表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある魔導士の帰還  作者: 勝 ・ 仁
80/169

一撃



     「ぜひ、剣での立会をお願いしたい」


バルガの馬鹿がそんな妄言を吐き出した。

一体、何を考えているのか、以前、デクシスの剣とは立ち会うな、意味がないと

言っておいたのに、その親玉の直也になぜ、手合わせを求めるのか。


   「お前、俺の言った事を覚えていないのか?」

バルガ「覚えています、ですが、強くなる可能性を捨てきれません」

   「だからそう言う剣術じゃ無いと言っただろうが!」

バルガ「こんな機会はそうそう有りません、無理にでもお願いする」


どうしてこいつは話を聞かないのか、もう、ぶん殴ってしまおうか。


   「何度言ったら………」

 直也《まあ、良いじゃないか、立ち会って欲しいんだろ、構わないさ》

バルガ「有難い、よろしくお願いする」

 直也《じゃあ、今からやろうか?外に出よう》


バルガは喜んで、いそいそと、先にたって、表に出て行った。

その後を、直也が、殊更ゆっくりと付いて行こうとした。


   「お、おい、直也」

 直也《うん?どうかしたかい?》

   「………殺すなよ」

 直也《まあ努力はするが、どうだろうなあ、あと子供達には見せるなよ》

   「やっぱり、そんな場面になるのかよ!」


全く穏便に終わる気配が感じられない。

不味い事になりそうだと思い、急いで異空庫からポーションを取り出した。


レゴス「あの、すいません、アルセニオス様、兄が失礼を」

   「そんな事は良いから、これを持って待機しとけ」

ファラ「ポーションを?どうして」

   「理由はいい、使うのを躊躇するなよ、どうなるか解らんぞ」

シャラ「兄貴ぃ~」

   

日が僅かに傾いた、夕暮れには、まだ早い空の下で二人が対峙していた。

バルガは既に剣を抜いて、はす斜めに構えているが、対する直也は後ろに手を組

んだまま、ただ真っ直ぐたっているだけだ。

勿論、手には何一つ持ってはいない。


   「もう一度言うぞ、バルガ、手合わせした所で得るものは何も無い!」

バルガ「いいえ、自分は何かを感じ取ってみせます」

   「無理だって言ってるだろう」

バルガ「問題有りません」

   「はあ、もう好きにしろ、俺は知らん」


説得を諦めた俺は、庁舎の入り口で遠巻きに見ているみんなの元に戻った。

一見、真摯に強くなろうと努力する男に見えるが、それは幻覚だ。

何度も断っているのに、相手の都合など考えもしないで、自分の希望を押し付け

ては、相手が折れるまで懇願する。

子供なら可愛いが、大男の執着など、迷惑極まりない。

それを理解出来ないから、直也がお灸をすえる気になったのだろう。


アイラ「あの、大丈夫なんでしょうか、あの人」

   「わからん、直也が手加減を間違わない事を祈るだけだ」

アイラ「どうして、男ってこうなんでしょう」

   「いや、あいつだけだと思うぞ」

レゴス「どれぐらい、差が有るのですか?」

   「地竜とトカゲ以上の差がある」

ファラ「そんなに………………」

   「まあ、上手く行けば、骨の数本で済むだろう」 

アイラ「見限ろうかしら………………」

シャラ「……止めたげて」  


それから、直也が開始の合図を求めてきた。


「この銀貨が落ちたら、試合開始だ」


そう言って、少しの間を取ったあと、上に向けて、軽く銀貨を投げた。


―――――――――――――――――――― キンッ


―――― バギャッ ――――――――――― ガチャンッ


銀貨が石畳に落ちた瞬間、バルガは、後ろの建物まで吹き飛ばされ、宙を舞って

いたバルガの剣はその場に落ちてきた。

そして、バルガの居た場所には、少しだけ右足を上げた直也が立っている。


当然、これが手合わせの結果である事は見ていた全員が理解した。

判らないのは、その原因だ。

一体、いつ移動して、何をしたのか、誰も目で追え無かった。

結果だけを見て、ああ、蹴り飛ばされたんだな、と理解しただけだ。

バルガは、剣すら抜いて貰えなかった。

つまり、力不足も甚だしいと、言われているのだ。


「ああ、もう、言わんこっちゃ無い、ほら、ポーションをぶっかけてやれ」


そして、駆け付けたレゴス達が見た物は、両足と左腕が曲がってはいけない方向

になって、気絶しているバルガの姿だった。

壁に叩きつけられた為か、顔面は傷だらけで鼻血を垂れ流していた。

それでも、凡そ、想定内に収まっていのだが、ポーションが無ければ、即入院だ


シャラ「あ、兄貴………」

レゴス「骨折した場所にだけポーションを掛けて、残りはほっとけ」

シャラ「えええ、そんな」

ファラ「忠告を聞かなかったこいつが悪い」

アイラ「私も、お仕置きが必要だと思います」

シャラ「アイラさんまで………」

レゴス「見りゃ分かるだろ、滅茶苦茶、手加減して貰ったんだよ」

ファラ「同情の余地は無い」

アイラ「異議はありません」


バルガはそのまま、小さな部屋に放り込まれたが、どうこう言っても、アイラが

付き添って看病していたのが救いだろう。


シャラ「あの、1つ質問しても良いですか、アルセニオス様」

   「別に構わないが」

シャラ「あの竜の巫女ってのも、アルセニオス様の女ですか?」 

ファラ「ば、馬鹿、何聞いてんだ、失礼だろう!」

レゴス「すいません、シャラ、口を閉じろ」

   「お前!なんつー恐ろしい事を口走ってんだ!冗談でもやめろ!」

シャラ「へっ?」

   「サナに聞かれたらどうするんだ!」

シャラ「おれ、リンティって子が気になってて、もしあの子がお手付きなら、諦め

    ないと、いけないと思って」

   「手なんか付けてねえよ!」

シャラ「じゃあ、他の二人なんですね、良かった」

   「付けてねえって言ってんだろ!」

 サナ「……………………ア…ル…サ…マ?」

   「ぎゃぁ ―――――― 」

 サナ「浮気?浮気ですか?浮気なんですか?浮気なんですね?」

   「誤解だ ―――――― 」


それから誤解を解く為に、どれ程体力を消耗した事か、他人には判らんだろう。

特に精神的な疲弊は、言葉に尽くせない。


レゴス「おい、あの子、いつ部屋に入って来た?」

ファラ「まったく気配を感じ取れなかった」

シャラ「まるで、斥候みたいだ」

レゴス「ぜひともうちのパーティーに欲しい人材だな」

シャラ「なら、勧誘する?」


「「死にたいのか?お前?」」


誤解は、手に負えなくなる前に解決する方がいい。


そして、翌日の朝、直也がここから出て行った。



《どうも、ユリアが心配なんで、支援に行って来るわ》




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