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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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4-4<甲盾熊4>

(こっのぉっ―――――――!!!!)



必死に魔力を込めて<時鎖緊縛>を支えるのだが、凄まじい勢いで鎖が引き千切られる。


まさかこれほどとは。鎖が一瞬しか持たない。


先ほど不意打ちで縛った時は3本でも減速効果は見られた。…あっという間に千切られたが。


それが、今は一切停滞する事無く巨大な腕の一振りで数10本が砕かれ、散る。


<時鎖緊縛>は縛れば縛るほど相手の時間を遅くする。


魔力が2割程度しか残っていないが、全力を注ぎ込めば500本は出現させられるだろう。


だがそこまでせずとも全開で縛ったならば、瞬間的におよそ100本が出現する。


敵の時間は100倍近くなり、5秒と言わずかなりの時間を拘束する自身があった。


それなのに、全力で魔力を注ぎ鎖を増やし続けているのだが、効いている素振りを感じない。


これこそが、<甲盾熊>がこの森最悪と呼ばれた由縁。巨体による頑丈さだけで無く、魔法を殆ど受け付けない事。


正直、甘かった。


…このままでは5秒も持たないかもしれない。


弱気な考えが浮かぶ。


5秒間、それだけ耐えたら攻撃魔法でユートが<甲盾熊>を倒してくれる、と言った。



だから、



信じる。



魔力が尽きても良い、効いて無くても良い、ただ意識をユートから逸らすだけ出来れば良い。


だからこの5秒で全て出しきっても構わない!!



ただ必死に<時鎖緊縛>に魔力を注ぎこむ。



足手まといでも知るものか。



私は、



ユートを救いたいんだ!!




「っ―――――――――――――――!!!!!!」


「ゴアアアアアアアアアアアア!!!!」



3秒、


限界まで一気に鎖を出し切り魔力が尽きる、もう鎖は増やせない。


4秒、


今ある鎖が千切られたら、<時鎖緊縛>は解ける。


持って、お願い…



「ユートぉ…」



完全に鎖を千切り緊縛の解けた<甲盾熊>が怒りの色を灯した目でこちらを見据え、踊りかかってくる。



「<水環鋸(ルト・アサンダー)>!!」



5秒、と同時にユートの声が響いた。




聞き覚えのある魔法名、確か彼が「良く使う」と言っていた魔法。


そして、見る。直径5m程度の白っぽいオレンジ色に眩しく光る輪が<甲盾熊>に向かって飛んでいく。


それは見る限り、短剣を投げた時とは違って私でも目で追える程にゆっくりとしている様に見える。


あれでは、遅過ぎではないだろうか?かわされてしまうのでは?


ぼんやりとした思考で考える



<甲盾熊>が迫り来る発光する輪に異様さを感じたのか回避行動をとる。…これもゆっくり?


それに合わせて飛行する輪が横から縦に変え、軌道を変える。そうか、誘導できるんだ。魔法だから。



横向きから縦向きになった輪が<甲盾熊>を斜め袈裟切り気味に捉える。


ギャン


と一瞬耳障りな音が鳴り、輪が<甲盾熊>を通過した。・・・・・通過した?


そして感覚が戻ってくる。極度の集中で時間が経つのを遅く感じて居たらしい。



ゆっくりと突進して来ていた<甲盾熊>が一瞬で加速して地面へと倒れ伏し、


真っ二つに別れ、木を巻き込み転がる。


光の輪はさらに少し進んで森を通過した後、上空へ飛び上がり霧散した。


どちらも1秒に満たない一瞬。



メキメキメキメキ



輪が通過した所にあった木が倒れる、


輪が通った所を切り口に、切り倒され、その切り口が燃えている。


そして、<甲盾熊>が崩れ始める。


倒した。そう確信した私はそのまま意識を闇の中へと落としていった。





◆◆◆◆◆◆◆◆





突進して来た熊が地面にくずおれ、2つに別れ転がる。


4足歩行で向かってきた所を袈裟切りにした。直径5m程しか無い<水環鋸(ルト・アサンダー)>だったが


上手く熊を真っ二つにすることは出来たようだ。


ビクン、ビクンと数秒痙攣していたが、程なくしてその巨体が崩れていく。


倒した。



「ふーーーーーーーー」



思いっきり空へと息を吐く。今回ばっかりは本当にギリギリだった。かなり緊張した。


腕の中のソフィーへと目を向ける、


…意識が無い。だが胸は上下し鼓動も感じる。気絶しているんだろう。



「全力で魔力を使ったのなら仕方ないか…」



一旦近くの木にもたれさせるように降ろし、


死体のあった所で<魔導心臓>とナイフ数本を回収する。


後は明日にしよう。


暗闇の中では全て探すのは困難だと判断し、再びソフィーを抱き上げた。




野宿をしていた拠点へと戻りソフィーを降ろす。


乱れた前髪を軽く払ってみたら穏やかな寝顔が伺えた。


そのまま横たえさせて、毛布をかける。



「…ソフィー、お疲れ様。驚いたけど、嬉しかった。助けに来てくれてありがとう。」



眠っていて聞こえないだろうソフィーに向かって語りかける。


多分ソフィーが来て居なくとも倒せていただろう。


だけどそういう問題じゃない。


助けに来てくれた事が嬉しかった。



「また助けられちゃったね…借りばかり増えちゃうな。」



苦笑する。


あの頃は誰かに助けて貰う事なんてそうそう無かった。


そんな中何も分からず死に掛けていた自分を必死に助けてくれた少女を思い出す。



「ティーナ…」



過ぎ去った過去へと、思いを馳せる…

裏話になりますが、この時の<時鎖緊縛>はきちんと効果が出ています。

上半身の甲殻部分で千切られはしましたが、それの無い下半身にはしっかり効果を発揮、その為全ての鎖を千切るまでその場を一歩も動けませんでした。ソフィーは戦い方を知らなかった。という話。ソフィー、足手まといじゃないよ!

・・・それはさておき

次回はユートの回想回になります。短く端的に纏めましたがそれなりに欝話となりますのでご注意下さい…

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