悪役令嬢と呼ばれましても。
「この人です!この人が私を階段から突き落とした人です!」
学園の卒業パーティーで侍女のペリーヌと一緒に何を摘もうかと料理を見ていたら、いきなり絡まれた。
ピンク髪の見たこともない少女が私を指差し喚いているが、全く身に覚えがない。
ペリーヌが怒りを滲ませ、前に出ようとするのを私は片手を挙げて制した。
「人違いではなくて?私は貴女がどなたか知りませんわ」
「どうしてそんな嘘を吐くんですが?先週、中央階段ですれ違った時に私を突き落としたくせに!」
「階段で?」
私が問いかけると同時に男性三人が駆けつけてきた。
皆私に会釈すると、急いで少女を抑えて連れて行こうとする。
「アンネット、こっちに来るんだ。あの方はダメだ」
「ルシエン!なぜそんなこと言うの!だってあの人が犯人よ。確かに階段ですれ違った時に押されたもの」
「馬鹿を言うな!そんなことあり得ないだろ!」
男性陣はこの国の王太子であられるルシエン王子と公爵令息のダニエル、騎士団長の嫡男アントンだ。三人とも顔を青くして必死に少女を宥めようとしているが、もう遅い。会場中の視線が少女に集まっている。
「まあ、『階段ですれ違った』ですって!」
「どうしてそんな嘘を?」
「逆に嘘じゃなかったら、恐ろしいことになりますわ」
卒業パーティーを楽しんでいた少年少女たちが、怯えるように囁く声がザワザワと徐々に大きくなっていく。私はこの突然の事態を他人事のように見ていた。絡まれたのは私かもしれないが、収めるべきは彼らの責だと思ったからだ。
もう少ししたら本日の主賓が姿を現すので、それまでにはなんとかして欲しい。というか彼らもなんとかしようと必死だろう。
と思った矢先、水を打ったようにざわめきが静まった。
「これはなんの騒ぎだ?」
地を這うような恐ろしい声が響き渡り、ルシエン王子を始めとした生徒たちの顔がまさに蒼白を通り越して真っ白になった。彼らが恐る恐る振り返るとサッと生徒たちが両脇に下がり、できた道を堂々と真っ黒な装いの美丈夫がこちらに向かって歩いてきた。この国の最高権力者である国王陛下、征服王マーク・トマス・トウェイン・ソーヤ。
太陽の光のような金髪と海のような深く青い瞳。右目を引き裂くような大きな傷も彼の美貌を損なわせず、アクセントになっている。
「誰が誰と階段ですれ違ったって?」
「陛下!この人です。この女性が私を階段ですれ違いざまに突き落としました!」
少女は再び私を指差しそう言った。ルシエン王子の顔は白を通り越して、もう灰色に近い。
すでに少女から手を離して、ジリジリと後退しているが、そんなことで逃げられるものではないですよ?
