目が覚めたらロマネスク
「お姉ちゃん。」
「ねぇね~。」
「姉貴」
私の呼び名は数あれど
全てが「姉」には変わらない。
17歳の私を筆頭に
生めや増やせやで……
8人弟妹……
裕福ではないけれど
食べるものに困るほど
貧しくはない。
ただスマホは型落ち
洋服は季節ごとにしまむら
進学先は、国立か県立。
お小遣いはバイト代で。
そして何より
弟妹のお世話が大変なのだ。
「里麻、今日もバイト?
頑張ってね~。」
授業が終わると一目散に
バイトへとむかう。
近所のスーパーの
「品だし」なんだけど
これが本当に神バイトで
感涙ものだ。
21時15分バイト上がりに
オーナーさんから
「良かったら食べてね。」と
頂く廃棄品。
子沢山として有名な我が家に、こうして手をさしのべてくれる人も少なくはない。
「有り難うございます。
本当に助かります。
なにせ、育ち盛りがわんさかいるので……」
ペコリと頭を下げて
駅へと走る。
今ならギリギリ38分の電車に間に合うはず。
これを逃したら、22時04分まで待たなきゃいけない。
階段を二段飛ばしで駆け上がったのがいけなかった。
「ヤバッ」
そう、思った時には
世界は闇の中だった。
「エステル、エステル」
目が覚めるとそこは
ロマネスクの世界だった。