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Go my own way ~無限のパラレル~  作者: あずきなこ


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 「今更ですが、自分はかなり恵まれているのだと思い知りました。自身の性格上、興味のあること以外には関心を向けることがないので、そのせいで周囲の人たちにはもしかすると迷惑をかけてしまうようなことがあったのかもしれません。それでもここまで自由に好きにやってこれているのはすべて両親や友人たち、自分の周りにいてくれる理解ある人たちのおかげなのだとつくづく実感しています」


 「‥‥‥君が本心からそう言っているのはわかった。だが君は君のままで、ずっとその感覚を大切にしていってほしいと私は願うよ。そしてどうかこれからもモモと一緒にいてほしい。あのラーメン屋での家族の食事以降、多少なりとも外食ができるようにはなったが、それでもまだ緊張は続いているようなのだ。学園での友人たちとの食事でも箸を使わない軽食やカレーなどスプーンやフォークを使用するものに限定していたそうだ。だが君との食事に関してだけはそういうものが一切ないと聞いていた。最初は私たちを心配させないための嘘かもしれないとさえ考えていたが、今日君と話をして嘘ではないと理解した。本当にありがとう‥‥」


 大変だ!伯爵が俺に頭を下げている!

 ほぼ慌てることなどない俺ではあるが、かなり久しぶりに慌てた。

 それでもどうにか頭を上げてもらうことに成功し、恐らく初めて生きた心地というものを味わったと思う。


 そして伯爵の言葉の中で気になったラーメン屋のことを尋ねると、まさかそれもモモから聞いていないとは思っていなかったと驚きながらも当時の話をしてくれた。外食ができなくなった幼い彼女であったが、兄が望んだ誕生日の祝いとしてラーメン屋で家族揃っての食事は拒否することができず、勇気を振り絞って臨んだそうだ。そしていざ箸を使う段になってやはり躊躇してしまい兄がフォークをお願いしたところで店主たちが彼女の傍にやってきて好きなように食べてほしいと箸とフォークの両方を置き、食べ方なんて気にせず自由にゆっくり食事を楽しむよう告げたのだそうだ。その時からあのラーメン屋はモモ、延いては家族にとっての特別な店になり、常連と呼ばれるようにまでなったということだった。


 「そうでしたか‥‥彼女がラーメン屋でバイトをしていると知った時、少し不思議な感じでしたがなるほど。納得できますし、何より自分もあのラーメン屋が好きでずっと通っているのでその気持ちはよくわかる気がします」


 学園在籍中には週一だったバイトも今では週三になっている。

 プロのメイクアップアーティストが開いている教室に通いながらその生活を両立させ楽しんでいる。俺がここに住むようになってからはよく訪ねてきてくれるので俺まで幸せな気持ちにさせてくれている。


 その後も伯爵と少し話をしていたが、突然邪魔をして長居し過ぎたと反省しながら帰ることになった。伯爵は次は屋敷のほうでまたゆっくり話をしようと言って迎えの車に乗り込み我が家を後にした。


 俺は茶碗を片付けながら未だ伯爵との会話が現実であったものなのかとどこか信じられない気持ちでいた。以前、伯爵邸で待っていた時には貴族の当主という俺の中のイメージを膨らませ緊張でおかしな言動になってしまった。それが今日の突撃訪問により図らずも話をする機会を得たが、まさか普通に会話ができるなんて思いもよらなかったからである。


 だが伯爵は確かにこれからも彼女と一緒にいてほしいと口にしていた。

 それだけはどんなに緊張していても覚えているし絶対に忘れない。


 そこで今日は彼女もバイトがある日だと思い出し、早速ラーメン屋に向かうことに決めた。昼前から夕方までのシフトだったはずなのでラーメンを食べながら他のお客さんが引くタイミングを見計らってそのことを伝えようと思う。


 と、そこまで考えて何か大事なことを忘れているような気がした。

 

 「‥‥‥‥‥‥あ‼掃除!そうだよ、今日は掃除の日じゃないか‥‥‥」


 俺はさっと家の中を見渡すと「まだ大丈夫。セーフだ」とつぶやいた。

 そして得意のまっいっかで締め括り、颯爽とラーメン屋へと向かった。


 ちょうど彼女が入った時間に俺も到着し、ギリギリ一番混雑する時間の前であったため、彼女と少し話をすることができた。俺は前置きなしの直球で伯爵からモモとずっと一緒にいるように言われたことを伝えた。


 「?えっと、シオン?伯爵ってうちの父のことでいいかしら?だとしても父がそんなことを言うのかどうか‥‥」


 「もちろんモモのお父上のことだ。さっきうちに来てそう言ったんだ。間違いないよ、それだけは覚えているし絶対に忘れない」


 なぜか彼女は変な顔をしている。

 そんなに俺は変なことを言っているのだろうか?

 そう思っていると彼女が口を開いた。


 「もしかして父は今朝シオンの家に行ったの?事前連絡も無しに?それでいきなり私とずっと一緒にいるように命令されたってこと?」


 しまった‥‥単純な俺はうれしさのあまり前後の説明を省いた言いたいことだけ言いました状態になっていた。


 「あ~えっと、ちゃんと最初から説明してみるか?今朝、モモのお父上は近所での仕事を終え、俺を訪ねてきた。最初は家の土間や縁側の話などで盛り上がり、それから伯爵は名乗られ俺はビックリしてアホ面を晒した。その後質疑応答タイムとなり、最終的にモモのラーメン屋バイトの切欠話も教えてもらった。そして一緒にいて欲しいとのお言葉を賜ったというわけだ」


 俺は完璧な説明ができたとほっとしていたが、彼女は質疑応答タイムの中身とラーメン屋バイトの切欠話からどうやって一緒にいてほしいという言葉に繋がるのかがわからないとその説明を求めてきた。だから俺はできるだけ伯爵との会話を思い出して説明しようとしたのだが、ちょうど店が混雑してきたため後でということになってしまった。


 その後ラーメンを食べ終えた俺が居座るわけにもいかず家に戻ることなった。

 モモがバイト帰りに寄ってくれることになったので少しだけ家の掃除でもしていようかと思い掃除機をかけ始めた。するとかけ始めて割とすぐに吸引力が落ちてしまい壊れたのかと思ってみたがほこりの容量が限界になっていただけだった。


 「‥‥‥‥‥」


 ぱっと見まだいける!大丈夫!と思えたカーペットや床の上には実はほこりが溜まっていたようである。俺はカーペットと床、掃除機に謝罪し、感謝しながら彼女が来るまで掃除機をかけることに夢中になっていた。


 もちろん到着した彼女からは「なんだか埃くさい?」との第一声を頂戴した。

 

 そして大好きな家の掃除を疎かにした自身に今日は同じ境遇をと風呂なしを宣言したところ、「それは単にお風呂に入るのが面倒くさくなったシオンにとって都合がいいだけで、このおうちには何のメリットもないのでは?」と正論が返された上にそんな埃まみれな状態で寝ようとか本気かと呆れられてしまった。


 俺はしばらくは買い物のお供ビジネスを縮小し、掃除をしながら家の中でのビジネスに集中することに決めたのだった。



 



 

ここまでお読みいただきありがとうございました。

続きは執筆中です。

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