「ほぉ、そなた、名はなんという」
国王陛下が悪い顔をしてそう言った。あっ、額に青筋が立ってますわね。
「アンネットです。聖女候補の!」
「聖女候補?それでそなたはレベッカと階段ですれ違ったと言うのか?」
「そうです!悪役令嬢レベッカ・ローレンス!確かにこの人です!」
そこまで聞いて国王陛下は右手を挙げた。
途端に衛兵が集まり、少女ーーアンネットの両腕を掴み連れ去った。
「えっ、えっどういうこと〜!?」
アンネットの絶叫が聞こえなくなって、漸く会場は落ち着きを取り戻したようだ。
私は、その間に陛下に抱えられて貴賓席へと連れて行かれた。
「レベッカ、災難だったな。あの狂人は不敬罪として厳しく対処しておくから安心しなさい」
「陛下、ご心配ありがとうございます。それにしても、あの方は何者なのでしょうか?」
「今の聖女候補の中に問題児がいるとは報告があったが、あれの事だろう。まさか虚言で王妃を貶めようとするとはな」
陛下は呆れたように頭を振ってそう言った。
そう、私はレベッカ・トウェイン・ソーヤ。二年近く前に国王陛下と結婚してこの国の正妃となった。
ルシエン王子の母上は随分前に亡くなられているので、後添いとしてだが、最近懐妊しており陛下の過保護と愛を一身に受けている最中だ。
そんな私はこの二年間、王宮で授業を受けており、学園にはほとんど来ていない。
確かに先週は卒業を控えて来訪したが、その時は身重な私を慮って厳命が下ったのだ。「生徒が誰一人として王妃に近付くことがないように」と。
なので、「階段で」私とすれ違ったなんてありえないし、実際誰もいなかった。
私が通り過ぎた後に叫び声は聞こえたような気がしないでもないけれど。
「あの方は私が王妃であることをご存知なかったようですが、外国の方ですか?」
「いや、この国の孤児院出身で最近聖力に目覚めたという話だ。きっと新聞もまともに読んだことがないのだろう」
「でも聖女候補なら神殿でマナー授業もあるはずですわ」
私が首を傾げてそう言うと、陛下はクスリと笑って私の黒髪を愛おしそうに撫でた。
「今の聖女候補の中に、まともに勉強もせずに隙あらば男子生徒に近付く者がいると報告があった」
「それが『問題児』ですか?じゃあ彼女は……」
「ああ、ルシエンからもいくら注意しても馴れ馴れしく接してくる聖女候補がいると聞いていた。腐っても貴重な聖力持ちで無碍にもできず困っていると……」
「まあ……。それはお気の毒でしたわね」
なるほど、先ほどのルシエン様達三人の表情の意味が分かったわ。これは巻き込まれてお可哀想にというか、運が悪いと言うか……。
「何にしろレベッカが無事で良かった。……身体は辛くはないか?」
陛下は先ほどの恐ろしいお姿が嘘のように甘い瞳で私を見つめて、髪をまた優しく撫でて下さった。
結婚してもう二年。最近ますます甘さが増して来て、私の心を蕩けさせる。
私は何だかもっと甘えたくなって、陛下の胸に寄り添った。
「……そうですね。少し疲れたのでしばらくこのままでいてくださいますか?」
視界の端では学園長が陛下からの祝辞のタイミングを気にしてチラチラとこちらを見ているのに気付いたのだけど、ほんの少しだけ、至福の時間の邪魔はご遠慮いただきますわね。
陛下と私が出会ったのは、私が五歳になったばかりの頃だった。
その瞬間を今でも覚えている。
金糸の施された華麗な衣服に身を包んだ美しい人が私に向かって微笑んでくれたのだ。
「君がレベッカか。なんて可愛い子だ!やっぱり娘が欲しいな!ベンジャミン、この子を王家にくれないか?」
「陛下、冗談はやめてください。うちの可愛い末娘はまだまだどこにもやれません」
宰相であるお父様に連れられて遊びに来た王宮で、その美しい人は私を見てとても優しい笑顔を見せてくださった。
あんまり素敵すぎて、私はポーッとなって、顔がとても熱かったことを覚えている。
「……むすめには、なれませんわ。だって、わたしのおとうさまは、おひとりきりですもの」
たどたどしく、ドレスをギュッと掴みながらそう言うと陛下は私を抱き上げて嬉しそうにまた言った。
