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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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6-2<ウルラス川>

二人で水浸しになって水遊び、のようなうれし恥ずかしイベントを起こす事も無く、


ソフィーはあちらで水浴びをして来ますね。と行ってしまった。


覗き、と考える下心は湧き上がったが、誰にも見咎められず、ソフィーにしても恐らく据え膳状態。


実際行ったが最後、その場で押し倒してしまいそうだったので自粛した。


幸いにも目の前には楽しみがいの有りそうな綺麗な水辺が広がって居たのも大きい。




流れに逆らい泳いだり、槍で魚を取ってみたり、この世界にも蟹が居た事に驚いてみたりと、


一通り川を楽しみサッパリとした所でまだ残っていた新しい服に着替える。


これもまた今まで着ていた服とそれほど変わらない。普通の服。



着替え終えた所で火を起こし、先ほど取った魚を串焼きにする。


時間的にも昼食に丁度良いし、水浴びから上がって来たソフィーも暖もとれるだろうし一石二鳥。


…問題はこの魚がソフィーが食べられる物かどうかぐらいだろう。



そうこうしている内にソフィーも水浴びを終え、着替えも済ませて帰ってきた。


二人並んで川原の岩に座り、他愛も無い会話を交わす。魚は食べても問題無いようだった。


頃合を見て串焼きを取り、二人でほおばる。


そして、泳いでいた時から気になっていた事を聞いてみる事にした。



「…確か、この川の向こうにある村に行くんだよね?」


「そうですね。」


「……橋とか船が見当たらなかったんだけど…どうやって渡るの?」


「泳いで。ですが…」


「…」



予想以上のワイルドな回答が得られた。


いやいやいやいや、そんなまさか。



「結構流れが速い気がしたんだけど、冗談だよね?」


「この川は特に危ない生き物は生息していませんし、何か浮かぶものを掴んで流れに逆らわないよう進めば渡れますよ?」



…本気で言ってる?


何km下流に流されるだろうかと思うとゾっとした。



「村は数km下流のようですし丁度いいかと思います。」



さらにそのタイミングで心を読んだかののようなことを言われる。



「…えと、もしかしてユートさん泳ぎの方が…ダメ、とかですか…?」



失礼な。ちゃんと泳げる。…2km泳げるかは試した事は無いが。


っと、問題はそういう事でなくて。



「そう言う事はないけど、流石に泳ぐのはどうかと思う。皆そうやって泳いで渡ってるの?」


「どうでしょう?私も普段は渡し舟で渡った事しか有りませんが…」



…やったこと無いのに言ってたのか。危ないんじゃないだろうか?



「泳いで渡った事は無いんだね?」


「無いですね」


「ならやめておいて、船を使おうよ。」



と言って<甲盾熊の盾>を1つ鞄から取り出す。あの熊の両腕を肘から手首まで覆って居た盾だ。勿論2枚あるが、1枚で十分二人乗れる。


ちなみに今は傷一つ無い。あの戦闘中に猛烈な速度で修復されていたようだ。実に凄い盾だ。


ガラン、と地面に置いてみる。少し湾曲してはいるが船としては浅い。だが、魔法で浮かべられるし川の波ならばこれでも十分な筈だ。



「コイツを水魔法で浮かべて走らせれば船になるよ。」


「・・・」



サっとソフィーの顔色が悪くなる。



「ダメかい?」


「その…一つだけ聞いて良いでしょうか?」


「何?」


「その、船ですが、私を抱えて走った時のような速度で進むのでしょうか?」


「…出来なくは無いけど、人が歩くぐらいの遅さにも出来るよ?」


「速くし過ぎないのでしたら、お願いします。」


「うん、分かった。それじゃそれで。」



どうやらトラウマになっていたらしい………






◆◆◆◆◆◆◆◆





盾の船が進む。


あの後焼き魚だけの軽い昼食を済ました後、川を渡る事にして盾の船に乗り込んだ。


想像通り、水魔法で補強した船は浮かび、水が入ってくる事は無かった。


見渡す景色は絶景。下を眺めれば底まで見通せる水。優雅な旅だ。


最初は恐々と向かい合って座っていたソフィーも、幾らか落ち着いたのかきょろきょろしていた瞳をこちらに向け、ぼそり、と口を開いた。



「…私だって、泳いで渡りたかった訳じゃないんですよ?ユートさんが『私を抱えて水面を走ればいいよ』とか言い出しそうで怖かったんです。」



なるほど、と思うと同時に感心する。ソフィーはソフィーなりに俺のムチャ振りに慣れ出しているのかもしれない。


何故かと言うとまぁなんというか、できたりするのだ。水面走り。ただ問題は…



「魔法で足の裏に当る水を固定すれば出来ない事も無いけど、結局は一瞬沈むのを止めるだけだし流石に全速力で走らないと無理だろうね。」


「やっぱり出来るんじゃないですか、ホントメチャクチャですね…」


「ははは」



とりあえず、笑ってごまかす。



「嫌ですよ?…ほんっっっっっとうに怖かったんです。」



実に実感の篭った言い方だった。うん、相当なトラウマになって居たようだ。


…悪い事をしたかな。少し、反省する。何も全力で走らなくてもよかったかなーと。



「間違いなく、死んだと思いました。生きてましたけど…」


「緊急事態だったんだから、ね?」



でもいい訳はしてみる。



「わかってますよ…それでも、それでもです。怖かったんです!」


「ごめんごめん」


「謝らないで下さい。仕方ない事だったんですし。」


「じゃあどうすれば…」


「慰めてください。」


「…」


「分かりました。膝枕で妥協します。」



そうして有無を言わさず俺の太腿の上へと倒れこむ。


狭い船上、逃げ道は無く成すがままだ。でも、それ程嫌という訳でもない。


機嫌が直るならこのままでも良いかな、と思う。


だがそんな思いを知る由も無い筈のソフィーは、逸らしていた顔をこちらに向けにっこりと微笑む。


その顔は満足げに、してやったり。と言わんばかりだ。



…そうか、ほんとはこれが狙いだったのか。



だけど、と思う。きっと怖かったと言うのも嘘では無いだろう。


だから今は拒む事無く無言でソフィーの頭に手を置き、なでる。


あ、と少し驚きを浮かべるも、すぐさま嬉しそうに目を細め、微笑み、やがて瞳が閉じられる。


お互い言葉は、無い。


船は魔法で進むから揺れは殆ど無い。


召喚されてから、初めてかもしれない本当にゆったりとした時間が流れる。


ソフィーの髪を手櫛でやんわりとすきながら、少し速度を落とし、暫くこの時間を楽しもうと思った。

第一章はここで中間の区切りとなります。


そして申し訳無いのですが…ストックも大分減って来ましたので、次回からは1日1回更新にして行こうかと思います。拙い作品ですが楽しみにしていだいている読者の皆様、ごめんなさい。

なんとか1日1回ペースを守れるよう、頑張りたいと思いますので平にご容赦を…orz

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