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ある魔導士の帰還  作者: 勝 ・ 仁
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商隊と同盟とガルムの娘



「私達はガルム独立国からの商隊です、通門の許可を頂きたい」


先頭の馬車の御者席から、丸みのある熊人族の男が声を門番の老人Sに掛けた。


ラモン「おお、聞いとる、聞いとる、えらく早かったのぉ」

 レグ「いったい何台おるんじゃ」

ヨセフ「まあええ、開門!」


音も無く、左右に開いてゆく巨大な門を見て、熊人族のチェスターは目を見開いて

驚いたし、羊人族のクーパに至っては殆んど白目だ。


チェス「どうやって開いてるんだ、この門は………」


多くの国や領地の正門は、開閉に奴隷を使っているのが普通で、この門の大きさで

なら、最低でも二十人以上の奴隷が必要だろう。

それが、あの老人が声を掛けただけで、この、鋼鉄製の門が動いたのだから、頭が

追い付かない。


クーパ「私、生きて帰れるんでしょうか………」

チェス「最初に、驚異的な魔法を見せつけて、交渉で優位に立つつもりだろう」

クーパ「さすがは、魔導士が国王な国と言う事でしょう」

チェス「しかし、私もこの道40年の古参商人、一度は驚いたが、二度は…………」


チェスの言葉は正面の庁舎と、停まっているいる数台の機動戦車、そして何より、

玄関先で、今か今かと待ち受ける、直也とブランを見て、何処かに消えた。


 直也《やあやあ!ようこそ!ガルム独立国の皆さん!お待ちしてました!》

チェス「あ、あの、よ、よろしく、です」

ユリア「落ち着きなさいよ、皆さん、驚いてるじゃない」

 直也《オリハルコン、オリハルコンを持っていらっしゃったんでしょ》

チェス「え、ええ、あと、アダマンタイトも少し……」

 直也《素晴らしい!ぜひ、売ってほしい!》

ユリア「ごめんなさい、この人、ずっと楽しみにしていたのよ」


この世界で、初めてミスリルを見て心が踊った。

元素の解析器具など無い世界、でも知識はある。

どんな特徴があるのか?どんな特性があるのか?実証実験何度も繰り返しては、

新しい使い方を発見する。

それが、如何に楽しい事か。

その、未知の金属が、今回は二種類も手にはいる。

興奮せずにはいられなかった。

一刻も早く、その金属を手にしたい、だが、その希望は直ぐに打ち砕かれた。


チェス「あの、その前に、お会いしたいと、おっしゃる方が」


言い終わらぬ内に馬車の扉が開いて、一人の女性が降りて来た。

身長は直也より低いが、ユリアより10㎝以上高い、恐らく180㎝は有るだろう。

礼装用の非常に簡易な鎧を身に纏っている様は、非常に堂にはいっていた。

つまり、武人なのは、明白だ。

しかし、出て来た名前が問題だった。


「始めまして、ガルム独立国家盟主、ガルム・ファンブッシュの妻、カタリナ・

 ファンブッシュです」


驚いた事に、一国の王妃が、単身、乗り込んで来たのだ。

兵士の護衛は、公式行事等の場合の五名以外は認めない、直也の出したその条件を

丸ごと飲み込んで、自ら身の危険を無視したのだ。

これに対して、こちらも、それ相応の対応を取らねば、失礼だ。


 直也《私の名はナオヤ、まあ、国王補佐とでも思ってくれ》

ユリア「ユリア・ラインゴールド、黒の魔導士の第六席よ、財務担当かしら」


相手の表情が、緊張で、さらに硬くなる。

チェスもカタリナも、直也だけでも、いっぱいいっぱいだった。

事前にシュゼムから、詳細を聞いていたから何とか耐えられていたが、ここに来て

魔導士まで出て来ては、些か荷が重い。

だが、その場の固まってしまった空気を、一人の少女が蹴り飛ばした。


   「ねえ、お母さん、私のつがい候補ってどこ?」

ユリア「えっ、なに?だれ?」

 直也《ええと、一体、なに?》


10歳ぐらいの、狼獣人の少女は長い茶色の髪を後ろで束ねていた。

やや、つり目に長いまつ毛、口から小さな白い牙をのぞかせて、興味深そうに周り

を観察していた。


カタリナ「アリシア!あなた、挨拶もしないで何やってるの!」

アリシア「あっ、忘れてた、あたしアリシア、10歳、よろしくお願いします」


ニカッと屈託なく笑うと、勢いよく頭を下げて挨拶をした。

物怖じしないその姿に驚いたが、子供の特権だろう。


  直也《………おてんば、かな?》

 ユリア「おてんば、ね」

 チェス「おてんばで、ございます」

 クーパ「間違いなく、おてんばです」

カタリナ「大変、申し訳なく」

アリシア「?????」


場がグダグダになったが、おかげで変な緊張感も何処かへ吹き飛んでいった。


  直也《同盟の話だから、取敢えず、執務室に行こう、ブラン》

 ブラン《イエス・マスター》

  直也《アルが果樹園に居るはずだから、呼んできてくれ》

 ブラン《イエス・マスター》

 ユリア「ノワール、お茶の準備を」

ノワール「イエス・レディ」


いきなり現れた二体のメイドにガルムの連中が目を白黒させている。


