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海の底から年賀状

掲載日:2025/12/21

結婚記念日は一月二日。

でも、夫は潜水艦乗りだから、お正月は海の底。

静かな海の中で、世界から切り離された場所にいるらしい。


一年の半分以上を海で過ごす夫。

だから、記念日もお正月も一緒に過ごせない。


わかってはいるけれど、元日の朝は、少しだけ胸がざわついた。

こたつで年賀状の束を仕分けしながら、

今年も、あの人からは何も届かないだろうな、と考えてしまった。

海の底にいるのだから、仕方がない。

そう思うようにして、期待しないようにしていた。


一月二日、ポストに一通の封筒が届いた。

年賀状の時期だから、誰かからの挨拶かなと思った。

でも、はがきじゃなくて、ちゃんと封筒に入っている。

差出人の名前を見て、胸がどきんとした。

――夫からだった。


封を切ると、中には便箋が何枚も入っていた。

丁寧な字で、ぎっしりと書かれている。

「新年おめでとう。結婚記念日もおめでとう。」

最初の一行だけで、もう涙がにじんだ。


便箋には、海の底で過ごす日々のことが書かれていた。

仲間と交わす短い会話、機械の音、遠い海面を思いながら眠る夜。

そして最後には、熱烈な言葉が並んでいた。


「君と過ごせない時間が長いほど、君を想う気持ちは強くなる。海の底からでも、心はいつも君のそばにある。」


読みながら、思わず笑ってしまった。

――あの筆不精が、こんなに長い手紙を書いてくれるなんて。

普段は「元気だよ」と一言で済ませる人なのに、ここにはぎっしりと気持ちが詰まっている。

海の底で、どれだけ時間をかけて書いてくれたんだろう。

そう思うと、胸がじんわりあたたかくなった。


夫は、いつのまにこんな手紙を用意していたんだろう。

出航前に書いて、誰かに託したのかもしれない。

想像すると、また涙がこぼれた。


お正月に一緒に過ごせなくても、結婚記念日に会えなくても、こうして心を届けてくれる。


海の底から届いた年賀状は、世界で一番あたたかいラブレターだった。


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