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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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2-4<鞄と料理>

ソフィーの体力がそこそこ戻ったので大樹の根元から離れる事にし、山道を進んでおよそ3時間が経っていた。


道中さらに<刺殺兎>を2匹と、<双頭蛇>を1匹、さらに<狂乱鳥>を2匹ナイフ投げで仕留め、そろそろ日が暮れそうなので野宿の準備をする事にした。


周囲のモンスターをあらかた片付け、ソフィーと二人で薪を集める。


さらに石で簡単な竈を作り、火をつけた頃には既に太陽が西の空に沈む所だった。





パチ、パチと暗がりで炎が爆ぜる。


既に日は完全に沈み、星の明かりもまばらな森の中。この拙い炎が無ければ完全な闇と言っても過言でない。



「野宿なんて、初めてです…」



ソフィーがぽつりと言う。自分が始めて野宿をした日はどうだったかな。と思いをはせるが、随分と昔の事過ぎて思い出せない。



「…フフッ」



つい自嘲の笑いが出てしまった。



「むっ…ユートさんは野宿は…?」



誤解をしちゃったのだろうか、ソフィーがむっとする。



「俺はむしろ野宿の方が多い生活をしてたよ。」


「そうなのですか?」


「色々あってね。」


「はぁ…」



ついついしんみりとしてしまった。会話も続かない。


これは悪い事をしてしまったな、と思い話題を変えようと口を開きかけた時だった。




くーきゅるるるる…




可愛らしいお腹の音が鳴った。



「………」



ソフィーが赤面して俯く。


そういえばここまで何度か水は口にしていたようだが食べ物らしきものは何も食べては居なかった。



「何か食べようか、食料は有ったんだよね?」


「はい………」



そう言って赤い顔をしたソフィーが鞄を漁る。


鍋が出てきた。中華鍋のような形状だが、小ぶりだ。むしろ握りのある浅めのボール…?


それが火にくべられる。さらに皮製の水筒らしきものを取り出して縛っている口を開き、水が注がれる。


そこまでした所でソフィーが固まった。



「どうしたの?」


「…私、料理をした事が無いのでどうすれば良いのか分かりません」



…そういうことか



「ちょっと見せて貰える?」



ソフィーと肩が触れ合うような距離まで近寄り、鞄を覗く。


ちょっと距離が近いと思うけれど、仕方ない。近づか無いと見れないのだ。


どれどれ、と見てみるのだが…


分からない。



「…これ、どうやって使うの?」


「………え?…あ!す、済みません、説明してませんでしたね?」



鞄の口をあけて心ここにあらずと言った感じになっていたソフィーが慌てる。


…あえて触れないで置こう。暗がりでも分かるほど顔が赤くなっているし。



「とりあえず鞄を持って開けてみて下さい。」



手渡される。小さい鞄だ。形状のせいでついポーチと言いたくなる。いや、それにしても小さすぎるのだが…


とりあえず鞄の口を開け、覗き込む。すると中のものが見えた



「う、わ…」



奇妙な感覚だ、手元はとても小さな鞄なのに視界は何故か小さな部屋を少し離れた状態で上から覗いている感覚。


おおよそ3m×4m程の空間を覗いている。その中に色々な物が入っていた。



「何を取るかを考えながら中に手を入れて見てください。」



とりあえず目星をつけた物を取ろうとする。狙いはそこのジャガイモ?だ。


そう考えたとたんに視点がズームされる。なんだこのハイテクは?さらに手を鞄に入れる。


…どうなってるんだ。


手が中のものを掴んでいるのが見える。感触もある。


だが、鞄に入れた手だけが体から離れ、鞄の中の空間から生えているのだ。


例えるならばロケットパンチ状態。


そのまま引き出すと鞄の中にあったジャガイモ?と掴んで居た手がずぶずぶと消える。


もちろん鞄から取り出されて、切れても無ければロケットパンチにもなっていない手の中だ。



「便利だ…一家に一つ欲しい」



素直な感想が漏れる。



「…7つもありますし後で整理してお渡しましょうか?」



やったね。



と鞄に気をとられてないで食材を見なければ。何が有るんだ何が


漁る。


主に野菜らしいのだがどれもこれも微妙に何処か違っていて見覚えが無い。


良く考えると、俺この世界の食材を知らない。


焦る。



「良く考えたら俺、この世界の食材知らない…」



結局どうにも成らなかったのでそのまま声に出した。



「やっぱり私が作りましょうか?簡単なスープ程度でしたらきっと作れますし…」



…任せてみよう。折角だ。それに女性の手料理は嬉しいものだ。…怖くもあるのだが。


脳裏に浮かぶのは7年ほど前。全員が無闇に頑丈だったので料理はダメージを与えてなんぼ。というノリになっていたあの世界…。


「うまい食べ物ものは料理しなかった食べ物だ。」という格言まであった。


…どの道どんな料理が出来ても俺は死なないから、大丈夫か。


そう結論づけ、頷く。



「お願い」


「わかりました。」



鞄を手渡す。ソフィーが中を覗きゴソゴソと何かを取り出す。瓶だ。



「ふふふ、やっぱりありましたね。スープ種。これさえあれば誰でも美味しいスープが作れるんです!」



自身たっぷりに宣言し瓶を空け中の塊を3つほど鍋に入れる。


そんな便利なものが有ったのか。カレーのルーみたいなものだろうか?


鼻歌交じりに瓶を仕舞い、今度は野菜を数種類取り出し、


腰に挿したナイフを抜き皮を剥…



「ちょっとまった。」


「………何か?」


「皮を剥くの?」


「そうです。」


「…刃物使った事ないでしょ?俺がやるから野菜かして。」



手に持ったジャガイモ?を握り締め、短剣と言って良い大きさの刃物で、


ゴボウの「ささがき」よろしく削ろうとした所で止めた。


見てるだけで、怖い。



「………………分かりました。」



聞き分けがいい娘でよかった………





渡された野菜の名前や味、どう切るのかを話し合いながら切る。


皮むきは任せられないが大きさを揃えるためのカットならソフィーでも問題は無かった。


そんなこんなで素材を全て鍋に入れ終え煮込むこと数分。スープが完成した。


最後にソフィーが鞄からパンを2つ取り出し一つを受け取る。


スープを皿にすくって食事を開始した頃には料理を始めて2時間以上が過ぎていた。

定番と言えば定番。料理の回でした。

<強化魔法>で頑丈になった人にダメージを与える為の料理…想像するだけで怖いです

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