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2つ目の異世界  作者: ヤマトメリベ
第1章 二人の逃避行編
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2-3<強化魔法>

とりあえず倒した巨大角付き兎が残した物を拾ってソフィーの元へ戻る。



「………」


「ただいまソフィー、これ、何か出た…アイテム?」


「<魔晶石>と<刺突兎(ダガーラビット)>の角ですね…」


「見た目このナイフと変わらないけど、同じもの?」


「そうです…」


「えっと、ソフィー? 大丈夫?」


「いえ、流石に、ちょっと私の中の常識が、悲鳴を…」


「………」



どうしよう、返事はしてくれるんだけど完全に上の空だ。


仕方ないので周りを警戒しつつ、またソフィーの隣に座る。


そして剣とナイフを確かめる。


刃こぼれ無し、血も毛も何も無し、と。投擲したナイフも問題はなさそうだ。



「あのあの、こんな時に何だとは思うのですが、説明していただけませんでしょうか?一体何が………」


「? さっきの兎の事? 一匹目にナイフを投げて、2匹目は剣で首を切り落としたんだけど…?」


「パンッと言う音がして見失った、と思ったら終わっていました………」


「結構全力で投げて走ったからね」


「走ったんですよね? 一瞬で、あれだけの距離を?」



ソフィーが俺が最初立っていた位置と兎の死体のあった場所を交互に指差す。



「うん」


「魔法か何かでしょうか? でも、詠唱や媒体、魔道具の類は見られなかったのですが…無詠唱魔法、ですか? それにしてもあんな動きが出来る魔法なんて…」



詠唱、媒体、無詠唱魔法、ソフィーの言葉を反証する。後は召喚魔法での恐らく儀式魔法…やはりある程度の魔法系統は前居た世界と大差ないようだ。



「そういえば…ここまで私を抱いて走って来たのもかなり異常な速度でしたね…」


「確かにあの時も使ってた。<強化魔法>って言うんだけどね。」


「…<強化魔法>って何なのですか?」



やはり、<強化魔法>は無いようだ。



「落ち着いた…?」


「それなりに。」


「そうだね、説明しようか、<強化魔法>ってのは―――





一つ前に召喚された世界でのことだ。


そこは魔法技術がかなり進んでおり、研鑽された攻撃魔法により攻撃力が過多になってしまっていた。


何の対策もしていない生物など、赤子の手を捻る程の手間で痕跡一つ残さず殺せてしまうような状態だったのだ。


そこで人は生まれた時から身体能力を強化する魔法の込められた魔方陣を体内に描いた。耐久力を上げることで死亡率を下げたのだ。


魔方陣を描いた後、その魔方陣の維持に使用して減った魔力を満たせるようになれば、さらに次の魔方陣を。


そのようにして、おおよそ10程の<強化魔法>の魔方陣を体内に維持する事が出来た上で、攻撃魔法などを学ぶのだ。





「…その時込められた魔法を維持する分の魔力は、完全に隔離されて、他の魔法を使って魔力が枯渇したとしても、魔方陣が消えないよう独立されてるんだ。」


「ここまではいいかな?」


「理屈は分かります。そんな無茶な、とは思いますけど。」


「この世界ではそうなんだろうね。」


「兎も角、<強化魔法>ってのは最初に習うというか体に叩き込む魔法の基礎なんだ。人なんてほんともろいものだよ。この石一つ投げつけただけで死んでしまう。」



と言って石を拾う。人の頭ぐらいはあるそれなりに大きな石だ。そして、投げる。


速度はさっきのナイフ並で。轟音を上げて木が数本千切れ飛び、石は粉砕する。


ソフィーが息を呑む。それはそうだろう、普通ならこんな速度の石が当たったら即死以外に何も無いだろう。



「だから攻撃されても耐えれたり、弾いたり、酸や毒を中和したりとか色々自動で出来るようにしてあるのさ。」


「それが<強化魔法>なんですね?」


「うん、正確には<常時発動型身体強化魔法群>って言うんだけどめんどくさいから皆<強化魔法>って言ってた。かかってる魔法が個人個人で違うのも原因の一つだけどね」



…特に自分のは。


一瞬浮かんだ考えを霧散させる。変に陰鬱な空気を作りかねない。



「ちなみにさっきの石を投げたのや走るのを早くしたのは、基礎となる<強化魔法>からさらにもう一段進んだ<強化魔法>で、魔方陣を体内に常駐させることで詠唱や媒体や儀式などを省いて一瞬で使えるようにした<強化魔法>なんだ。そしてこれは使うと魔力を消費するから一定時間しか持たない。ただし、隔離されてないフリーな魔力を注ぐ事によって再使用や延長ができる、と」