「そんな悲しいことを言わないでくれ。何も今すぐじゃなくて良い。うちには君と同い年の子がいるし、将来お嫁に来てくれたら良いよ」
「およめに?おうさまのですか?……うれしい」
まだ小さな私は言葉の意味を理解しきれずに、自分が王様と結婚するのだとその時思い込んでしまった。まさに刷り込みだ。そしてその言葉をずっと信じて、次の再会の時にとんでもないことを口走ってしまった。
次の再会は一年後、私が六歳の時だった。
その日、私は婚約の顔合わせだと言われて、目一杯お洒落して臨んだ。
だって一年前の言葉を信じていたから、私は王様と婚約しているつもりだったのだ。「大きくなったらお嫁に」と言われて、六歳で大きくなったからお嫁に行くのだと信じていた。今考えると子供の勘違いとしても恥ずかしすぎるのだけれど。
「王様!」
私は陛下を見つけると駆け寄った。一年前と寸分違わずとても美しく、逞しい姿に私は初めて会った日が昨日のことだったように感じたのを覚えている。
「レベッカ!ますます可愛くなったな!」
陛下は駆け寄る私を満面の笑みでさっと抱き上げてくださった。
私は素敵すぎるその姿に頬を染めて言った。
「レベッカは王様のお嫁さんになる日を待ち遠しく思っておりました。どうか末永くよろしくお願いします」
そして笑顔で頷いて下さると、その美丈夫は期待していた首肯ではなく疑問を返してきた。
「えっ?」
「!?王様はレベッカをお嫁に貰ってくださると約束くださったでしょう?レベッカは大きくなりました。だからもう王様のお嫁さんに相応しいと思いますの。それで、それでお城に呼んでくださったのでしょう?」
私は思っていた反応と違ったので必死にそう言った。よく覚えていないが涙が滲んでいたのではないかと思う。だってあやす様にその後こう言われたからだ。
「ああ、よしよし、良い子だね。大丈夫だよ。約束は覚えているよ。でもレベッカはお嫁に来るにはまだまだ小さいから、もう少し大きくなってからだよ」
「……もう少しですか?いつまで待ったら良いのですか?」
「うーん。この国では女性は十六歳になったら結婚できるけど、焦る必要はないよ。それよりもっと大きくなってからでも大丈夫だよ」
「……でも、それでは王様をお待たせしすぎるのではないですか?」
「子供はまだまだ学ぶことが多い。たくさん勉強して素敵な大人になって、たくさんの人と会ってそれから色々な未来を考えて道を選べば良いよ」
「……分かりました!レベッカはこれからたくさん学んで、王様に相応しい素敵な大人になりますわ!どうか楽しみに待っていてくださいね!」
「……ああ、楽しみにしているよ」
その日、家に帰って母に叱られた。
「レベッカ、あなたの結婚相手は国王陛下ではなく、ルシエン王子殿下ですよ!本当にもう、今日は婚約の顔合わせだったのにあなたのせいで台無しになったわ!なぜそんな勘違いをしたの!?」
「王子殿下!?嘘よ!王様はあの時『将来お嫁に来て』とプロポーズしてくださいましたわ!」
私がショックで泣きながらそう言うと、お父様が取りなすように言った。
「いや、あれはそういう意味ではなくて、陛下の息子さんの、ルシエン殿下のお嫁にという意味だよ……」
「そんな!……嘘ですわ……。だって今日だって『約束は覚えている』と仰っていましたわ……。それに私、王様が、王様じゃないと……、」
そのまま大号泣した私を母は呆れたように見つめ、父は困ったようにあやし続けてくれた。
泣き疲れた私は、翌朝ある決意をした。
ルシエン殿下との婚約は決まりじゃないからまだ私が陛下のお嫁さんになるチャンスはあるのだと。十六歳になったら「陛下のお嫁さん」になるために、勉強を頑張り、美しさを磨く。そして、絶対に陛下に「結婚してください」と言わせてみせると。
それから私は勉強やお洒落をとても頑張ったけれど、隙があれば父について陛下に会いに行った。
陛下の邪魔にならないように、ごく短い滞在時間で、でも確実に陛下の印象に残るように。
