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ある魔導士の帰還  作者: 勝 ・ 仁
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恋人として、家族として、そして母として



 モルナ「このデクシスは私の物なの、気安く触らないで!」


事の発端は、空腹が満たされたスクナが、モルナと話していたデクシスを見つけて

絡んで来た所にアリシアまでもが参戦したのが始まりだ。

話の流れは、いきなり、べたべたして来たスクナに対して、逃げたいデクシスは、

無意識のうちにモルナの庇護を求めてしまったらしい。

デクシスとしては女の子相手に力で解決する訳にもかず、かと言って言葉で上手く

説得する事も出来ない。

八方塞がりのデクシスは助けを求めて、泣きそうな目をモルナに向けてしまった。


ここで、いっきにモルナのスイッチが入った。

普段は、やや、よそよそしい、ツンデレ気味のモルナが、デクシスを自分の腕の中

に掻き抱いて、スクナから引きはがした。

昔から、モルナが好きだったデクシスは、その状況の幸福感に 口元が緩む。


それを見ていたアリシアが、自分とスクナの胸を確認したあとに、モルナの豊かな

胸を見て愕然とした。

スクナもアリシアも、まだまだ子供体型なのに対して、モルナは既に女性としての

容姿を手に入れつつあった。

原因はアルが異空庫に抱え込んでいる、超高カロリーの食材だ。

いつもアルと食卓を囲むサナ達は、その食材のおかげで、本来の年齢よりも2~3歳

は速く成長している。

デクシスだって少年から青年へと、変貌を遂げつつある。

同じ年なら、その差は歴然だ。


アリシア「見て下さい!ママのあの胸!私だっていずれはバインバインになります

     よ、だってまだ十歳だもの、私達!」

 スクナ「いや、あたい、もうすぐ十五歳なんだけど………」

アリシア「えっ?」

 モルナ「うそっ」

 ユリア「あら、ここまでかしら」

カタリナ「流石に、もう、たいして成長は」

  サナ「ええっと」

デクシス「………………………ぺったんこだ………………」

    「あ~、言っちゃったか」

 スクナ「・・・余計なお世話だ ――――――――――(怒)!」


以後、暫くの間、小さな嵐が、このテーブルの周辺を暴れまわった。

そして、捕獲、された。


  直也《ご飯を粗末にする子は許しませんよ》

 スクナ「あい、ごめんなさい」

  直也《あなた達も、なだめる方に回って下さい、いい大人なんだから》

カタリナ「すいません、つい」

 ユリア「ちょっとだけ、からかいたくなっちゃって」

  直也《全くもう》


しかし、この騒ぎでデクシスとモルナの関係も大きな筋道が付いた。

お互いに、好意を持っている事にをハッキリ認識したが、同時に、ある危機感を感

じる事になった。


ユリアの言っていた、一夫多妻問題が目の前に現実として現れたからだ。

もしも、このままなら、今回の様なトラブルは、常にデクシスに付き纏う。

それに、もし、自分の知らない内にそんな事が起こるぐらいなら、いっそ自分主導

で管理してしまった方がいい。


 モルナ「もし、デクシスの妻になりたいのなら、まず、私を納得させて」

 スクナ「納得させれば、デクシスとつがいになれるんだな」

 モルナ「違うわよ、納得したらデクシスへのアプローチを認めるだけ、後は本人

     次第よ」

 スクナ「誰がそんな面倒な真似をするかよ、お前もそうだろ?」

アリシア「いいえ、私はそれで、構いません」

 スクナ「何でだよ!」

アリシア「貴方に認められると言う事は、ここにいらっしゃる国王様や重鎮様方の

     信用を得られたと思って良いのでは無いかしら」


中々良く、周囲と状況を把握している。

この辺りは,さすが貴族の娘と言う事なのだろう。


    「ああ、そう思ってもらって構わない」

 ユリア「もちろん、私はモルナの判断を支持するわ」   

  直也《当然、俺もだ》


今まで、子供達には直也が時間の許す限り、高度な教育を与えて来た。

それも、ただの教育などでは無い。

あの直也が出し惜しみせず、与えたのだ、思考の深さも意識の高さも、そこいらの

成人等よりも、よっぽど高い。

特に、大きな決断をする時は、必ず自分が冷静かどうか、立ち戻ってでも考えろと

教え込んでいた。


アリシア「ならば、私は認められる様に、ここに残らせて頂きます」

 クイナ「ちょっと、あんた」

アリシア「良いでしょ、ママ」

カタリナ「どうせ、駄目だと言っても聞かないでしょ、構わないわ」

アリシア「ありがとう、ママ」

カタリナ「と、言う訳で、どうぞ皆様こき使ってやって下さい」

アリシア「うげっ」

カタリナ「な~んにもしないで、済むわけないでしょ、きちんと働きなさい」

アリシア「あい………」

 ユリア「そうね、読み書きは出来るでしょうし、事務仕事かな」

  直也《冒険者ギルドは万年人手不足だからな、丁度いいだろう》

    「で、お前はどうするんだ?スクナ」

