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夜に哭く  作者: 澄川あや


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3/4

紙片

お読み下さってありがとうございます。更新が遅くなり、すみませんでした。

 もう二度と人の生死に口を出すまいと思っていたが、彼女を見殺しにするのは私自身を見殺しにするような気がした。ものすごく彼女に自分を重ねている自覚はあるし、正義感や優しさからの動機でないことに冷血な人でなしだと思う。

 正直、動くことが吉と出るか凶と出るかはわからない。結局のところ、どうあがいても未来は変わらなかったし、動いたせいで裏目に出たこともたくさんあった。けれど、若い人が死んでいくのはかなり堪える。


 もう一度頑張ろう。これでダメなら頑張って生きなくてもいいや。最後にもう一度だけ賭けてみよう。


 私は先程作ったメモをポケットに入れ、家を抜け出した。

 あれから毎晩行っているが会うことはなく、名前すら知らないので、こちらから積極的にアプローチすることはできない。

「うっすい方法ならあるけど、引かれること間違いないし……」

 彼女をイメージして町内地図に手をかざし、少し熱を感じる場所を歩いてみると多分近くまでたどり着けると思う。思うが、完全にヤバいヤツだと思う。そんなヤバいヤツの言う事なんか聞きたくないし、寧ろ関わりたくもないだろう。

 そこで私は彼女に一言紙片に書くことにした。

 コピー用紙の端をハサミで切り、5センチ四方の小さい紙片を用意する。できるだけ、ついでな感じを出すように。

 何度も言うが、彼女と私は通りすがりの間柄なのだ。私が一方的に期待…願掛けをしているだけで、彼女にとってはヤバいヤツという認識だろう。そんな私から手紙なんてもらったら……怖くて見なかったことにする。だからメモなのだ。誰に見られてもいいし、彼女が気づかなくてもいい。無駄になっても構わない。

 ただ一言。


 元気ですか?


 あなたを心配していることを伝えたい。


 本当はたくさん言いたいことがある。

 風邪をひいていませんか? 無理して笑っていませんか? 傷ついていませんか? 恐い思いをさせて、ごめんね。

 泣いていませんか? 妙な交友関係は手を切ってほしい。運命を変えて欲しい。


 私は橋の真ん中のたもとでしゃがんでメモを置く。橋は膝の位置までコンクリートで、その上に手すりがついているタイプなので、メモに石を乗せれば雨風をしのげる。気づいてくれるといいなと思う。 

 私が頑張ることで、何がどう変わるのかわからない。

 最後に忠告したのは高校生の時。あれから心が折れ、運命として受け入れることにしたのだ。

 

 高校生の頃、小学校の同級生とばったりスーパーで会った。買ったばかりのバイクを乗りたかったのと、バイクを買うときに親に借りたの親ローンの足しに、おつかいのバイトしているのだと嬉しそうに話していた。

 少しガラの悪い高校に入学したと聞いていたので、野球少年のような笑顔に安心したのを覚えている。

 それから私は彼の愛車を見せてもらった。私自身それほど興味があった訳では無いが笑顔の圧が強かったのだ。

 高校生のバイクというと原付きバイクだと思っていたが、仮面ライダーが乗るような大きいバイクも高校生で免許取れるんだねと話した気がする。お前、昔から勉強ばっかしてるから頭いいけど悪いんだな。中型二輪(現在の普通自動二輪)というんだと教えてくれた。彼がバイクに触れた途端、3日後、彼がバイクの自損事故で亡くなるのが見えた。私は驚いて何度も彼を見た。

 こんなに若くて健康な人が死ぬというのが信じられなかった。どうか間違いであってほしいと思った。間違いなく同じ数字が見えたとき、どうにかしなくてはと思った。


 この日に死ぬからバイク乗らないでと言われてもはぁ?と言われるか、自分の死の宣告に恐怖するか、コイツ胡散臭いなと思って距離を置く未来しか見えない。寧ろ、私ならこれ、全部すると思う。

 どうしたらいいのだろう。


 私はしばらく考え、軽く忠告することにした。

 明後日、雨だからバイク乗らないで、洗ってあげたら? ほら、少し汚れてきてるし。とバイクの足回りについた泥を指さした。彼は俺の愛車!と手で泥を払いメンテ大事だよな。じゃあ、家帰って手入れするわと颯爽と帰っていった。

 違う。そういうことじゃない。あまり意図が伝わっていない気がするが心から願う。


 どうか、彼の未来が続きますように。

 

 私の祈りは届かなかった。

 彼が無茶な走行をしていたわけではなく、バイクの音がおかしかったと目撃者は証言している。私は自分の身体から血の気が引いたのがわかった。


 きっと彼は洗車だけではなく、自分でメンテナンスを行ったのだ。

 私が余計なことを言わなければ、彼は電柱に激突することはなく、死ぬこともなかったのだ。

「私が殺した」

 彼の葬儀には行けなかった。どの面下げてお見送りをしたらいいのか分からなかった。私は嘔吐し、胃液しか出なくなった後、神様のお部屋で一晩中泣きながら懺悔した。もう何も言うまいと誓った。

 お読み下さってありがとうございます。

 記憶や叫喚と違い、この話は内面を主に書かせていただいているのでとても心を抉られます。記憶や叫喚は恐いが9割、辛い、悲しい、苦しいが1割(こうして割合で書くと人でなしですね)なので内面いる?…という状況で淡々と話が進んでいると思います。本当はすごく恐いんですよ! 私の文章力が足りないので、そうは感じられないと思うのですが。

 この章を書き上げた時に私が「物書きって魂削ってこうやって書いてるんだね。ストレスで血吐きそう」と言ったら「趣味でそんなにハードな事をしてる人は少ないと思うよ」と家人にツッコまれたのも良い思い出です。

 少しでもみなさまに楽しんでいただけると幸いです。

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