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Go my own way ~無限のパラレル~  作者: あずきなこ


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 「こんにちは~!トリー、お邪魔します!」


  一番乗りはメルだった。

 そしてそう間を置かずにミクも到着し、四人でちょっとだけ飲んで待っていようとモモが持ってきたサングリアという外国発祥の酒を飲んでいた。


 「う~んまっ!これはホントジュース感覚でいくらでも飲めちゃうね!」


 ミクは相当気に入ったようでラベルをガン見し、意外にアルコール度が高いことに驚いていた。こういった甘めの酒は女性が好むようであるが、実は俺もかなり気に入っていて危うくガチで毎日ジュースとして飲み続けるところだった。そしてさすがにこの情報はまだ拡散されていないようである。


 「そうなんだよね。だってシオンなんか一度飲んで気に入ったみたいでお酒だっていうのを忘れて本当にジュースとして毎日飲もうとしていたんだよ?」


 おっと⁉たった今ライブ報告されてしまった。


 「そうなの?でも気持ちはわかるな~!ジュースよりもおいしくてお酒っぽくないからつい日常的に飲みたくなってしまうわよね?」


 メルのフォローが心にしみる‥‥

 俺はサングリアを飲みながら早くリュートが来ないかな?と心の中でリュートカモン!を唱えていた。するとそんな俺に応えるかのようにバッチリなタイミングで彼は現れた。


 「ん⁉なんだお前ら、もう飲んでたのか?」


 「だってリュートがいつ来るのかわからなかったし、四人でぼ~っとしていても仕方がないじゃない」


 そう言いながらモモがリュートにもサングリアを手渡した。

 そこから本格的に皆で持ち寄ったものを並べ、好きな酒を飲みながらの楽しい会話が再開された。


 「ちょうどリュートが来たことだしリュートの話をしよう!」


 ミクがそう切り出し話し始めた。


 「リュートはもうすぐドリセンのデビュー一周年記念ライブを最後に脱退するけど今の心境は?」


 「え⁉マジで俺の話をすんのか?‥‥まあ心境と言われても特に思うことはないが、なんとなくほっとしてはいるかもしれないな」


 「ん⁉リュートはほっとしているの?こうなんかもっと無念だ~とか、悔しい~とかそういうのはないわけ?」


 ミクはいつも通りの感じで突っ込みを入れたがリュートもいつも通りの感じでないと一言で終わらせた。


 「そうなのね?私は全部ではないけれど、たまにリュートが出ている番組は見ていたわ。デビューしたての最初の頃なんかは七人とも張り切っている感じがストレートに伝わってきて、ちょっとかわいいとか思っていたりもしたけど、段々なんというか慣れてきて?適当感も出てそれはそれできっと成長のように捉えられてよかったのかもしれないけど私は少し心配していたかな~?」


 「わかる!私も心配はあったよ。だって時々メンバーの様子がおかしかったよね?テレビで映っているのにそういうのもまったく隠していなかったし、リュートは大丈夫なのかな?って‥‥」


 どうやら俺以外の三人はリュートのことが心配だったようである。

 俺はテレビは見ないし、新聞や雑誌も読まず、ネットも動画サイトで興味のあるもの以外は完全スルーなので親友とはいえ、リュートの芸能活動はほぼ知らない。なので心配のしようもなく、たまに会っていた時に元気がないのを気にして何かと話したことはあるが、帰る時にはすっかり元気で笑顔のリュートだったので心配はしていなかった。


 「リュート?お前のグループはそんなテレビでもわかるくらい仲が悪かったのか?」


 だからストレートにそう聞いてみた。


 「いや。仲が悪いというか、その時の機嫌?で態度が変わって、そういうのをテレビだからうまく誤魔化そうとかまったくなかったし、視聴者としては不快感を持ったり心配?したりするんじゃないか?」


 その後俺たちが詳しく聞くと、デビュー前とその後でかなりメンバー内の関係性が変わっていったそうだ。リュートとエイダン二人だけにオファーがきて、CMに出演した後は特に二人に対する対応が変わり、話しかけても無視されることが多くなった。そして人気とともにやたら撮れ高を気にするようになり、メンバーの一人であるネイサンをいじることで笑いをとって盛り上がらせる方向に舵を切った。リュートはそういうのが引っかかり続けていてメンバーで話し合いもしたが、意見が合うことはなかった。だから最終的に脱退して個人で活動していくことに決めてそれが認められてほっとしているということだった。


 「私もリュートと同じでいじり?とか笑えない。いじりって普通に悪くないイメージで周囲でもよく使われているけど、結局のところ単なるいじめだよね?それがテレビっていう公の場で堂々と映像にのせられて見ている人たちも面白がると思っている時点でもうすでに感覚がおかしいと思う。考えてみればそういう違和感を感じることって多くなっているかもしれない」


 リュートの話を聞いたモモがそう言うとメルもミクも大きく頷いた。


 「確かに!そういえば私はお笑いが大好きでコントとか漫才とか見ていたけど、いつ頃からか暴力的な言動で笑いをとるとか相手を貶すことで笑いをとるコンビがテレビをつければどこにでも出てくるようになっていつの間にかスター扱いになっていてホント驚いちゃう」


 ここから最近のテレビ等の番組を見て感じるようになった違和感の話になった。誰かはサンライズ王国の人間の活躍はほぼ報道されないが、なぜか隣国の人間の活躍やニュースが取り上げられ大きく報道されることと言い、誰かは山火事や熊が出たなど、めったに起きない出来事が一度ニュースとして取り上げられるとなぜか続けて何度もその系統のニュースが報道されることだと言い、誰かは王国議員の不祥事や国民に知られたくないような国民の怒りを買いそうな法案や予算を通すタイミングでものすごく都合よく大地震やら隣国からミサイルが飛んでくると言った。


 そうなのだ。

 俺はもうテレビも新聞も見ていないが、どうやら見ていた頃と何一つ変わっていないようである。俺はだいぶ前から自国、というかこの世のおかしさに気づいていて、同時に何もおかしいと思っていない人の多さにも驚愕したのですっかり他人は他人(ひとはひと)、自分は自分が定着してしまった。


 自分にとってはあまりにもおかしいことだらけでも、他人にとってはそうではないという不思議な世の中である。

 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

続きは1月1日投稿予定です。

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