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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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3-1<2日目の朝>

「おはようございます…」


「おはようソフィー」



朝日が昇り少しして、ソフィーが目を覚ました。



「ここは……」


「神殿の北の森、二人で逃避行の真っ最中。」


「そうですか…」


「…寝ぼけてる?」


「私は寝ぼけてないですよー?それにしても静かですね…?」


「まぁ、森の中だしね?」


「…メリアお姉様は体調でも崩しておられるのですか?セバスチャン。」


「セバっ」



完全に寝ぼけている、さらにセバスチャンだって?


なにその執事の代名詞みたいな名前の人。ほんとに居たのか。しかも異世界にまで。


セバスチャンすげぇ…世界を股にかける、いや異世界を股にかける執事…





いやいやいや、セバスチャンに驚いている場合でもないか。



「とりあえず顔、洗う?」



こくこくと頷くソフィーの前に、


水魔法を使って頭ぐらいのサイズの水弾を作り、浮かべる


おまけで軽く振動させて水温を上げ、ぬるま湯にしてみた。



「どうぞ」


「ふぁい」



寝ぼけまなこのまま、パシャパシャと手ですくい顔を洗う。髪も洗うようだ。


暫くそうして洗顔をしていたソフィーががばっと顔を上げる



「お、おはようございます!ユート様」


「おはようソフィー、『さん』は止めたの?」


「え?ど、どういう事でしょうか?」


「昨日途中から『ユートさん』になってたよ?」


「あ…あうあう……」



水浸しの顔を赤らめ口をぱくぱくさせる。なんというか、これはこれで目の保養というか。



「今更だし、俺もソフィーを呼び捨てしちゃってるしソフィーも『ユート』でいいんだよ?」


「そ、それはそのぅ…えと……………まだ、恥ずかしいですし…」


「?ごめん後半が聞こえなかった。なんて?」


「いえ!何でも無いんです!そうですね、では『ユートさん』と呼ぶ事にしますね!」


「うん」





「…あの、ところで昨夜…モンスターは…?」


「倒して置いた。近場に居たのを全て。」


「そうですか…」


「そうだ、戦利品。見て見て」



昨日一つ受け取っていた鞄を渡す。


槍4本とモンスターの素材だけを入れて置いた鞄だったが、今はモンスター素材が増えている。



「…<刺突兎の角>が5つ、<双頭蛇の皮>が3枚、<狂乱鳥の羽>が2枚<赤蝙蝠の牙>が4セット。それからええと、<闇夜狼の刃>が5本<伐採鼠の歯>が7本<女王螂の剣>が2本。それにこれは………<甲冑猪の牙>ですか?」



昨晩遭遇しただろうモンスターの名前がつらつらと告げられる。


見た目でも思ったが、この世界の動物の名称は元居た世界と同じ物が多いようだ。



「他にもいくつか私には分からないものが入ってますし…すごいです、これで生活できますよ?」


「それはいいなぁ…」



しみじみ思う。こんなことで生計が立てれるなら万々歳だ。魔族と戦うのに比べると片手間以下の朝飯前だ。



「はぁ、なんだかもう驚き疲れてしまいましたよ…」


「朝から疲れさせちゃったか…ごめんごめん。おわびにこの一番の収穫っぽいものをあげるから、さ。」



と言って懐に入れていた手のひら大のものを渡す。



「これは…<夜光蝶の羽>ですね。4枚とも無傷で仕留めたのですか…」



あれ、あんまり反応が良くない。綺麗だったから喜んでもらえると思ったのに・・・



「綺麗だったから…ごめん。あまり良い物でも無かったんだね…」


「いえ、そんな事は無いんです、凄いものなんです。嬉しいんですよ?でも、ちょっとここまで来ると呆れが…」



しょぼーん


やっぱり張り切り過ぎたのだろうか。見たことの無い生物だらけで上手く倒すとアイテム落とす、


となるとコレクター魂というかなんというか、なんだか楽しくなって徹底的に倒しまくったのが良くなかったようだ。


折角頑張ったのに…ちょっとショボくれながらとりあえず鞄に仕舞う事にした。





それからソフィーは「着替えをしてきますね。」と木の陰に回って行った。


そういえば昨日はずっとあのワンピースだった、幾ら裾も袖も長いとは言え山歩きには適さなかったろう。



「着替え、あったんだなぁ」



昨日の内に着替えておけば良かったのに…いや、そんな時間も無かったのか。


など色々考えつつ焚き火の始末をつけた所でソフィーがやってきた。


長袖長ズボンに頑丈そうなブーツ。髪も編み纏めてある。前よりは山歩き向きになった。



「不思議なんですけど、あんな格好でいたのに全然怪我をしてませんでした。」


「あー、それは<予防>と<治癒>のおかげだね。」


「この短剣ですか?」



ナイフを取り出す。



「そう、付与魔法で<予防>と<治癒>がかかってるから持ってるだけでかすり傷程度ならサっと治ってたんだよ。」


「そうなのですか。でも<予防>というのは何でしょうか?<治癒>は傷を治すと見当が付くのですが。」


「<予防>は前もって病気にならないようにするって事かな。怪我したらバイキンが入って化膿したりするでしょ?それを防ぐと。他にも風邪にかからないとか色々有るみたいだけどね」


「バイキン…?ともあれ物にかける<強化魔法>といった所でしょうか?」


「かなり違うものだけど、大体そんな感じの認識でいいかな。」


「そうですか…ところで約束の件ですが。そろそろ大丈夫ですか?」


「う゛っ」


「今更やっぱり止めた。とか言わないで欲しいです。男に二言は無いと言いますよ?」



さっきまでのゲンナリした顔をすごくニッコリとさせてソフィーが迫る。


なんで日本のことわざなんて知ってるんだ?…ともあれ、逃げ道は見当たらないようだ。

何の変哲も無い初めての寝起きでした。


次回はついにソフィーにも<強化魔法>が!

何故ユートが渋ったのか…その訳が明らかに。


指摘していただいた点の修正を全編に渡って加えました。ありがとうございました。

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