表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら悪役令嬢でしたが、攻略手順をうろ覚えすぎました  作者: 夜凪 蒼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/12

第7話「ヒロインと本音で話した」


 リリアと仲良くなるのは、思ったより難しかった。


 図書室に案内して以来、廊下で会えば挨拶するようになった。警戒度は明らかに下がっている。でも「仲良し」かと言われると、まだ遠い。


 当然だ。原作では敵同士なのだから。リリアの中に、まだ「クレシェント様は油断できない」という認識があるのだろう。


 (どうすれば壁が取れるんだろう)


 考えながら中庭を歩いていたら、ベンチに座ったリリアを見つけた。


 一人で、うつむいている。


 (……泣いてる?)


 近づくと、違った。泣いてはいない。ただ、ひどく疲れた顔をして、膝の上の手紙を見つめていた。


 「リリア様」


 呼びかけると、リリアが顔を上げた。一瞬だけ表情が揺れて、それからいつもの笑顔を作ろうとした。


 「クレシェント様、こんにちは──」


 「無理しなくていいですよ」


 言葉が、口から出ていた。


 リリアが目を丸くする。


 「……え」


 「笑顔、作らなくていいです。疲れてるでしょう」


 「そんなこと、」


 「見れば分かります」


 リリアは少しの間黙って、それからゆっくりと笑顔を下ろした。


 「……実家から手紙が来て」


 「故郷が恋しくなりましたか」


 「それもあるんですけど」リリアは手紙を折りたたんだ。「お父さんが、早く誰かいい人を見つけろって。こっちはまだ学院に慣れるのに必死なのに」


 「……親御さんは心配なのでしょうね」


 「分かってるんです。でもなんか、疲れちゃって」


 リリアが小さく笑った。今度は本物の、少し情けない笑顔だった。


 私はベンチの端に腰を下ろした。


 「私も、似たようなことを言われますよ」


 「クレシェント様が?」


 「早く殿下と婚約を固めろ、家の名を高めろ、令嬢らしくしろ」


 言いながら、少し笑えてきた。


 「令嬢らしくしろと言われるのに、令嬢らしくしたら怖いと言われて」


 「……あ」リリアが口を押さえた。「私、最初にそう言いましたね」


 「ええ」


 「ごめんなさい」


 「謝らなくていいです。本当のことだったので」


 二人して、少し笑った。


 おかしな沈黙だった。でも悪くない沈黙だった。


 「クレシェント様って」リリアがぽつりと言った。「最初はすごく怖かったんですけど」


 「怖かったですよね、知ってます」


 「でも、なんか……本当は全然違う人みたいで」


 「違う人、ですか」


 「うまく言えないんですけど。前のクレシェント様と、今のクレシェント様が、なんか違う気がして」


 (鋭い。このヒロイン、鋭い)


 「人は変わりますから」


 「そうですね」リリアは空を見上げた。「私も変わりたいな。もっと強くなれたら、こんな手紙一枚で疲れないのに」


 「強くなくていいと思いますよ」


 「え?」


 「疲れたら疲れたって、誰かに言える人の方が、ずっと強い気がします」


 リリアがこちらを見た。


 「……クレシェント様は、誰かに言えますか」


 私は少し考えてから、答えた。


 「まだ、あまり上手にはできていません」


 リリアはそれを聞いて、小さく「私も」と言った。


 「じゃあ、練習相手になりませんか」リリアが少し照れながら言った。「お互い、疲れたら言い合う」


 「……それは、友人ということですか」


 「ダメですか?」


 私は少しの間、その言葉を胸の中で転がした。


 友人。


 原作では敵同士のはずの二人が、中庭のベンチで友人になろうとしている。


 (これでいい。これが正しい)


 「ダメじゃないです」


 リリアが、ぱっと顔を明るくした。今日一番の、本物の笑顔だった。


---


    ◇


 ──リリア・ベルの日記より。


 『クレシェント様と友達になった。怖くなかった。むしろ少し寂しそうな人だった。仲良くなりたい』


 私も、そう思った。


---


*次話:「夢の中で、記憶が戻ってきた」*


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