「王国の太陽にご挨拶申し上げます。今日はケーキを焼いて参りましたの。休憩時間のお供になったら幸いです」
「いらっしゃい。いつもありがとう。レベッカも一緒にお茶をいただこう。今はどんな勉強をしてるんだい?」
私は、勝手知ったる執務室のソファで、ここぞとばかり陛下に一番近い席についた。座り方一つにしても自分が最も美しく見えるように、最新の注意を払って。
「今は王国史と領地経営学ですわ。マナー授業は先月全て終えましたから、次は外国語の先生を探しておりますの」
「レベッカは頑張り屋だな。えらいぞ」
「ふふふ、陛下の『お嫁さん』になるためにはこれぐらい当然ですわ」
「……いやレベッカはこんなおじさんにはもう勿体無いよ」
「そんなことありませんわ!陛下はこの世で一等素敵な方だからレベッカの精進はまだまだ足りません。十六歳までに陛下に相応しい女性になれるようまだまだ努力が必要ですの!」
そういうと陛下は困ったように笑って決まってこう言った。
「……レベッカは今でも十分素敵な子だから、頑張りすぎないで。それに世界は広いよ。自分の未来を狭める必要はないからな」
その頃の私は、そんな言葉の裏に隠された牽制を敏感に感じ取っていたから、その言葉が出るとすぐに話を逸らした。
「それよりも今回のケーキはいかがですか?陛下がお好きなナッツを多めに入れてみましたの。香ばしいと家でも評判でしたわ」
「そうか。レベッカのお菓子は本当に美味しいから嬉しいよ。いつもありがとう」
そうして優しく笑ってくださるから、私はこの人から目を離すことができずに、その後成人まで過ごすことになる。
十五歳の誕生日、私は一大決心をした。今年こそ、改めて陛下に想いを伝えて、十六になったら本当にお嫁にもらってもらうのだと。
でもその決意はなかなか実行に移すことができなかった。
何故なら北方で反乱が起こったからだ。
北方は二十年ほど前までは違う国で、よく国境を跨いで賊が我が国を荒らしに来ていたそうだ。
それを僅か十五歳で征服したのが当時立太子前だったマーク・トマス陛下だった。
陛下の右目の傷はその時についたものだそうだけど、征服王という異名もそれから呼ばれるようになったものだ。
陛下は北方の反乱を収めるために、再び自ら軍を率いて行った。
反乱はすぐに鎮まったそうだけれど、今は北方の地の環境改善に取り組んでいるという。
もう三ヶ月も北方に行ったきりでお戻りはいつになるか分からない。
私はもどかしい思いを抱えて眠れぬ夜を過ごした。
いくら平和になったと聞いても、陛下がとてつもなく強い方だと聞いても、心配で心配でしょうがなかった。彼の方に何かあれば私は生きていくことができないだろうというぐらいに陛下への想いは大きいものになっていたのだ。
「どうか陛下が無事でいらっしゃいますように。そして一日も早く帰ってこられますように」
毎日祈り続けた結果、あと半年で私の誕生日という頃になってようやく陛下がお戻りになられた。
「陛下!」
「レベッカ!」
凱旋された陛下を王宮の門で出迎えると、陛下が驚いたように、だけど嬉しそうに私を見てくださった。
「……よくぞご無事でお戻りくださいました……」
「……レベッカは随分痩せたな。今にも折れそうだ」
馬から降りた陛下は、私の髪を優しく撫ぜると、心配そうに顔を除いた。
「だって、心配で、お会いしたくて、でも帰ってくださらないから、私、私、……」
言うつもりもなかった愚痴のような言葉がこぼれた後、涙が溢れた。
陛下は隠すように私の頭をその肩に寄せると、
「……俺も会いたかったよ」と呟いた。
翌週、凱旋のパーティーが開かれて、私もとびきりのドレスを着て参加した。
今日こそ想いの丈をぶつけるのだと、気合いを入れ直して。
だけれど、多くの貴族が陛下に群がってなかなか近付くことができない。
焦りを感じた私は一度落ち着こうとバルコニーに出た。
なんて言おうかしら。やっぱりストレートに愛を伝えるべきかしら。それとも子供の頃のように甘えるように強請ったほうが向こうも断り辛いのではないかしら?
