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夜に哭く  作者: 澄川あや


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2/4

 私は今日も家を抜け出した。昨日の彼女が心配だったからだ。

 気味が悪いと言って逃げていったくらいだから、恐らく来ないだろう。

 別に会えなくても良かった。忠告したのは境遇が似ていて少し同情したのと、私自身の意義を感じたからだ。


 彼女は危うい。愛情に飢えていて、誰かの助け、体温を求めている。

 昨日までは変な薬物に手を出していなかった…と思う。多分。

 だけど、近い内に彼女は麻薬に手を出し、1ヶ月後には違法薬物の集まりで絞殺される。

 恐らく大麻を吸った直後?の性交渉中、相手の男性がバッドトリップになり彼女は首を絞められている画像が見えた。


 どうせ何もできない事くらい今までの経験で知っている。

 警察だって勘で動いてくれるはずもない。そもそも彼女の名前も交友関係も知らない。心配はしても支えにはなってあげられない。私自身がそんなに強く立っていられない。

 それでも無かったことにはしたくなかった。


 私と彼女は本質的なところで似ているのだ。

 私は近い内に親に殺されるのだろうと諦め、彼女は愛情が欲しいと叫ぶ。その一途さは羨ましいと思う。


 私にはその情熱がもうないのだ。祖父母がいなくなってから、私はどう生きたら良いのかわからなくなった。言いつけ通り神様にお仕えし、誰も憎まず清く正しく居るだけで精一杯だった。

 正しい答えがわからない。私を生きられないのが悲しい。


 見えるけれど、見えないふり。

 死んでいるのに、存在するひと。

 生も死も同じ場所にあるのに、片方は遠い存在だという。


 異常だと泣かれ、お前が殺したんだと殴られ、不思議なこと、気に入らないこと、価値観の違うことがあれば暴力を振るわれる。

 異常で異端だから存在することさえ本来は許されないのだと身に染みてわかっている。


 生きているのに死んだように生きなければいけない。

 けれど自殺する勇気もない。

 すぐそこに自殺した後の現実が見えるから、怖くて死ぬこともできない。

 

 つまり私は臆病者なのだ。


 彼女が死を越えて幸せになったなら、それはきっと私にとって非常に大きな意味を持つと思ったのだ。


 私の異常さを受け入れられる、自分自身を許せる気がしたのだ。


どうしても独立した章にしたかったのです。短くてすみません。

令和の御代ではわかりませんが、昭和の古い価値観だとしんどいことも多かったのです。偏見も多く、びっくりするほど暴力が身近でもありました。

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