2-5<塩と不寝番>
「塩や調味料が入ってない野菜だけのスープは何とも言えない味になる。」
完成したスープを一口食べて塩が入って居ない事は分かった。
いくつかの野菜とブイヨンだけを煮たような味なのだ。端的に言って、微妙だ。
幾ら壊滅的な食生活をしていたと言っても、その前はまともな食事をしていたのだ。そのぐらいの味覚はある。
…ちょっと嬉しかったのは秘密だ。
ちらっとソフィーを見ると、ソフィーも一口食べて怪訝な顔をして首をかしげている。
「ねぇソフィー?塩ってある?」
「ありましたよ?取ります?」
「お願い」
塩を受け取り自分のスープに少し入れる。うん。狙い通り。美味しくなった。
相変らず怪訝な顔をしてスープを口に運んでいるソフィーに塩入りスープを促す。
「食べてみて」
ソフィーが塩入りスープをすくって食べる。目を見開いた。
「塩が必要だったんですね…!」
こういう理解の早さは美点だと思う。
早速自分のスープと鍋に塩を入れて味見もきちんとする。
調味料を適当にブチ込んで大惨事を招いてこそ料理!とかやってた誰か達とは違う、その慎重さに感動すら覚える。
そうこうしている間に満足が行く味になったようで、そのまま二人でこれまでの食生活について談笑しつつ食事をした。
食事も終わり、空焚きした鍋と食器を軽く水で洗い、サッと布で拭って収納。
代わりに毛布を2枚取り出した。
膝を抱え炎を見つめてうとうとし始めているソフィーに毛布を手渡し、声をかける
「ソフィー、寝ててくれて良いよ。火とモンスターの警戒はしておくから。」
「…ユートさんは眠らないのですか?」
気になるよね、こういう時って普通なら交代して眠るとかだもんね。
でも俺って普通じゃないからなぁ…
「大丈夫。冗談に聞こえるかも知れないけど7日ぐらい飲まず食わず寝ずで戦えたりするから。」
「…それも<強化魔法>ですか。」
「その通り。」
「ホントにメチャクチャなんですね…」
「否定はしない。」
「うー…そういう事でしたらお言葉に甘えます…。無理をしている訳では、無いんですよね?」
「ああ。」
「分かりました。…それでは眠らせていただきます…お休みなさい。」
「お休み」
「…明日、約束忘れたりしないで下さいね。」
「…分かってるさ」
それっきりソフィーが黙る。暫くして規則正しい寝息が聞こえて来た。
召喚魔術、逃避行、野宿…きっと疲労も限界だったのだろう。
「さて、と…」
火に薪をくべつつ気配をかなり広めに探る。眠り姫の邪魔をさせるつもりはない。
今夜はこちらから攻める。
そう決めると立ち上がり、最も近くの気配に向かって暗闇の中へ突入した。
もちろん塩を入れなくてもそれなりに美味しいです。
ですが筆者は適度に塩を入れた方が好きなのでこうなりました。
塩無しスープは何だか締りがない感じがしますので…