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 「リュート、そういえば俺、昨日変な夢を見た。お前が時代劇の将軍で、なぜか俺は悪役だったんだが追いかけられて行き止まりでもうダメかと思って振り返ったら目が覚めた」


 翌日の昼休み。

 いつも通り食堂で定食を食べている時に夢の話をしていた。


 「なんでまたよりにもよって時代劇なんだ?それにどっちかっていうとお前の方が将軍で俺が悪役の方が合ってる気がするけどなんでそういう配役になったんだろうな?」


 「それはリュートの主観であって、シオンからすれば逆だったっていうだけの話なんじゃない?」


 突如として頭上から降ってきた言葉はミクのものだった。


 「またお前か‥‥‥」


 「ちょっと⁉またってどういうこと?」


 「いや、別に‥‥‥」


 「今日お二人はお魚なんですね?私たちはカレーなんです」


 そしてミクの横からメルも顔を覗かせた。

 彼女らは空いていた俺たちの目の前の席に移動し腰を下ろした。

 なんだかんだと他愛もない話をしていると、ミクがはっとして何かを思い出したように皆に問いかけた。


 「今週は一回目の進路相談があるでしょ?リュートはもうほぼ決まっているようなものだからいいとして、シオンとメルは何か考えてる?」


 そう言えば確かにそんな面談が設けられていた。卒業後の進路について担当教師と話し合う個人面談だが三年になると卒業までに三回ほど予定されているのだ。


 「俺は自分が何かの事業主になって収入を得ようと思ってる」


 「まあシオンはそれしかないだろうね‥‥じゃあメルは?」


 「私は家の領地でいろんな意味での独立を目指してがんばるつもり」


 俺はいつも通りぼーっとしながら聞いていたが、メルの領地という言葉に反応し、思わず組んでいた腕をほどいてテーブルの上に手をつき前のめり気味に言葉を放った。


 「メルは貴族だったのか⁉」と。


 そんな俺を呆れた顔で「何を今さら‥‥」とミクが咎めると、今度はそれをまあまあと制したメルが「そうなの。名ばかり貴族よ。だからモモさんのことも知っていたの」と微笑んだ。


 「そうか、なるほど‥‥それで領地で独立ってことはもしかしてメルが家を継ぐってことか?」


 「うん。今のところはその予定よ」


 「すごっ⁉まさかの未来の領主様か‥‥でも独立って一体どこから?」


 リュートがそう鋭い質問を投げかけたところで残念ながら昼休み終了十分前の合図であるベルが鳴り響いた。俺たちはそれぞれのクラスに戻ったが、リュートは質問の答えが気になって仕方がないようだった。

 

 「マジで独立ってまさかこの国からとかそんな壮大な話じゃないよな?」


 「いや?あり得る話じゃないか?彼女この前もなかなかすごいこと言ってたし、今まで以上に興味が湧いてくるな」


 「‥‥‥‥シオン?頼むから俺にもわかるように説明してくれ!」


 いつものお願いポーズをしているリュートの肩に手を置き「また今度な」と告げ席についた。


 そしてその二日後、ついに自身の面談が回ってきた。

 

 俺は臆することなく自身の性格上、誰かに雇われることは難しく望んでもいないため、個人事業主として収入を得る考えであることをはっきり伝えた。教師は苦笑しながらも賛同してくれたが、大学に進学してその間にその事業について深く考え計画することもできると他の道があることも示唆した。


 俺の周辺ではどういうわけか大学への進学を考えるものはいない。

 だが学園内でいえば大学、または専門学校等、進学を考えているものがほとんどである。学園としても就職より進学の方に力をいれているのはあきらか。まあ大人の事情というやつであろう。


 そしてリュートは芸能事務所への所属が決まっていることを告げ、その世界でやっていくつもりだと話したという。ミクはケーキ職人になるため知り合いのところに弟子入りすることを検討中。メルは領地経営を学ぶため、家で父親の補佐として働く予定だそうだ。


 そこでふと、モモはどうするつもりでいるのだろうと思った。

 一言「面談はどうだった?」と、めったにしないメールを送り尋ねてみたところ、まだ決めていないのでワンパスしたとすぐに返信があった。


 「‥‥‥‥」


 くそ。その手があったか‥‥俺は卒業までに三回もある面談をまともに全部受けなくてもよかったのだと今頃になって気がついた。どうせ俺が話す内容などすでに決まっているのだから最後の一回だけで十分だったのだ。そのことをリュートに話すと彼もまた、同じ話を三度もするのは面倒なので次はパスすると息巻いていた。


 それから二週間。

 超特急で仕上げたモモのスーツが届けられたという知らせがあった。

 本当はモモに試着してもらい、細かい部分の調整のため直しを入れたかった両親であるがモモの都合と要望により、とりあえず出来立てをそのまま送ったらしい。


 そして両親の心配とは裏腹に、意外にもピッタリで直しの必要もなさそうだとモモは喜んでいた。週末にはついにその茶会が催されるとのことで、そのスーツを身に着け登城するのが楽しみであるというメールも送られてきた。


 その話を聞いていたリュートが「モモってお前のモデルの件は知っているのか?」と尋ねてきた。俺は多分知っているのではないかと答えた。なぜ多分なのかというと、王都辺りの貴族の間にもうちのカタログは出回っているらしく、その関係でわざわざオーダーしに実家まで訪れるものもいると聞かされていたからだ。もしかするとその貴族の中にモモの家が入っている可能性も無きにしも非ずということでそう回答した。


 だがその茶会があったとされた日の夜。

 「シオンっていつの間にモデルになってたの?」というメールが届いた。


 


 

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