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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第2章 合流編
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1-2<王女失踪事件を追え2>

「こちらが遺留品になります。先ほど見ていただいた遺体のものを順に、左から並べてあります。」



ミハイルに案内され、別室で今度は遺留品を見る。


そこにあったのは5着の似たしつらえの鎧、御者の物と思われる衣服、折れた剣と折れた槍だけだった。



「…こいつらの武器が無いぞ?」



見たところ壊れた武器しか残っていない。ジョッシュとエドガーの槍も無い。


他の4人の賊も丸腰で襲撃をするはずが無い。何か持っていた筈なのだ。折れた剣では数が足りない。



「発見された時にはもうありませんでした。」


「…鞄も全て持ち去られているようですね。」



セバスが目ざとく呟く…確かに、無い。


さらに分からない。まるで盗賊のような手口だ。何かの偽装?証拠隠滅?それとも只の物盗りとでも?



「こちらの破片は?」


「粉々でしたが、欠片を見たところ、剣の残骸ではないかと。」


「折れた剣に、粉々になった剣、か。」



折れたのは膂力で説明がつく、だが、砕けたとなると分からない。魔法だろうか…?


謎と仮定ばかり増える。思考が纏まらない。



「お嬢様、鎧は全てお嬢様の兵に支給されていた物のようです。」


「…確認する」



確かに、見た目はその通りだ。そして私の兵の物ならば、確実に自分の名を書いて居る筈だ。


私が書かせたのだから。


ヘルムを取り、裏返す、裏返す、裏返す、裏返す、裏返す、


「ジョッシュ、エドガー、ラミレス、ディン、マーベリックのもの………だ。」


遺体の無い3人のものが、含まれている。


どういうことだ、何故、ここにある?あの不明の3人が着ていた…ということか?


見た所損傷が不明の三人の傷と一致している…間違いない。つまり…



「こちらは、魔道具ではないでしょうか?」



思考が良くない仮定を浮かべかけたその時、


不明の3人の遺留品に共通している指輪を指してセバスが聞いた。



「可能性はありますね。こちらの遺留品はまだ魔道具専門の者には見て貰っていませんので…」



聞いたことが有る。たしかそういう専門の分析が出来る者は大抵王都の本部に詰めているのだ。


ならばここで調べられていないのは仕方ない。



「私は多少感知が出来ます。恐らくこの指輪は<偽装>の類だと思います。着けても構いませんか?」


「それは許可出来ません。ですが、危険は無いのでしょうか?」


「危険は有りません。そういう反応はして居ませんので。」


「では私が着けましょう。それでしたら問題には成りません。」



ありがたい。捜査局の人間はもっと頭の固い連中だと思っていたが、そうでも無いようだ。



「では、」



ミハイルが指輪を着ける。一瞬ふわっとした光に包まれたと思ったら、ディンがそこに居た。



「ディン………だ」


「やはり」


「<偽装>…いえ、<姿写し>のようですね。恐らく残り2つも同型ですし同じものかと。」



声も変化している。


確信した。3人が護衛に化けて不意打ちで二人を殺したのだ。


そして御者に扮したものと協力して、ソフィーを連れ攫おうとした。


だが、その直後に異常な力の第三者に襲われ、こいつらは殺された。


ソフィーはその第三者に連れて行かれた?


そこまで考えて思い出す。



「<召喚されし者>は?」



そう、第三者で、他人の武器を使う。それが武器を持っていなかったからとすれば?


異常な力の説明はできないが、もしかしたら、その可能性は有るのではないか?



「分かりません。ですが、<意言の首輪>は残されておりました。」


「残されて…つまり使われて居ないんですね?」


「持ち出したのは確実ですが、使われなかったようです。」


「何か、他にそれらしき痕跡はありましたか?」


「ありません。異世界の衣類も、それらしい足跡も特殊な匂いも残っていませんでした。」


「では、召喚には…」


「残念ですが…恐らくは」



セバスとミハイルの声のトーンが消え入るように下がる。


痕跡を確認した限り<召喚されし者>が居たという根拠が一つも無いのだ。


むしろ痕跡の限りでは居なかった。という方が証明されかねない。


そして彼らは能力を買われて特課兵となった者たち…見落としは、無いだろう。



…つまり、召喚に失敗した?



眩暈がする。私すら出し抜いてまで決行した<召喚魔術>が、失敗した?


では、ソフィーは…夢を叶えられなかった?叔母の無念も、祖父の悲願も、何も、かも。


目の前が暗くなる。3日に及ぶ強行軍で疲れていたのか、不覚にも私はそのまま意識を失った。

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