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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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4-3<甲盾熊3>

ソフィーの方を向いた熊が3mはあろう岩を持ち上げ、投げつける。



「危ない!!」



咄嗟に<強化魔法>を活性化させて駆け、間に割り込み盾になる。


思考が加速しているため、ゆっくりと岩が迫る。


だめだ、質量がありすぎる、このまま受け止めると俺の体重では押し切られてソフィーが潰されてしまう。



「…ならば、弾く!」



<強化魔法>をさらに活性化、両足で大地をしっかりと踏みしめ、


真っ直ぐ殴ると腕が突き刺さるだけだろう、と判断し


斜め下から抉るように、岩の中心やや手前を殴り、弾く!!



「おおおおおおおおお!!」



ゴッ


と重いものがぶつかる音がして拳の突き刺さった岩が一部砕け散りながら、逸れる。


それを見届ける事無く殴った勢いのまま方向転換し、後ろへと跳躍。


ソフィーを攫うように抱き上げ、熊へと目線を戻し、バックステップ。さらに下がる。



「ソフィー!何で来た!!」



熊から目を離す事無く抱きかかえたソフィーに向かって叫ぶ。



「私が時空魔法で足止めします!逃げましょう!」



俺を助けに来たのか、なんて無謀な。


熊が迫る。距離をとってその周りを死角へ、死角へと回り続ける。



「無理だ!アイツは足が速い、今の状態じゃ逃げ切れない!」



今は横へ、後ろへと回り込んで殆ど走らせ無いせいか、それ程速くない感じがするが、


熊と言うものは真っ直ぐ走らせると物凄く速い。


さらにこれはモンスターだ。体力も、筋力も、歩幅も規格外。恐らく今の残存魔力で逃げ切れるようなモノではない。



「私が全力で<緊縛>します!ですから!」



<緊縛>と聞いて考える。つまり「縛る」類の足止め、時間次第ではその隙に攻撃魔法を完成させて葬れば…


思考を巡らせる。どの道ソフィーを抱いたままでは逃げるにしても攻めるにしても手は殆ど無い。



「5秒でいい!止められるか!?」


「止めて見せます!!」



熊の爪が何度も近くを通る。ソフィーに当たったら良くて重症、まず即死だ。



「止めた瞬間に攻撃魔法を作る!頼む!」


「分かりました!!


 ―MTof nnede [krre] Oan Lieela biis : Et ShhN : e Capdt cheeeM―」



腕の中のソフィーが呟く、詠唱か、これだけの大物だ、かなり大きな魔法で縛るつもりだろう。


ソフィーの集中を妨げられないように攻撃をかわし、死角へ、死角へ、と回る。



「―MSppoen Arr lesryix 10 tales 20 tales quesd 100 ptales―


 ――<時鎖緊縛ソア・チェーン・バインド>!!」



ソフィーの魔法が発動する。空中から鎖が次々と物凄い勢いで飛び出し熊を縛りつけ、捕まえる。




発動を確認し、さっき熊が投げた岩へと飛ぶ。自分で言って置いてなんだが時間は無い。


まだ2/3は原型を残してあった岩を着地と同時に踏み砕く。下準備は出来た。



「―Cahes [Miehmtsnd] MrM―」



呪文を唱える。僅か3小節の魔法。込められた意味はごくごく短的に「水よ、固まり、従え。」


俺の魔力から生まれた魔法水が細く巻き上がり、先ほど踏み砕いた石を攫う。


そのまま俺を中心にぐるりと輪になり、連結し固定。


そこから加速、加速、加速…



ヒュィィィィィィィィィィィィ



風切り音が響く。水を鎖に、石の破片をチェーン刃にした擬似的鎖鋸(チェーンソー)がうなりを上げる。


熊が物凄い勢いで空から生えた鎖を千切って行く。



(―まだだ)



さらに加速、加速、加速。…俺の周囲を回る水と石の輪が橙白色に輝いた。速度の限界だ。


水で一部コーティングされた石が大気の摩擦で発火し、周囲の空気が断熱圧縮でプラズマ化しているのだ。


恐らく数千度になっているだろう。だが水は蒸発しない、魔法で固定しているので蒸発できない。遠心力で広がることも出来ない。



ィィィィィィ――――――――――――――――――



最早音でもなくただごく細かく、激しく空気が振動する。


こうなるとこれ以上の加速は望めない。それに後数10秒程度で燃え尽きてしまうだろう。


(…6000m/sってとこか、ほんとはミスリル製の刃でやるんだがな、)


少し自嘲する。あのころの装備はもう無いのだ。


(速度が半分も出ていないが今回は緊急事態だ!いくぞっ!!)


熊がソフィーの魔法を引き千切りこちらに向かって踊りかかってくる。


(きっかり5秒、だ)



「<水環鋸(ルト・アサンダー)>!!」



魔法名の唱和による発動指令を受け、<攻撃魔法>が完成する。

うんちくシリーズ第二段。

6000m/sで周囲の空気が断熱圧縮でプラズマ化。ということですが、実はこれ、やや遅いですが概ねスペースシャトルが大気圏に突入する時の速度と現象です。ようするに今回の魔法は「スペースシャトルが折れないノコギリを持って大気圏突破してる最中に向かってくる装甲車に切りつける」といったイメージでしょうか?なかなか壮大です。ともあれ、その結果は次回。

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