そんなことをぶつぶつと考えると不意に名を呼ばれた。
「レベッカ!」
振り返ると愛しい人がそこにいた。
「姿が見えないから探したよ」
「陛下……、お手を煩わせて申し訳ございません」
「そうだな。君はこの国で最も高貴な女性なのだから、一人になっちゃいけないと普段から言ってるだろう?……北にいる時も心配でしょうがなかった。……会えなくて不安で、いつも会いたくてしょうがなかった」
「陛下、私もずっと会いたくて、本当に無事なお姿が見られて、私……」
また涙が溢れそうになる。
陛下はその溢れた雫を吸い取るように口付けた。触れるか触れないかの優しいキスだった。
不意打ちにびっくりして涙が引っ込んだ私の手を陛下は両手で包み込んだ。
「約束を覚えている?」
「……『大きくなったら』ですか?一日も忘れたことなどございませんわ」
そう答えると陛下は安心したように破顔して言った。
「こんなおじさんは君に相応しくないと分かっているけれど、でもどうしても他の誰にもレベッカを取られたくないんだ。ルシエンでも許せない」
「本当に?私の気持ちは初めてお会いした頃からたった一人の方にしか向いておりませんわ。今更他の方にと言われましても、目を向けるのは不可能なぐらいに釘付けですのよ」
私は真っ直ぐ陛下の青い瞳を見ながら言った。
私の想いが通じていたのだと彼の目を見てよく分かった。
「レベッカ・ローレンス嬢、どうか私マーク・トマス・トウェイン・ソーヤの愛を受け取り、この国を見守る月となってくれ」
「……」
私が、返事をできずにいると、陛下は眉根を寄せて傷ついたような顔をした。
「やっぱりこんなおじさんの元に嫁ぐのは嫌になったか?でももう俺は君を他所にやることはできないんだ。必ず幸せにしよう。君が望むものは全て手に入れて捧げよう。だからイエスと言ってくれないか?」
「……違いますわ。私、今日は私から告白しようと息巻いてきましたのに思いがけず先を越されて、ショックを受けているのですわ……。プロポーズの言葉も色々考えてきたのに、陛下はずるいですわ!不意打ちなんて!」
「えっレベッカもプロポーズしてくれるつもりだったのかい?それも今日?」
「そうですわ。何度も練習して、だけでやはり上手く伝わる気がしなくて何度も何度も言葉を選び直して!」
「じゃあ、レベッカの気持ちは変わってないんだな!」
「もちろんです!私の陛下への愛は不滅ですもの!」
興奮した私がやや大きな声でそう言うと、陛下は満面の笑みを浮かべて私を抱きしめた。
「俺もレベッカを愛してるよ。娘としてじゃなくて妻として君が欲しい。レベッカ、十六になったら俺のお嫁さんになってくれるかい?」
「嬉しい……。やっと私、貴方のお嫁さんになれるのですね。どうか末長くよろしくお願いします」
それから、しばらくして正式に私たちの婚約が発表された。私達を一番近くで見守ってきたお父様は、何だかんだで一番喜んでくださって積極的に動いてくださった。
婚約から一年後に式が行われる予定になって、その前に私は学園に入学することになった。だけどお妃教育を優先するために入学式以外では殆ど学園に行くことはなかった。
同い年のルシエン殿下とも学園はもちろん王宮でもあまり顔を合わせる機会はなく、結局彼がその聖女候補とどのような関係だったかは私には知る術はなかった。そもそも興味もなかったのだけど。
結婚式は盛大に執り行われて、国内はおろか諸外国でも大々的に報じられた。
歳の差が問題視されるのではと少し心配だったけど概ね良好な反応でほっとした。まあ、征服王が選んだ結婚相手に文句を付けられる人はあまりいないだろうけど。
そうして、私はこの国の王妃となり、先日めでたく懐妊も果たしたのだった。
陛下は男でも女でもどちらでも良いと言っているけれど、私はきっと女の子が産まれてくるだろうと確信している。
目下の心配は彼が私よりも産まれてきた娘に夢中になるのではないかということだが、それはそれで幸せなことかもしれないと、今はこの子の顔を見る日を楽しみにしている。
了
陛下 38歳、レベッカ 18歳の20歳差設定。陛下の黒い服はレベッカの髪の色。
いつもお読みくださり、ありがとうございます。
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