3-2<強化魔法・付与>
これも元勇者としての性だろうか、男に二言は無く、約束を守ることにする。
やると決めたら一気にやる。それが勇者の生きる道
…何を言ってるんだか、と自分でも思う。
念のためもう一度気配を広めに探る。昨日殲滅したせいか限界ギリギリ付近まで何もひっかからない。
安全、だな。
「…周りには何も居ない、始めるよ」
「お願いします。」
魔法で水を作る、さらに作る、作る、作る。そしてソフィーをその水で包んでいく。
現れた水の中に浮き上がり、水没して行く体に驚いたのかソフィーが戸惑う。
「大丈夫、溺れたりはしないから。」
さらに水を増やしソフィーの全身が完全に沈む。
ここからだ。
意識を水に通す。魔法で生み出し魔力を行き渡らせた水は、今や全て自分の手であり目であり鼻であり舌であり耳でもある。
「んうっ……!?」
がぼっと息を吐き水中のソフィーが身悶え、声が漏れ出した。
ああやっぱり。
本来は体の小さな幼少期にやる魔法なのだ、これだけの大量の水で全身を包み込み、
体内にも慎重に浸透させていっている今、繊細過ぎる操作はどうしても完全には至れない。
必死に制御して抑えてはいるのだが、不意に体をよじられたり、操作が乱れる度に
水がソフィーの体を撫で、さすり、ともすれば舐めているような感覚を与えるのだ。勿論双方に。
「ひぁ…」
さらに艶っぽい声がソフィーの口から溢れる。いけない、いやらしい事を考えてはいけない。
兎に角集中して<走査>を加速させる。
「くっ………やぁ…あ、んっ」
もう少し…
「あっ……」
およそ30分程経ったろうか、<走査>が完了する。
よしっ、後は<記録>っ
<走査>で得た魔法脈マップの情報を書き込む。
次からは最初にこれを展開し、ガイドに沿って走らせるだけになるので早いのだ。
ばっしゃぁんとソフィーを包んでいた水球が崩れ去る。
支えを失い落ちるソフィーを抱きとめる。
「ソフィー、<走査>終わったよ。」
「はぁ、はぁ、あっ…………その、終わったの、ですか…?えっと…凄かった、です………」
何だか凄く顔がとろんとしている。
肌もほんのり桜色に染まっていて、粗い息遣いも相まって色っぽい…。
いかん、そんな事を考えてはだめだ、心頭滅却、煩悩退散。
マールの轍は踏まない。マールの轍は踏まない。マールの轍は踏まない。
「マールの轍は踏まない…」
「?」
いけない、心の声が漏れた。
「そ、それじゃ次は<強化魔法>をかけるよ!?とりあえず一つ目だから<生命強化>から」
「はい…おねがいします……」
「口あけて。」
今度は口腔内に魔法水を纏わせた指を差し入れる。
このまま喉を抜けて浸透させ、<魔導心臓>まで魔法水を進ませて魔方陣を描くのだ。
他にも方法はあるのだが、俺自身水魔法が得意なのでこれが一番効率がいい。
見た目は何か背徳的だが…
ともあれ、魔法での重要器官は3つ、
動力源となる魔力を湧き出させ体に循環させる<魔導心臓>。
魔法の発動箇所である<放射口>。
そして詠唱し魔法を形作る為の<詠帯>である。
<魔導心臓>はおおよそ体の中心にあり、<放射口>は両手など、<詠帯>は喉にある。
と、言ってもどれも基本は魔法臓器であり、実際に摘出出来るのは<魔導心臓>ぐらいなものなのだが。
それはさておき、魔力を纏わせた水を体内に浸透させて、その<魔導心臓>に触れる。
最初の魔方陣の中心位置はここ以外は無いのだ。
<生命強化>を描き始める…時間はさほどかからないが、正確かつ丁寧にソフィーに合わせてアレンジして描く。
…こちらは数分で完了した。
「ソフィー、終わったよ。大丈夫?」
「大丈夫じゃ、無いかもしれません…ちょっと、色々と刺激が強すぎ……で………」
…昨日森を歩いていた時よりも、息も絶え絶えになっていた。
微エロ回でした。
こういう回は書いてて楽しいのですが、なかなか表現が難しかったです。
まだまだ精進あるのみですね。