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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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8-2<風呂2>

「あ、ユート様。お待ちしてました。これ、着替えと石鹸です。今着ているものは脱衣所のどれかの籠に入れておいてください。後ほど回収しておきますので。」



オサとソフィーと別れ、風呂へと向かった俺は脱衣所に突入する直前にシズクさんに呼び止められていた。


…まさかずっとここで待っていたのだろうか?


ちなみに彼女の名前はシズネ=フォークルと言うらしい。確かに名前にシズクの文字はあるがその略し方は無い。シズネさんでいいと思う。…まぁ今はそんな事を気にしている場合でもないか。


幾らなんでもそんなまさか、たまたまだろう。と思いつつもとりあえず受け取って脱衣所に入る事にした。




脱衣所の中はことのほか広く、壁際に置かれた棚には籠が並んでいた。


暖簾(のれん)は無かったのだが、まるで銭湯見たいだなぁ…としげしげと眺める。流石に体重計は無い。


…いけない。時間が無いんだった。


悠長にしている場合じゃあない事を思い出し、そそくさと服を脱いであいた籠に仕舞う。


さっき貰った小指の先程の石鹸と、たたんで置いてあった手ぬぐいらしきものを取り、奥の扉を開いた。



「おお、風呂だ…」



思わず声がでてしまった。幾つかの照明で照らされた風呂場は、シャワーや蛇口や鏡こそ無いもののまさに銭湯のような感じだった。


踏み出す。足の裏に当る白い木の床はすべすべで、何かでコーティングされているように感じる。防水加工がされているのだろうか?


そのまま隅に積んである桶を1つ取って、湯船の傍にしゃがみお湯をすくうと共に温度を見る。少し熱めの気もするが、いい湯だ。


とりあえずかけ湯。全身を濡らし、石鹸を伸ばしタオルで擦る。あまり泡が出ないようだが、そういうものなのだろう。


全身にこすり付けて流す。後は軽く湯船に浸かればいい。


まだ大して時間は経ってないし、少しぐらい浸ってもいいか…と思い湯船に足を踏み入れ、奥へと進み座り込んだ時だった。




ガラリ。と脱衣所に繋がる扉が開かれた。




◆◆◆◆◆◆◆◆




ユートを追ってすぐさま脱衣場に向かったソフィー達は、入り口の前に待っていたシズクさんから情報を聞き出していた。



「…シズク、ユートは?」


「既に中に。まだ扉の開いた音は無いので今は脱衣中かと。」



オサとシズクさんが小声で状況を話す。


既にここまで計画済みだったのだろう。会話に無駄が無い。この人は…


感心すると同時に思う。困った人だと。



「少し待機だな。」



私もその言葉に依存はない。もっと逃げられない状況で突入するべきだと思うからだ。


そして提案と言うよりも確認をする。



「えぇ、湯船に浸かったあたりを狙いましょう。」


「そうだな。とりあえず風呂場に入って閉じる音が聞こえたら行くか。」



確かに、私達が衣類を脱ぐ時間も必要だ。だが、少し気になった。



「わかりました。ですが、オサ?貴女も入るのですか?」


「勿論だ、こんな面白そうな事に参加しないなんて祖先だって許さねぇ」


「…そうですか。邪魔にはならないで下さいね。」


「わきまえてるさ。」



本当にわきまえて居るのか不安になるが、今回のお膳立てはオサだ。


先ほどユートさんを巧妙に誘導した時といい、彼女は最早協力者というよりも共犯者と言った感がある。


ある程度の事には目を瞑ろう。



ガラガラ、ピシャ。



ユートさんが風呂場に入った。ここで脱衣所に…と思ったのだがオサが止める。何故!


私が止まった隙にシズクさんが突入する。そうか、まず斥候を送るのか。納得した。よく考えている。


中を確認したシズクさんが手招きをする。そこで初めて私とオサが突入する。



脱衣場の中は綺麗に清掃されていた。水場なので汚れやすい筈なのだが、行き届いている。


感心している間にポポーンとオサが服を脱ぎ、湯浴衣を取る。


その肩口に手を通し、開いた前を右、左と揃えて、付いていた紐を縛る。標準的な湯浴衣。


私も遅れては居られない。素早く服を脱ぎ、簡単に折り曲げて畳み、籠に入れる。


そして同じように湯浴衣を纏う。石鹸とタオルをとって、準備は出来た。



そろりと扉に近づき中を伺う。覗く事は出来ないので音で確認する。


どうやら鼻歌交じりに体を洗っているようだ。


いきなり入る事はせず、体を洗ってから湯船に浸かるのだろう。


お湯をなるべく汚さない為の配慮だろうか?



そうこう考えている内にかけ湯を何度か行う音がして、じゃばじゃばと湯船の中を進む音が聞こえた。


今だ。



「いきます。」


「楽しみだ。」



二人で扉を開き、風呂場へと突入した。

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