 スクナ「わ、わかったよ、あたいもそれでいい」

    「諦める選択肢もあるぞ」

 スクナ「絶対に、イヤ!」


結局は、ユリアの考えていた通りの答えをモルナは引き出した。

デクシスが認めた女をモルナが受け容れるのではなく、モルナが認めた女だけが

デクシスに求愛出来るのだ。

モルナが認め、更に、デクシスが受け入れた者だけが妻になる事ができる。

ただ、この方式だと、結局、伴侶はモルナ一人だけ、と言う可能性もあるが、本音

は、それでも構わないと思っていた。


本当の狙いは、一夫多妻を是とする国だとして宣言する事だ。

その後、デクシスが一人も受け入れ無くても、いっこうにかまわない。

言っては悪いが、デクシス達は特別、つまり家族なのだ。

だから、ユリアも直也も、山脈要塞には、誰ひとり立ち入らせない。

足を踏み入れる事が出来るのは、後世に於いて゛始まりの子供達”と呼ばれたサナ達

八人のみだ。



デクシス「ごめんよ、俺のせいで」

 モルナ「気にしないで、言ってみれば私も同類だし」

デクシス「同じ所なんて、一つも無いぞ」

 モルナ「そういう意味じゃ無いわよ、でもこれで良かったのかな」

 ユリア「十分よ、それに、これでデクシスに絡む女を粗方、排除できるわ」

    「忘れないでくれ、モルナ達は俺の妹、そしてデクシス達は弟だ」

  直也《俺達はモルナが不幸になるぐらいなら、国なんて要らないんだよ》

 モルナ「はい!」

 ユリア「あ、でもサナは、お嫁さんだから、妹じゃないわね」

  直也《サナは、もうすぐ成人だからな、妹から花嫁に昇格だ》

  サナ「あうあう」


その後、夕食はそこかしこで、宴会に移行したまま夜は更けて行った。

子供達が寝た後は、大人達の社交の場だが意外にも、こういう時にこそ友好な関係

や交渉が出来上がったりする。


カタリナ「娘の事、よろしくお願いします」

 ユリア「ええ、任せて貰って構わないわ、でも、あなた達は良いの?」

カタリナ「実は、最初からそのつもりだったので、渡りに船でした」

 ユリア「なんでまた」

カタリナ「建国した途端に聞いた事も無い親戚やら、大商人が見合いの話を」

 ユリア「そういう連中って、どこにでも湧いてくるわね」

カタリナ「おかげで、家のバカ亭主がいつ切れるか、もう、頭が痛くて」

 ユリア「アルに聞いたわ、面白いオッサンだって言ってたわ」

カタリナ「それに、どうも周りがキナ臭くて」

 ユリア「…………暗殺者?」

カタリナ「ええ、でも依頼者までは掴めてません」

 ユリア「それで、この国に?」

カタリナ「はい、打算です、この国なら大丈夫だろうと思って」


彼女も母親なのだ、自分の娘の為ならば何でもする気でいる、それも命に係わる事

なら尚更だ。

例え離れ離れにになっても、この先、何年も会う事が出来なくとも、娘が生きて居

さえすれば、満足なのだろう。

だが、それでアリシアは幸せか?カタリナは、ガルムは幸せか?親子を引き離して

一体誰が幸せになれると言うのか。

暗殺者などといった連中に狙われたら親子が共に暮らす、そんなささやかな願いも

諦めてしまうのが、この世界の常識なのだろう。

だが、そんな理不尽が死ぬほど嫌いな人間が居るのだ


 ユリア「ブラン、直也とアルを呼んできて」

 ブラン《イエス・レディ》

 ユリア「気に入らない」

カタリナ「あ、あの」

 ユリア「そんな、クソみたいな連中の存在が気に入らない」

カタリナ「ええと」


国王とその半身を当たり前のように呼びつけるユリアこそ、この国の女王では無い

のだろうか、と、カタリナは割と本気で考えていた。

そして、程なくしてやって来た二人は、ユリアの説明を聞いた途端に纏う雰囲気が

酷く剣呑な物に変わった。


 ユリア「ナオなら何とか出来るでしょ」

  直也《………………そいつらを殺したら、政治的な悪影響は?》

カタリナ「ありません、元々、影みたいな存在ですから」

 ユリア「せいぜい、依頼者が困るぐらいかしら」

    「そんなゴミに遠慮する必要は無い」

 ユリア「当然ね、自滅するなら諸手を上げて喜ぶわ」

  直也《………わかった、帰国する時に俺が同行しよう、ユリアは補助を頼む》

 ユリア「了解よ」

    「あれ、俺は?」

  直也《国王が、ふらふら出歩いてどうする、留守番に決まっているだろ》

    「え~、差別だ、えこひいきだ」

  直也《やかましい、大人しく留守番してろ》

 ユリア「やった~、お出かけ、お出かけ」

カタリナ「だ、大丈夫かしら………」


数日後、塩を満載した馬車を率いたカタリナ達の商隊と合流したが、この時ユリア

の異空庫は全て直也が準備した機材で埋め尽くされた。      

今回はユリアが親善大使として、ガルム独立国を訪問する筋書きになっているので、

16式ではなく、一度公国を旅した事のある例の特別仕様の馬車を使っている。

同行者は直也とルージュの二人?だ。



     《さあ、出発しようか》


直也の掛け声で、商隊はゆっくりと動き出した。



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