オリヴァー・ヤシトロン
「セドリック殿下のお茶会?どうして俺が参加しなくちゃいけないんだ。行きたくない。」
「王族からの招待を断れるわけないだろう。同じ公爵家からビアトリス嬢も呼ばれている。もしかしたら、婚約者や側近候補が招待されているかもしれないんだぞ。絶対に参加するように!」
5歳になる年に、突然王宮での小さなお茶会に招待された。父上からは、絶対参加と言われたが面倒くさい。
「お茶会なんて、どうせ退屈だろう。」
最近よく、姉のお茶会ごっこに付き合わされてる身としては、うるさい女がビービー話すだけの下らない催しと言う印象だった。
俺は、公爵家の生まれで顔もいい。父親は魔法師団団長をしていて、将来は公爵家を継ぐ者として、女からは人気があってモテる。
自惚れてるわけでもなく、実際にモテて仕方がない。
姉の友人が家に来た時などは、俺の姿を見ると、顔を真っ赤にして話しかけてくる。
俺の姿を見て、すり寄って来ない女など、この世に居ないだろう。
俺、オリヴァー・ヤシトロンは、誰が見ても高貴で、見惚れてしまうほどの美形なのだから仕方がない。
きっと、王宮のお茶会でも媚びた女が近寄って来るんだろう。面倒くさい。
そう思っていた当時の俺は、本当に世間知らずだった。後から思い出しても、恥ずかしさで死ねる。
あの日、気が進まないまま参加したお茶会で、俺は生まれて初めて誰かを美しいと思った。
その双子は、そっくりな顔立ちで瞳の色が違うだけで、二人とも綺麗な顔をしていた。
姉の方は笑顔が絶えず、常に楽しそうに笑っている。甘いものが好きなのか、ケーキを美味しそうに食べては、隣の弟に何やら話しかけている。
俺が知ってる女の笑顔とは違う。
彼女の、自然で心の底から湧き出たようなキラキラした笑顔に、俺は不覚にも目が離せなかった。
俺に話しかけない女など、この世に居ないと思っていたのに、リリアーベルと言われる双子の姉は、一切近寄ってこない。
こんなこと俺のプライドが許さない。何とか彼女から話し掛けられるよう、じっと彼女を見つめていると、弟と目が合って怪訝な顔をされた。作戦は失敗し、慌てて視線を逸らす。
すると、セドリック殿下が、精霊やフェンリルを怒らせてしまったらしく、場の雰囲気が一瞬で凍りつく。
そんな雰囲気を瞬く間に変えたのは、やはり、彼女の明るい笑顔だった。
俺にも、笑顔を向けて欲しい。
「本当にな。おい!みんなの中には俺も入っているのか?」
気がつけば、俺は彼女の仲良し発言に反応して、自分から声を掛けていた。
「もちろんです。お友達になるためのお茶会でしょう。―――」
''お友達''と言われ、笑顔を向けられて、俺は今まで感じたことのない感覚に、顔が一気に熱くなる。
女なんて、俺の顔を見るとすぐに近寄ってくる、鬱陶しい生き物だと思っていたのに、リリアーベルは、普通の女とは違う。
初めての女の子の友達。
リリアーベルなら友達になってやってもいいかもしれないな。
♢♢♢♢♢♢
それから俺は、双子とは友人関係になった。
双子の父親は、近衛騎士団の団長をしている。ユーリアスとは、お互い長男で家を継ぐ身であり、親が団長という共通点もあるので、色々と話しやすかった。
そして、リリアーベルとは、魔法についての話をすることが多かった。
俺自身は、魔法が苦手でどちらかというと嫌いなほうだ。でも、父親が魔法師団団長という立場上、息子の俺も周囲からは期待されている。嫌いでもやるしかない。
そんな時、リリアーベルの魔法見た。
どんな時でも笑顔のリリアーベルだが、魔法を使う時の彼女は本当に楽しそうに笑う。
ユーリアスの剣に魔法を付与する所を見せて貰ったが彼女の魔法には驚いた。
魔法がキラキラと輝いて、とにかく綺麗だった。
「良いものを見せてあげる。ユーリいつものお願いね。」
リリアーベルがそう言うと、その魔法を付与した剣をユーリアスが振り下ろす。
すると、剣から放たれた風が空へと上がり、リリアーベルがそこに魔法を追加すると、ヒラヒラと薄紫の花びらが舞った。
「綺麗でしょ?やっぱり魔法っていいな。魔法大好き。オリヴァー様も新しい魔法を覚えたら、私にも色々教えてね。」
魔法を好きだと笑う彼女が羨ましかった。
魔法が楽しいと思えたことは無いが、彼女が教えて欲しいと願うなら、俺も少しは魔法を好きになれるかもしれない。
彼女の魔法は、人を幸せにする魔法だ。
俺もいつか彼女の様に誰かを幸せにする男になれるだろうか。
違うな。''なれるだろうか''ではなく、俺なら''絶対に幸せにしてやる''の方が似合う。
まずは、手始めに魔法をたくさん学ぼう。初めての友人からの願いなのだから、高貴で格好いい俺が叶えてあげなければな。
俺たちも、15歳になった。
双子とは、いい友人関係を続けている。魔法も幼い頃に比べると、少しだけ腕を上げた。
流石に、リリアーベルには敵わないが、彼女には、新しい魔法を見つける度に披露して喜ばれている。
俺にとって、嫌いで重荷だった魔法も、今は友人を笑顔に変える為の楽しいものになった。
もうすぐ学園の入学式。
リリアーベルは、学園でも魔法一筋だろう。俺も友人として彼女がいつでも笑って居られるように一緒に傍で見ていてやろう。
読んでいただき、ありがとうございました。