  直也《驚かせて申し訳ない、うちは、まだ人手不足なんだ》

カタリナ「い、いえいえ、お気になさらずに、おほほほほ」

アリシア「……………………ママ……上品ぽくてキモイ……」


  ―――――――――――― ガンッ ――――――――――


アリシア「いった ―――――――――――――――――――― っ」

カタリナ「おほほほほほほほ、な~にを言ってるのかしらアリシアちゃん」

  直也《……………………………どこかで見たような光景が》

 ユリア「おほほほほほほ、なんの事かしら?」

 チェス「ガタガタガタガタ」

 クーパ「ブルブルブルブル」

  直也《まさかの同類…………》


どうも、この世界では、余計な一言は拳骨とセットになってるらしい。

恐ろしい法則である。

その後、ユリアとカタリナの距離が妙に近づいた気がするが、気のせいだろうか。

気のせいであってほしい、直也は、わりとマジでそう思った。

主にアルの頭蓋骨の安全の為に。


    「直也から、聞いてる、五分の同盟の件だろ、うちは承認する」

カタリナ「ありがとうございます、あと、戦時下条項ですが」

    「民を虐げないと誓うのなら、軍事同盟を締結しよう」

カタリナ「その条件で問題有りませんが、宜しいので」

    「ああ、はっきり言って、あの2国には酷い目にあったからな」

カタリナ「ありがとうございます、助かります」

    「あのおっさんの嫁さんが直接来たんだ、これぐらいはさせて貰うよ」


はっきり言って、独立国と言っても国力は他の2国と比べてかなり低い。

人口的にも経済的にも4:4:2の比率でしかない。

今は公国随一と言われたガルムの武力によって均衡を保っているが、もし、それが

失われれば、滅亡は目の前だ。

今もクロトンの街で三つ巴の戦いが繰り広げられているが、このまま長引けば体力

の無いガルム軍は不利になる一方だ。

だが、もし、この国と同盟を結ぶ事が出来れば、戦況は有利に動く。

たとえ直接的な支援で無くても、背後にこの国が控えているという事実は、相手に

とっては、かなりの重圧になる。

停戦も夢ではない。

だからこそ、カタリナは自分でこの国に足を運んだのだ。


ユリア「では、書面をしたためましょう、少し時間を頂戴」


こういう書類関係は、直也かユリアさんに任せてある。

あとは、出来上がった証書に俺が記名するだけ、それまでは、軽い会話でも。

そう思ったんだよ、その時はね、でも、何故か会談中は、俺の後ろにサナとモルナ

がずっと、控える様に立ってるんだよ。


 モルナ「アル様、あの雌は何者なのでしょう」

アリシア「あたしは、デクシスと言う名の未来の旦那様を見に来た美少女さ」

 モルナ「最近の狼人族は、幻覚と妄想と言う病が流行っているのかしら?」

アリシア「現実が見えてないおばさんは、引っ込んでてほしいな」

 モルナ「身の程知らずの小娘に言われたく無いわ」

アリシア「なんですって!」

 モルナ「なによ!ドロボウ猫!」

アリシア「猫じゃない!オオカミだ!」

 モルナ「ば~か」

アリシア「ブ~ス」


どうも、両者とも悪口の在庫は少ないようで、あっと言う間に単語の羅列になった

が、かと言って争いが終わる訳でも無い。


  サナ「アル様、この子って、あの砦の隊長さんの娘ですか?」

    「そうそう、あの思い込みの激しい人」

  サナ「そっくりですね、さすが父娘」

    「だな~」

アリシア「えっ、うそ、ちょっ、マジで?」


いきなり、アリシアが、口論から離脱した。

どうも、父親と同一視された事に耐えられ無くなったらしい。


カタリナ「申し訳ありません、どうも父親と同じで直線的な娘でして」

アリシア「ママ!じゃなかった、母上!」

    「ああ、別に謝らなくてもいい、ちょうど証書も出来た事だし署名を済ま

     せよう」


別室から直也とユリアが書類を抱えて戻って来たので、二部づつ作成して、互いに

一枚づつ持ち、ここに同盟は締結された。


 ユリア「処で、随分にぎやかだったみたいね」

    「ああ、デクシスの取り合いだ」

 モルナ「ア、アル様、私は、その」

アリシア「あ、要らないなら私が貰うよ」

 モルナ「あげないわよ!」

 ユリア「あはははは、デクシスくん、モテモテじゃない」

    「で、肝心のデクシスは、どこ行ったんだ?」

  直也《デクシスなら、ジューヌを連れて街道の見回りにでてるぞ》

    「うん?出会わなかったのかな?」

  直也《今日は北の街道だからな、反対方向だ、まあ、夕方には帰るさ》

 ユリア「なら、帰りを待って、デクシス本人に決めさせれば良いじゃない」

アリシア「あたしは構わないわよ」

 モルナ「受けて立とうじゃない」

    「ああ、なんかとんでもない事になりそうな」

  直也《ユリア、あんまり、遊ぶなよ》



 ユリア「遊んでない、私ね、デクシスは、沢山の妻を持っても良いと思うの」

    


          爆弾が投げ込まれた



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