プライバシーはどこいった?
スタスタと歩く皇太子の背を見失わないよう
無言でせっせっと歩く。
無駄に使っている布が多いドレスは
私のライフポイントを奪っていく。
昔の人は凄いわ。
今ならエスカレーターや
トラベレーターがあるのに
徒歩なんて……
「ゼーゼー」
息をきらしながら
負けじと歩き進める。
城内に入ると
周囲の目があるからか
皇太子の歩みが遅くなる。
衛兵がズラリと並ぶ
扉の前で立ち止まると
皇太子が振り向いた。
「入るぞ。」
無理やり私の手を
自分の腕におく
「私のエスコートなど
嫌かも知れないが許せ。」
扉があくと
玉座に座る
皇太子によく似たおじ様と
穏やかな笑みを浮かべる美魔女が
こちらを見つめている。
カーテシーをとると
すぐやめるよう言われる。
「愚息がすまない。
私は認めるつもりはない」
皇帝の言葉に
「しかし父上、私は……」
皇太子の言葉を遮るよう
「エステルは今回の試験で満点だった。
来月からは専門課程に進むことになる。
何が不服なのだ。」
「???」
私が知らない
私の事を
私を置いて話している。
「僭越ながらよろしいでしょうか?」
私が声をあげる。
両親の顔色が悪くなる。
でもでも
頭にきたのだ。
「許可する。言ってみよ。」
皇帝の言葉を受けて
「私が皇太子様とは
もう無理なのです。
私が皇太子様では
嫌なのです。
もう、道は違えました
交わることはありません」
「…………」
「アハハハ
よく言ったエステル。
こんな肝っ玉の小さな男など捨ててやれ。
来月からはと言わぬ。
来週からでも専科へすすめ。
もう、下がってよいぞ。」
私はカーテシーをして
その場から去る。
皇太子が恨めしそうに
こちらを見ているが
関係ない。
部屋を出て
思わずガッツポーズする。
これで
馬鹿すぎて
皇太子に
婚約破棄された女ではなく
1人の人間として
見てもらえるかも……
そう思うと嬉しくて
しかたなかった。
ところで、
あの人達
私より先に私の道を決めるのって...……
プライバシーはどこいった?