「一段進んだ、ですか…とても信じられないお話でしたが、事実なのですね。…私でも、使えますか?」


「基本的に誰でも。ソフィーは魔力が高いみたいだから使えなくは無いだろうけど…」


「私も使いたいです。」


「うーん」



どう言ったものか



「難しいのですか? 魔方陣を描く為に何か儀式的な物が必要とかですか?」


「えっと、いや特に何も使わないけど。魔法脈を調べて適した所に描く必要があって、その…」


「調べるのに時間がかかるのですね?」


「そういう事も無いんだけど、ちょっと」


「どう言う事なのですか?」



いつの間にか前かがみになり、何かどんどん迫って来ている。


…ソフィー? 何かキャラ変わってきて無い? こんなアグレッシブな娘だったっけ?



「教えてください。その<強化魔法>があれば、私も足手まといで無くなれるんですよね?」



…気にしてたのか どうしよう、説明しないと納得してくれないだろうか?



「えーっと<強化魔法>は生まれた時から始めるって言ったよね? そしてかける側は相手の全身を中も外も全て読み取って、魔法脈を確認して適切な位置に描く、だから大抵親がかけるんだけど…その」


「私の体を隅々まで調べる事になる。ということですね?」


「そう」


「それは確かに恥ずかしいですけど・・・。ユートさんにでしたら大丈夫です。お願い出来ませんか?」


「でも」


「………ダメですか?」


「…」


「お願いです…」



上目遣い&涙目でソフィーがおねだりをしてくる。


破壊力がすごい。でも、ダメだ。ここで折れたらまたマールみたいな事に…



「………調べてください。」



ソフィーがそう言ってベルトを外し下から一気にワンピースをまくりあげる。下着とおへそが露になり、胸元が…



「う、わー!?」



慌ててめくれ上がったワンピースの端を掴んで戻す。



「待って、脱がなくても大丈夫だから、待って。」


「待ちません。欲しいんです。かけてください。」



戻したのにさらに脱ごうとする。


だめだ、ソフィーは本気だ。後その言い方はちょっと誤解されそうなんだけど。



「分かった!かけるから!でも今は待って。魔法脈を<走査>して魔方陣を描く程の魔力が無いんだ!」



ソフィーが止まる。



「回復するのにどのくらいかかりますか?」


「…」


「………嘘は言わないでください」



言っても見破る。そう言っているように聞こえる。



「…一晩は欲しい、それで1つぐらいならかけられるぐらい回復すると思う。」



結局素直に答える。



「…分かりました。一晩ですね。明日の朝になったらかけてくださいね。」


「はい」



有無を言わせない。完全に押し切られてしまった。




「ううう…やっぱりマールの言うとおり押しに弱いなぁ…俺」


「?」





◆◆◆◆◆◆◆◆





「そういえば、攻撃魔法も使えるのでしたよね? どんな魔法が使えるのですか? 過剰な威力と言うのも気になります。」


「攻撃魔法? 得意なのは水属性で、良く使うのは<水環鋸>とか<水炎>とか?」


「全く聞いた事が有りません…水でしたら<水流飛刃(ウォーター・カッター)>とか<氷柱飛針(フリーズ・ニードル)>などでは無いのですか?」


「なんだか響き的に水を薄くして切ったり、氷柱飛ばしたりしそうな感じだけど?」


「その通りですね。」


「そんなの使うぐらいならナイフや石投げたほうが効くよ?」


「………そうですね

 …ち、ちなみに私は時空系が得意なんですよ?」


「流石召喚魔法の使い手。時間を止めたりも出来るの?」


「げ、限定空間内ででしたら…」


「限定空間…?」


「この鞄の中、とか…」


「便利だね」


「………お気遣いありがとうございます」


「気にしないで…」


「はい…」



威力についての話が流れたのは僥倖だったかもしれない。

魔法で火の玉や氷の塊を飛ばすよりも銃のほうが効くのでは?

→ならそれに耐えれる体にしたら(するには)?

→さらにそれを上回るためには?

という考えの下に掘り進めて生まれた設定の<強化魔法>と<攻撃魔法>の説明と、触りの回でした。これから段々とその真価を描いて行くつもりです


9/5「」、!、?周りを修正しました。

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