所を見ると召喚成功の可能性もあります。」


「そうか、それは吉報だな…よし、では明日は王都だ。お前も寝ておけ。」


「分かりました。お嬢様がお眠りに成られましたら眠らせて頂きます。」


「分かった。」



再び寝台へと倒れこみ瞳を閉じる。


細い希望だがまだ希望はある。必ず見つけ出して見せる。

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