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Go my own way ~無限のパラレル~  作者: あずきなこ


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 「昨日はホント楽しかったよね~!」


 「ホントにね~!しかもあの席!あれってVIP席ってやつじゃない?」


 昨夜行われたリュートが属するドリームセブンのライブの余韻で盛り上がる彼女たちであるが、なぜ今彼女らはここに集まっているのだろうと思いながら俺も参加している。


 「というか、君たちは確かあの後、モモの家に泊まって翌朝帰宅すると言っていなかったか?」


 だから先ほどからずっと疑問に思っていたことをようやく口にしてみた。


 「そうね。確かにそういう予定ではあったのだけれど、起きてみたら昼もだいぶ過ぎていて、そこから三人でどうするか考えて、もうこのままゆっくりして後でシオンのところに行って飲もうって決まったの。シオンもライブの話で一緒に盛り上がりたいはずだと思ったから。鉄は熱いうちに打て!っていうしね!」


 鉄は熱いうちに打てとはこういう時に使うものなのだろうか?まあそれはさておき、ミクとメルの帰宅について尋ねてみることにした。


 「なるほど?ではミクとメルは今朝の帰宅予定だったが、今ここにいるということは一体いつ帰宅しようとしているんだ?」


 「え~⁉シオンが冷たい!そんな来て早々、いつ帰るのかとか聞く?」


 「シオンの都合もあるものね。なるべく早く帰るから!」


 ミクはいつも通りの予想通りでもある答えが返ってきて、メルからもある意味いつも通りな感じの答えが返されたが結局モモから「遅くても今夜の最終便までには帰るから」とすっきり返答があった。


 その後再びライブの話題で盛り上がり、俺もリュートがプリントされているうちわと何種類かの色に変えることもできるペンライトというものを生まれて初めて買ってみたという話をした。


 「シオンも推し活?まさかなことって起こるものね?」


 「ん?押しカツ?なんだそれは?うまいのか?俺は買っていない」


 あれ?なぜか三人が微妙な顔で俺を見ている。

 

 「シオンは興味ないことだから仕方ないのだけれど、前に自分が好きで推薦する店を推す店っていうのは教えたでしょ?あれと同じで自分が好きなアーティストやスポーツ選手、いろんなキャラクターとかを様々な形で応援するって言うのを推し活って呼んでいるんだよ。シオンにとってはカツといえばカツなわけだし、まあ仕方がないわよね‥‥‥」


 三人は心底仕方がないとばかりに苦笑しているが、俺がうちわとペンライトなるものを購入したことが推し活になるということは一応理解できたのでよしとしよう。


 「その推し活とやらが応援になることは理解できるが、反面、ヒエラルキー基準を図っているともいえるのではないか?実際会場でもうちわやペンライトの色にかなり偏りがあったように思うし、ライブでのパフォーマンス自体も一人が目立つような構成をされていた気もする。だからあまりあの世界に興味のない俺でも一人のために残りが盛り立て役をさせられているように見えたぞ」


 「‥‥‥シオンって興味はないくせに、やたらするどい指摘をすることがあるよね?要は今のアイドル業界の実態とでもいうのかな?そういうのがずっと流行りだったのかもしれないけれど、段々それに違和感を覚える人たちが増えてきて崩壊しつつあるのではないかと思う。グループとはいえ、結局人気のあるものとか事務所推しの誰かがセンター(メイン)で、あとはファンクラブでの統計とかシオンの言う通りわざとあのような形ではっきり視覚でわかるようなシステムになっているから人気の順に(ヒエラルキーが)構成されて、一番人気のない人はいろいろな意味で負担を背負うことになって自信喪失にもなってかなり傷つくことになるのは間違いないだろううね‥‥‥」


 「そうそう。それでも本人たちもファンも皆、暗黙の了解的にそれが普通で仕方のないことだとスルー。ていうか、グループメンバーは仲間のはずが、そのヒエラルキーで上位、もしくは一番下ではない人たちには優越感で多少なりとも見下す感覚になっていそう。あとは自分はこのグループ内での人気が一番下ではないっていう安心感とか?とにかく少なくともこれまでは業界全体がそんな感じだったのではないかと思う。それにリュートは恐らくそういうこともスルーできなかったんじゃないかな?まあリュート自身はヒエラルキーなんてどうでもよくて、事務所の方針通り後方にいたけどかえってそれが段々おかしな状況になっていってメンバー間での信頼関係にも影響を及ぼしてしまったって感じだったけど」


 まあそもそもがそういう業界に身を置くこと自体が自ら巨大なヒエラルキーの中に飛び込んでいくということになるわけで、リュートも当然そんなことは承知の上だったはずである。だが実際に入ってみて肌で感じることはまたそれぞれ違うものなのだろう。


 だからこそ、リュートの決断は早かったのだ。


 「いつかメンバーカラーもリーダーもセンター?も、そういうのは最初から作らず存在しない一人一人の個性が尊重される和というよりも融合のグループが出てくることがあるとすればそれは相当な影響力を持つ大人気グループとなるかもしれないな。リュートはそういうのを目指したかったと思うから俺はリュートのこれからが楽しみだ」


 「そうだよね?で今、シオンは何気にさらっと言った和というよりも融合っていう言葉がものすごく腑に落ちたんだけど皆はどう?なんかありとあらゆる場でよく和を大切に!とか、皆で仲良くしなければ!とか聞くじゃない?でもそれって聞こえはものすごく良いけれど、実際中身は多数決的に少ない個性を潰して我慢させて似た感じの多い方の個性に仲間として無理やり組み込まれて仲良し!みたいにするのが正義ってことでしょ?私はそれがずっと引っかかっていて、でも何で引っかかっているのかもはっきりしなくてモヤモヤしていたのだけれどシオンのおかげでようやくスッキリできたわ。ありがとうシオン!」


 なぜかメルから感謝されてしまったが、確かに仲良しを演じている人たちの数は星の数ほどありそうではある。特にメディア関係ではそれが非常にわかりやすいと思う。しかも公に不特定多数の人々にそれを見せて仕事として稼いでいるのだから余計に面白い。それにしても一般であろうがメディア関係であろうがなぜ誰とでも仲良くしなければならないのだろう?

 

 よいではないか。合う合わないは誰にでもあり当然のことである。

 合わない人と無理に仲良くして互いに嫌な気持ちでいるよりも、それぞれが合う人と仲良くしてよい気分でいるほうが楽に違いない。


 仲良きことはよいことで素晴らしいし、和を大切にする意識はとても尊いと思うが、それが無理やりになる時点ですべてが台無しになるのである。だから俺は常に俺のままでいようと思っているし、周りの人間もそのままで構わないと本気でそう思っている。


 その後本当に終電近くなるまでトリーで食べたり飲んだり話したりと楽しく過ごしたが、ふと冷蔵庫にあった魚の鮮度が気になり庭に七輪を出して焼き始めた俺をまた微妙な顔をして見ていた三人のことは解せなかった。


 だが「魚はうまかったか?ペンライトで照らしながら俺の顔がプリントされたうちわで扇いで焼いた魚はさぞうまかったことだろう」とリュートからメールがあり、その時になってあの顔の原因がペンライトとうちわにあったことを悟ったのだった。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

続きは執筆中です。

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