7-6<猪退治2>
「話には聞いてたが…とんでもねぇな」
しばらくぽかんとしていたオサが、ナイフと牙と<魔晶石>を拾い集めていたらポツリと呟いた。
「無理もありませんね…」
ソフィーがしみじみと言う。実体験に元ずく言葉だけに重みがある。まぁ、概ね予想の範疇の反応だ。
だが、そんな事よりも気になった事がある。
「5匹、いた。」
そう、気配を探った時に5匹の魔力反応を感じていたのだ。
「みたいだな、昨日は確実に3匹だった。一昨日は2匹、その前はずっと1だったんだが…」
「分裂…?それとも何処かからここへ来ている…のでしょうか?」
実際殲滅したのも5匹。どういう事なのか。昨日、今日で増えたとでも言うのか?
それとも新しくこの村にやってきた?
「分からない、だがとりあえず今はもう他に気配は無い。」
「<召喚魔術>後だからな、きっと一気に分裂したんだろうさ。前例がある。」
「そう…なのですか?」
オサが続ける
「そうだ。<召喚魔術>直前は固体の強さが一番高い、そして<召喚魔術>直後からマナが減少すると急速に分裂しだして数が増えるが、固体は平均より小さく、弱くなる。理由は知らないが、オレの故郷の記録ではそう言われてた。」
だからお前さんのトコの討伐隊も召喚1年後に活動を開始してたんじゃねぇのか?とオサが続ける。
「なるほど…長寿族の一族の方の記録でしたら間違いは無さそうですね。」
「…確かに、辻褄も合うね」
5匹とも魔力反応も弱く3m程度の小柄な体躯でしかなかった。
森で出会ったのは5〜6mはあったのだ。
「…何だか全然納得いってないように聞こえるんだが?」
オサが俺の言葉の調子に込められた意味を読み取り、心外だと言わんばかりの顔でこちらを睨む。
「念のため、だよ。他の可能性が無い訳でもない。そもそも川を越えてモンスターは来ないんだろ?」
「まーな。だがそれも確実じゃねぇ。出来ない事はないがやらないってだけだ。実際この村を作ったころはここにもモンスターが居たしな。」
「どちらでも、辻褄が合うのですね…」
「…」
一つ、考える。だが、今許される事なのだろうか。そう思いついちらりとソフィーを見る。
「いいんですよユートさん。」
ニッコリ笑って頷いてくれた。やはり顔に出てしまっていたようだ。
…なら、遠慮はいらないか。
「オサ、もう2,3日泊まって行ってもいいか?これでモンスターが倒しきれたのか分からない以上、念を押しておきたい。」
「…いいのか?いや、だがなんでそこまでしてくれるんだ?そこまでの義理もねぇだろ。…まぁ願っても無い話なんだがな。」
オサが戸惑う。内心嬉しいのだろうが、ここまで親身になって貰える理由が無い。何か裏でもあるのか?と言いたそうな感じだ。
だから理由を告げる。単純で、人によっては間抜けな理由だが。
「これでも元・勇者なんでね。」
「…クス、仕方ないですね。ライフワーク。ですものね?」
「その通り」
「ライフワーク??」
言葉の意味が理解できないのかオサがさらに疑問符を浮かべていた。