6-1<森を抜けて>
<甲盾熊>を倒し、2日。新世界生活6日目の太陽も昇りきった頃、ついに森を抜けた。
何故かは分からないが、<甲盾熊>を倒した後はモンスターの遭遇率がグンと
下がったので、思ったよりもかなり速く森を抜ける事が出来た。
あれからソフィーは激しく落ち込み、2日に渡りフォローをする事になった。
重い空気での道行は正直辛い。できれば楽しく進みたかった。
そんなソフィーも森を抜けて今、目の前に広がる景色を前にして元気を取り戻していた。
「これがここベルム王国最大の水源、ウルラス川です。」
えっへん。そんな感じの自慢げな顔だ。しかしそういう顔をしたくなるのも分かる。
なぜならばその川はとてつもなくでかいのだ。川幅が。
目測でだが、多分2kmは有るんじゃないだろうか?
さらに不思議な事に水が綺麗なのだ。透き通ってキラキラしている。
少なくとも今までみたどんな川でもこの川の壮大さには適わない。
最早不自然とも思えるほどの絶景だった。
「すごい」
ごくごく単純に感嘆を述べる。正直言葉にならなかった。
山の中の小さな源流のような美しさの川が、2kmを超える広さで流れているのだ。
水の底の小石も、流れに逆らって泳ぐ魚たちも丸見えだ。
「この川があるおかげでベルム王国は水資源に困る事は無く、安定した気候も相まって農作物の収穫にも恵まれているのです。
そしてその恵みは国内に留まらず、比較的安価で大量の余剰食料を供給することで、諸国を飢饉から救い、不評を抑える事に成功しています。
さらに代々続く<召喚魔術>の安定した成功が、この国を暗黙の不可侵のものとして、平和を保障してくれているのです。
それでもやはり潜在的にこの国の豊かな国土が欲しい、と考えている国はあります。
ですがこの国を奪い、その恵みを独り占めしようとすれば周りの全ての国を敵に回してしまうので手を出せないのですよ。」
ソフィーが饒舌に語る。この国の平和と安定を。
まさに願っても無い環境だ。このままこの国に住む事が一番ではないだろうか?と思う。
そしてソフィーは俺にそう思わせたいのだ、とも思う。
「すごいね、夢のような環境だ。」
「はい。ですから…」
「言いたい事は分かってるよ。でもさ、もう少し浸らせてよ」
ソフィーの言葉を途中で遮る。言いたい事は見当がついていた。そしてその想像の通りだろう。
…この娘もあまり嘘を言えないタチなんだろうな。
ふふ、と苦笑する。別に悪い事ではない。好ましい事なのに、だ。
「ごめんなさい…」
「謝らなくてもいいさ、でも本当に綺麗だ…泳ぎたくなる。」
「私も水浴びがしたいです」
・・・意見が一致した?