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転生したら悪役令嬢でしたが、攻略手順をうろ覚えすぎました  作者: 夜凪 蒼


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第1話「目が覚めたら、やばかった」

死んだ。


 横断歩道の真ん中で、自転車と正面衝突して、あっけなく死んだ。


 最後に見たのは青空と、こちらに向かってくる前輪だった。痛みはほとんどなかった。ただ、走馬灯に出てきたのが「攻略チャートのスクリーンショット」だったのだけは、我ながらどうかと思った。


 そして次に目が覚めたとき、私は見知らぬ天井を見上げていた。


 白い。やたらと高い。シャンデリアがある。


 (……シャンデリア?)


 跳ね起きると、視界に飛び込んできたのは天蓋つきのベッド、窓の外に広がる石造りの訓練場、壁を飾る金糸の刺繍、そして──


 「お嬢様、お目覚めですか? お顔の色が優れないようですが」


 侍女が三人、心配そうにこちらを覗き込んでいた。


 (あ。これ、知ってる)


 胸の奥で、何かがかちりとはまる感覚があった。


 乙女ゲーム、『永遠の薔薇に誓いを』。


 前世で一度だけクリアした、異世界恋愛ゲーム。


 そのヒロインの宿敵として登場する悪役令嬢の名前は──アルディア・フォン・クレシェント。


 十六歳。公爵令嬢。そして私が今、まごうことなく憑依している人物。


 「……大丈夫よ。少し夢見が悪かっただけ」


 声が出た。綺麗な声だった。さすが悪役令嬢、声まで完璧だ。などと呑気に感心している場合ではない。


 (やばい。確かこのゲーム、悪役令嬢がバッドエンドで断罪されるやつだ)


 記憶をかき集める。かき集める。かき集め──


 (……少ない)


 覚えていることを指折り数えてみた。


 パッケージイラストがきれいだったこと。攻略対象が三人いたこと。王子と騎士と、あと一人は神官か魔法使いか何かだったこと。ヒロインの名前が花っぽかったこと。ラスボスが思ったより強くて二回リセットしたこと。エンディング曲が良かったこと。


 以上。


 (……以上?)


 断罪イベントがどこで起きるかも、何をしたら回避できるかも、攻略対象の名前すら一人もはっきり覚えていない。


 クリアしたのは三年前だ。スマホの容量が足りなくてアプリも消した。


 (これで破滅フラグ回避しろって、ギャグ?)


 「お嬢様、今日は王立学院の登院日でございます。お支度をなさいますか?」


 侍女の一人が、にこやかに問いかけてくる。


 学院。そうか、学校がある。ということは攻略対象たちとも顔を合わせる。ということは早速フラグ管理が必要になる。ということは今すぐ情報収集を始めなければならない。


 「ええ、支度して。──ねえ、少し聞いてもいい?」


 「はい、なんでございましょう」


 「最近の学院で、何か変わったことはあった?」


 侍女たちが顔を見合わせた。


 「変わったこと、といえば……先日、地方から新しい令嬢がいらっしゃいましたね。リリア・ベル様と仰って、とても愛らしい方で──」


 リリア・ベル。


 (花の名前だ)


 ヒロインが、もう学院にいる。


 私はシーツをぎゅっと握りしめた。


 攻略チャートなし、残り記憶ほぼゼロ、武器は前世の読書経験と度胸だけ。


 アルディア・フォン・クレシェントのうろ覚え転生サバイバルが、今始まった。


---


    ◇


 ──ちなみに後から知ったことだが、私がにこやかに侍女へ質問していたその同じ時刻、ヒロインのリリア・ベルは寮の日記にこう書き残していたらしい。


 『悪役令嬢が、笑顔で情報収集をしていた。こわい』


 人聞きが悪い。


---


*次話:「攻略対象の名前が、どうしても思い出せない」*


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